三神さんの能力
「三神さん、覚醒者だったですか!?」
悠帆が驚きながらそういった。
「え!?一緒に生活してたのにづいてないの!?悠帆お前大丈夫か…?」
キセノンが悠帆にそう言った。この数ヶ月の間に、いつの間にかキセノンも敬語じゃなくなった。
「まぁ、気づかなくて当然だよ。せっかくだし、ここで話しておくか。キセノンも結構最近覚醒したばかりだろ?」
「4ヶ月前ですね」
「能力初心者ちゃんか、ならちょうどいい。3人とも聴きなさい。」
そう言って三神さんは話し始めた。
「覚醒については政府がほぼ情報を隠ぺいしてるから、多分、覚醒についての資料は…多分、鸞孕大陸の大図書館、"鸞脳"に行かないと無いから、認知度は引くんだけど、覚醒者ってのは、うっすら気配的な何かが他よりも強いんだよ。メイコとキセノン、悠帆の左右に立って。悠帆ハメをつぶって」
「あ、はい…」
メイトが右側、キセノンが左側に立った。
「悠帆、キセノンがどっちに立ってるかわかる?」
「…左」
「…正解だよ…」
「すごい…なんで分かったの…?」
「なんか…存在感がそっちのほうが強かった的な…」
「今のが能力者特有の薄い気配、これは『能汁濃度』に由来する物だよ」
「能汁…?」
「能力者も、無制限に使えては科学的におかしい、何事にもエネルギーというものが必要なんだよ。その能力の源が『能汁』と呼ばれるものだ。肺から窒素を取り込んで脳で作られて、全身へ送り出される。その能汁は、血管を通って、養分や酸素と同じように全身へ送られる。しかし、能汁っていうものは、厄介にも、能力を使っていないときでさえ分泌されてしまうんだ。その時、能汁は、肌から気体となって外に漏れ出してしまう。その漏れ出た能汁が、この気配の正体なんだ」
「ほえ〜能力者の私の知らない情報ありがとうございます」
「あ、能力を使いすぎたり、能汁の分泌スピードより消費の方が早かったりして、能汁が完全に0になってしまうと能力者は死ぬから気をつけるようにね、」
「唐突に無茶苦茶怖いこと言うじゃないですか!…」
キセノンの顔がひきつった。
「で、こっからが私が皆から能力者と思われていない理由なんだけど…まぁ、簡単に言ってしまえば『能力の熟練度』だね、」
「熟練度とな…?」
「熟練した能力には、2つ大きな特徴が出てくる。1つは、体内に流れる「能汁の分泌濃度」を自分でコントロールすることができるんだよ」
「なるほど…それであまり気づかれないってことですね…」
「政府は、この外に漏れ出た気体の能汁を検知する機械で能力者を見つけては魔女狩りをしているんだ。だから、この能汁の分泌量をコントロールできる熟練の能力者、私とかは魔女狩りに合うことはかなり少ないと聴くよ」
「なるほど…興味深いですね…2つ目の特徴はなんなんですか…?」
「2つ目は、如何に能力と認識されずに能力を使うか…簡単に言うと、一瞬だけ能力を使えるかって感じ」
「といいますと…?」
「これに関しては私がやってみたほうが早いわね…」
「私がやる…?」
「わたしは今素面だけど、一瞬だけ能力を使うと…こぉ〜んな感じにぃ〜お酒ぇに寄ってる感じにぃなるんだよぉ〜」
「…!!!」
三神さんは素面だったのにもかかわらず唐突にお酒に酔い始め、呂律が怪しくなっていた。
「で〜まぁまぁ能力を使うと〜…こうやって、知らずに戻るってわけ」
「これまで、一瞬で素面に戻ったりするのはそういうことだったのか…すげぇ…」
悠帆は三神さんのそのスゴ技にあっけにとられていた。
「これが、熟練した覚醒者の能力ってわけ、」
「なるほど…興味深いです…で、三神さんってなんていう能力なんですか?」
悠帆は三上さんに質問した。
「あ、見せたほうがいい…?」
「よろしいのなら…」
「全く、かわいい教え子のためならしょうがないな〜」
そう言って三神さんは能力を発動した。三神さんの目が燃え出して、覚醒状態となった。三神さんの目には『酩酊』と浮き上がっていた。
「どう?これが私の能力だよ〜」
「…」
三神さんは悠帆のお望み通り覚醒状態となった。しかし、悠帆は三神さんを見て、不思議そうな顔をしていた。
「どうしたんですか?悠帆?」
キセノンが悠帆にそう問いかけた。
「その漢字…なんて読むんですか…?」
「そこかい!…私の能力は『酩酊者』、自分がお酒を飲んだような状態になったり、他者を酩酊状態にすることができる能力だよ〜」
「ごめんなさいね…漢字には弱くて…一様、母語も日本語ではないので…」
「え!?そうだったの!?」
それを聞いたメイコはすごく驚いていた。三神さんやキセノンも同じように驚いていた。
「スズさんが日本語を喋っていたし、日本語を話すハホ大陸のファイブ地域に長く住んでいたからしっかり話せますけど、5歳までは母と妹と一緒にハホ大陸のワン地域に住んでいたので、母も、ワン地域もネトミ語を話す地域だったので…今も、日本語ほどではないですけど、ネトミ語も話せますよ」
「ファイブ地域って…悠帆ってだいぶ寒いところに住んでいたんだね…」
「へー…悠帆ってそうだったたんですね…意外です…」
三神さんとキセノンは驚いていたが、メイコはあまり何を言っているか、イマイチよく分からなかった。
「まぁ、その話は機会があればまた今度聞かせて」
「じゃあ悠帆、早速やるわよ。最初は私が相手だからね」
「あ、はい、ちょっと待ってください」
悠帆は手袋をしっかりはめ直し、エアガンにマガジンを入れ、ロックを外し、スライドを引き、銃の準備をした。
「いつもどうり、私に一発でもBB弾を当てたら悠帆の勝ち、できずに私のBB弾に当たったら、私の勝ちね」
「わかりました、」
「メイコ、私たちは端で見学してましょう」
「そ、そうだね」
二人は端の方に移動した。
「それじゃあ…よーい…スタート!」
スタートの合図とともに悠帆は向かいの壁の方にいる三神さんの方に走りながら発砲した。三神さんは放たれた弾を、悠々と交わしている。
「そうそう、この前教えたカーシステムの構えも様になってきたね!」
そう言いながら三神さんも持っているエアガンで悠帆の方に発砲してきた。悠帆は細々と置いてある遮蔽物のドラム缶の後ろに隠れて弾を再装填した。
「すごい…」
「やっぱり、ガンアクションは刀とは違ったかっこよさと豪快さがありますよね、」
そうやって打ち合っているうちに悠帆は、三神さんに急接近していた。そして、三神さんを目の前にとらえ、銃を構えた。
『 《他酩酊》
〔ウイスキー〕 』
三神さんは能力を発動して悠帆の方にに向かって手を向けた。
「…!」
悠帆は咄嗟に腕で顔を守るように顔を覆った。しかし、何も起こらなかった。悠帆は不思議と言いながら、銃構え直し、三神さんに弾を当てた。
「勝っ…た?…」
「ん〜?おかしいな…いま確実に能力で遊歩を酩酊状態にしたはずなんだけどなぁ〜?」
三神さんも、この状況を不思議に思った。
「悠帆、ちょっと腕失礼しますね」
「え?」
すると、キセノンが唐突に悠帆の腕をつかんで、ドラム缶の上に腕を置いた。そしてアルコールティッシュで手を拭いた。
「はーい、ちょっとチクッとしますよー」
そうして、キセノンは悠帆の肌に注射針を刺そうとした。
「あ、あれ…さすがに硬いな…」
しかし中々刺さらない。そしてキセノンはそれなりに強く注射針を悠帆の腕に刺した。
グサッ!…
「イテッ!…急何すんだよ!…」
「静かに、死にますよ、止血するんです落ち着いてください」
キセノンは悠帆の血液を採取した。そして止血して、絆創膏を貼った。しかも、パンダの柄でかわいいやつだった。
「数滴入れて…ふ〜りふり〜」
キセノンは、腰のベルトにある試験管立てのような物にさっている試験管の中の試験管を1つ取り、血液を数滴入れて、ふりふりした。
「何やってんだ…?」
悠帆は腕を押さえながら言った。
「あー、三神さん、こいつだめですわ、酒に異常なまでに強いです。たぶん、ウォッカとか一気飲みしても大丈夫なくらい強いです」
「えぇ~!!!!」
それを聞いて、三神さんはとんでもなく驚いていた。
「俺…そんな酒強かったんだ…」
「じゃあ私は、悠帆に銃と料理の実力でしか勝てないのか〜」
三神さんは相変わらずふわふわしながらそう言った。
「まぁいいや、さあ次は…メイトとキセノン、二人で戦ってみて、」
「は、はい!わかりました!」
「えぇ…私もやるんですかぁ?…私、普段はドローンで遠隔で戦ってるんですよ?対面の戦いは苦手なんですけど…」
「だって書がないじゃん…他に戦えそうなのはネオンちゃんだけど、ネオンちゃんは絶対ヘリウムさんがだめって言うんだもん…」
「はぁ…まったくしょうがないですね…」
そう言われて、メイコは持っていた木刀を腰に刺し、キセノンはしぶしぶ、手に輪ゴムをセットした。
「さて…メイコちゃんの実力はいかがなものかな?」
「これは…あんまり予想できない勝負ですね…」
「キセノン、輪ゴムの強さは調整してね、なんかぶっ壊したりしないようにね、当たってもちょっと痛いくらいにしてね〜」
「わかってますよ…」
「メイコちゃんもがんばれ!私、まともにあんまりメイコちゃんの刀見たこと無いから、がんばってすごいの見せて!」
「は…はい!頑張ります!!」
「すごいプレッシャーかけますね…」
「いいのいいの、ちょどいいプレッシャーをかけたつもりだから」
「ほんとですかね…」
「それでは…始め!!」
三神さんの合図とともにメイコはキセノンの方に走り出した。