パラジウム
ー独龍大陸 半減軍本部近くのとある港ー
悠帆とメイコはヴァルハラへ向かうため、ヘリウムと共に迎えを待っていた。
「あ、そういえば言ってなかったんやけど、今回ネオンちゃんも一緒に潜入するからね、」
「…はい?」
「あの子、世界政府に顔も知られてないし、あの子の能力は潜入時に役に立つ能力や、きっと君たちをサポートしてくれるはずだ」
「役に…立てるかなぁ…」
ヘリウムの影から制服に身を包んだネオンがひょこっと顔を出した。
「お!ネオンちゃん。着替えてきたんやな!すごくかわいい!持って帰りたい!」
ヘリウムは制服姿のネオンを見て、つい本音をぶちかました。
「そ…そう?えへへ…ありがとう」
「うんうん!すごいかわいいで!優勝!」
二人がそんな尊い掛け合いをするもんだから、なんだか周りの雰囲気が少しポカポカしていた。
「あのー…ヘリウムさん?」
悠帆がそう声をかけるとヘリウムはハっとした表情で二人の方を見た。
「あぁ、すまんすまん。それで、2人にこれを渡しておく」
ヘリウムは白衣のポケットから何かを取り出した。
「これは…ワイヤレスイヤホン…?」
「これはワイヤレスイヤホンやない、インカムや。それも特殊な、」
「インカムって普通1つじゃないです…?なんで2つ?」
「まぁ、それネオンちゃんが関係してるけど…ま、多分自ずと分かるから気にしんといて」
「えぇ〜…」
説明してくれないヘリウムにメイコは少し不満を呈していた。
「あの、すみません」
「うゎぁ!びっくりした!」
後ろから不意に話しかけられ、ヘリウムは大声で驚いていた。
「すみません、急に驚かせてしまって、お久しぶりです。ヘリウムさん」
「久しぶりやな、今回はよろしく頼むで」
2人はお互いの顔を見ながら再会の握手を交わした。その人は、厳格そうな若い女性だった。
「あの…ヘリウムさん、そのひとは?」
「ああ、すまんすまん、この人は…」
「わたしはパラジウム。世界政府に潜入しているものです。今回、皆さんと一緒にヴァルハラへ潜入することになりました」
パラジウムはヘリウムの言葉を遮るように自己紹介をした。
「そ、そんなわけんから、4人で仲良くしたってな」
「は、はい、了解です」
「それでは早速こちらへ」
パラジウムの歩く方へ全員でついて行った。
「これでクリプトン大陸まで向かいます」
「すご!…」
「むっちゃでかいですね」
そこには巨大な潜水艦があった。しかも政府所有のものだった。
「今回は私が所属している政府の特殊部隊、"世界政府補助神"の数名が補助委員としてヴァルハラへ行くという名目で潜入するのであしからず。あと、私にはコードネームがありますので、ヴァルハラ内では"パラス"と呼んでください」
「了解です。この潜水艦は政府のものなんですか?」
「これは、政府の軍である"世界狼"の軍用潜水艦です。では早速乗り込んでください。すでに操縦士の方も乗ってますので、急いでください」
そう急かされ、5人は潜水艦に乗り込み、残暑の残る独龍大陸にサヨナラをした。しばらく、この暑さが恋しくなりそうだ。