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晃×鈴凪

今回は晃視点です。

テスト前の日曜日、気分転換に庭に出てきた。

物干し竿の横にほんの少し野菜を植えている。


「おー実が付いたなー」


ミニトマトはみんな好きなので収穫が楽しみだ。


「よかった、晃お兄ちゃん毎朝欠かさずにお世話してるもんね」


隣には白いワンピース姿の妹、鈴凪の姿がある。

身内贔屓も当然あるだろうけど、俺の妹たちは可愛い。

正直今の格好で外出させるのは心配だ。


「?」


鈴凪が不思議そうに首を傾げている、凝視し過ぎたようだ。


「いやー何でも。今日も……」


「今日も?」


「鈴凪は可愛いと思っただけだ」


顔を赤らめて俯いている妹を抱きしめたいが流石にやめておこう、もう兄に甘える歳でもないだろう。


さて、もう一人の可愛い妹はーと。

今日はまだ顔を見ていない。


「あれー晃、何してるのー?」


凛凪を探していると、居間でコーヒーを飲んでいる兄貴に話しかけられた。

相変わらず女にモテそうな見た目だ。


「別にー今日凛凪見てないと思って」


「凛ちゃん?まだ寝てるんでしょー部屋行ったらー」


特別用事があるわけでもなし、部屋を訪ねられるのは凛凪も嫌だろう。

まあそんな事情を兄貴に説明する気もしないので、無言でそっぽ向いた。


「よーし、俺が見てきてやろー」


立ち上がる兄貴、鈴凪にキレられたばかりだというのに何の遠慮もないのは逆に感心する。


「兄貴は凛凪が寝てるとこ見られたくないんじゃないかとか、ましてや着替えてる最中だったらとか考えないの?」


「いやいや、そこ気にする?妹なんだし気ー使い過ぎだよ晃。なんならノックしたらいいだけでしょー、俺はしないけど」


ひらひら手を振りながら二階へ向かう兄貴。

……そんなもんなのかー。


「はい、晃お兄ちゃん」


居間でぼーっとしてたら鈴凪がお茶を淹れてくれた。


「さんきゅー鈴凪ー」


礼を言うとにこっと笑顔を返してくれた。

こんな鈴凪も、いつか嫁にいっていまうのだろうか。


「今日はどうしたの晃お兄ちゃん、私の顔何か変かな?」


その問いには答えず、ぼそっと呟いた。


「今日は俺、主人公だから……」



10:00も回ったので鈴凪と二人買い物に出た。

とはいえさっきの白のワンピースでは心配なので露出の少ないシャツとズボン姿に着替えてもらった。


「晃お兄ちゃんはワンピース嫌いだった?」


「いやーあの格好で出歩かれると心配なんだ。手を挙げたら脇の下見えるし、風が吹いたら下着が見えるし……盗撮でもされたら」


俺がかたかた震えていると鈴凪は困った様に微笑んでいる。

まずかったかな、これだと鈴凪が周りから性の対象として見られているといっているようなもんだし。


「すまん、鈴凪も好きな格好したいよな。俺が気にし過ぎなのかも……」


自分でいって肩を落とす。


「私は晃お兄ちゃんが心配してくれて、嬉しいよ」


何か鈴凪に気を使わせてしまったようだ。

例えば凛凪に同じようなことを言ったらどんな反応をするだろう?


おそらく、同じように俺に気を使ってくれるんだろうけど……。


(晃にーうざい)


なんて言われた日には……。


「あああぁ」


「どうしたの晃お兄ちゃん?頭痛い?」


俺が急に頭を抱えるものだから、鈴凪が心配そうに俺の体を支える。


「だ、大丈夫だ鈴凪。兄ちゃん少し顔洗ってくる……」


俺はふらふらとスーパーの男子トイレへと向かった。



顔を洗い、頬を二、三発叩いて気合いをいれる。

何をしているんだ俺は、鈴凪に余計な心配をさせて兄貴失格だ。


もう大丈夫。


「悪い鈴凪、待たせたな……」


と、男子トイレを出て気付く。

俺が勝手に出てきたばっかりに、鈴凪と逸れてしまったではないか!


「くっ!鈴凪!」


俺は全速力で駆け出す。

そうだ、もといた場所なら……。


いない。


とはいえここは人の往来も激しく、鈴凪がここで待つとは考えにくい。

となればここから近くて、邪魔にならないような所……。


(鈴凪、鈴凪どこだ!)


くっ、日曜だから人が多いな。

そんなことはいっていられない、鈴凪を見つけないと!


フードコート、いない。


キッズスペース、いない。


インフォメーションセンター、いない。


ま……まさか、誘拐?


「俺が、しっかりしなかったばっかりに……鈴凪は……!」


「はい」


慌てて顔を上げると、そこにはいつもの可愛い鈴凪がいた。


「きゃ!?」


俺は人目も憚らず、鈴凪を抱きしめた。


「ちょ、ちゅっと晃お兄ちゃん、どうしたの?恥ずかしいよ」



俺たちは買い物を済ませ帰路に着く。

あんなことをしてしまった俺にも鈴凪は嫌な顔一つせず普通に接してくれた。


「すまん鈴凪、俺のせいで嫌な思いさせちまって」


情けなくて顔を上げられない俺を覗き込み、鈴凪は微笑む。


「私嫌な思いなんてしてないよ?少しは恥ずかしかったけど、晃お兄ちゃんに大切にしてもらえて、幸せ」


幸せなのは、俺の方だ。

こんな、出来た妹がいて……。


「あ、雨……洗濯物、凌お兄ちゃんに電話しなきゃ」


ぽつり、ぽつりと雨粒が地面を濡らしてゆく。

そうだ鞄に折り畳み傘があった。


「ほら、こっち寄って鈴凪……」


「うん……晃お兄ちゃんは、やっぱり頼りになる」


そう言って鈴凪は、俺に寄り添った。


「ただいまーっと。鈴凪、荷物は俺がやるから髪と体乾かしておいで」


「大丈夫、晃お兄ちゃんが庇ってくれてたから私殆ど濡れてないよ?」


食材を二人で片付け、居間への引き戸を開く。


「凌にー、そのピンクのは鈴凪のパンツとブラ」


「ラジャー、このストライプは?」


「それは私のパンツ」


「「……」」


fin


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