《天穹》
「よーい…始め!」
メイコは三神さんの合図とともに刀を抜きながらキセノンの方に走り出した。キセノンは輪ゴムの銃口をメイコの方に向けた。
『 《数浮力》
〔アルキメデス〕 』
「お!数浮力か〜」
「数浮力…?」
キセノンが放った輪ゴムの狙いは外れていたが、軌道が曲がり、メイコの方に正確に飛んでいった。
「はぁ!!」
飛んできた輪ゴムをメイコは驚きながらも、抜刀で跳ねのけた。
「おぉ!すごいねぇ!」
三神さんは2人に褒めるようにそう言った。
「あれは"数浮力"。相手への距離とかを計算いて、スピードや出力を計算して、相手に確実に弾を当てる能力技だよ」
「なるほど…の割にはあっさりメイコに防がれてますけどね…」
「なるほど…山葵が飲み込みが早いって言ってたのも納得だわ…あの抜刀速度は山葵にも劣らない速さの抜刀だわ…とても2ヶ月前に刀を握った人間とは思えないわ…」
「まじかよ!…」
その状況に、キセノンも驚き、思わずそう言ってた。そしてメイコはキセノンに一気に近づき、間合に入り込んだ。
「はああ!」
メイコはキセノンに向かって大きく木刀を振りかぶった。
「クソ…」
ジィー…
キセノンは背中に不自然についていたジッパーを開けた。すると、そこから2本の触手が伸びてきた。
「!?」
メイコはそれを見て、メイコは驚いてもう少しで当たるのにもかかわらず手を止めてしまった。
「ほう!そこでそうするか〜!」
「あれわ…」
キセノンは触手を伸ばし、天井にむき出しになっている配管をつかんでぶら下がった。
「なにそれ!!」
メイコは思わずそう叫んだ。
「メイコちゃん、戦闘中だよ」
「は!…」
三神さんのその声でメイコは刀を構え直した。ぶら下がっているキセノンはまた輪ゴムを手に引っ掛け、構えた。しかも、片方の触手を使って両手に引っ掛けて両手に構えていた。
「くっ…!」
メイコは飛んできた輪ゴムをまた木刀で跳ね返した。その間にもキセノンは輪ゴムを手に引っ掛け、構え続けた。
「ん~~、この調子だとキセノンの独壇場だね…」
三神さんがそう呟いた。実際にキセノンは2、3メートル上にぶら下がっており、とても木刀が届く高さではなかった。キセノンは上からうち続ければ自ずと勝てる状況になっていた。
「うへぇ…」
メイコは撃たれ続ける輪ゴムを避けたり、木刀て弾いたりしてなんとか戦い続けていた。
「キセノンーそれは少し卑怯なんじゃないか〜?」
悠帆がキセノンへ向かってそう言った。
「実際の戦場でもそれか言えますか〜?勝つにはどれだけ卑怯な手を使っても勝つのが私のスタンスなんです〜」
キセノンは小学生のようにそう言った。思ったより年相応の反応だった。言ってることは年相応かどうかは怪しいけれど…。そう言ってる最中にもキセノンはメイコに向かって輪ゴムをうち続けていた。
「メイコーがんばれー」
「キセノンちゃんもだいぶ卑怯な戦い方するわね…」
キセノンか上から撃ち、メイコがそれを弾く、状況は一向に変わらなかった。
「…あれ…やれるかな…?」
メイコはボソッとそう呟いた。するとその時、メイコはキセノンの方に走っって行った。
「!?」
「あいつ…なにを…?」
「メイコちゃん…なんかいいもの見せてくれそうだねぇ…」
「クウッ!…」
キセノンは必死にメイコの方に輪ゴムを撃った。しかし全てメイコに弾かれてしまった。その間もメイコは突き進み、キセノンの真下近くに入り込んだ。
「夜刀流剣術…その伍…」
「クソ…!」
『 《天穹》
〔てんきゅう〕 』
「はぁ!」
パァン!
「いってぇ〜!!!…」
スタ…
「おお!!すごいね!悠帆」
「そうですね…」
メイコは2メートルほど、高く飛び上がり、木刀を振った。木刀の先端がキセノンの足に当たり、キセノンは大きな声を出して痛がった。メイコは下に滑らかに、そして静かに着地した。
ツル…
「あ…」
「へ…?」
「うわぁゎぁゎぁ!!」
キセノンは配管をつかんでいた触手を滑らせ、落ちてしまった。
「キセノン!」
「わぁぁ〜!!!」
「よぉぉ…いしょぉ!」
ドサッ!…
落ちてきたキセノンをメイコが受け止めた。
「大丈夫!?…」
メイコが、キセノンを心配してそう言った。
「メイコさん強いですよ!まだ足がジンジン痺れてるんですけど…」
「わぁ!!ごめん…」
「メイコちゃんすごいね!!!」
三神さんがキセノンを心配するのを忘れてメイコに興奮しながらそう言った。
「あ、はい!…ありがとうございます!」
「山葵以外の夜刀流の使用者は居ないからすごい興奮しちゃったよ!」
「三上さん…少しキセノンの心配もしてやってくださいよ…」
「あぁ、ごめんごめん…大丈夫?キセノン」
「ええまぁ…なんとか、メイコさん、務めてくれてありがとうございます」
「いやいや、私のせいで落ちちゃったんだから…謝ることないよ…」
「よ~し!これで2人とも能力者との戦いは大丈夫そうだね。ついでに、他種との戦闘の練習にもなったし、一石二鳥〜」
のんきに言う三神さんをみて、悠帆達3人はやれやれと呆れたような顔をしていた。