空はなぜ青いのかな?
クリフ・ストール「カッコウはコンピュータに卵を産む」を以前読んだ。日本で発売されたのが1991年9月、この直後に地元の書店で購入したと思う(Amazonはまだ存在していなかった)。
インターネット創成期の話である。スタンドアローンだったコンピュータを通信回線で繋いで他のコンピュータからデータやアプリを使えたら便利だよね、というのを形にしていった時代である。でも性善説で運用され、セキュリティーやらなんやらの意識が未発達だった時に悪意を持った人が出てきた、データを盗んで行った(書き換えはしなかった)1987年頃の事件が記録されている。そのログを残して証拠としたデジタル・フォレンジックの最初期であったし、侵入者を用意したコンピュータ(ハニーポット)に誘導して電話回線の逆探知を行うシーンもある。
ただ読んだのが1991年以降のことであり、映画「ウォーゲーム」(1983年)や柴田昌弘の漫画「フェザータッチオペレーション」(1982〜87年、通信回線を経由してアメリカ海軍艦艇のコンピュータをハッキングし、ミサイルを誤射させたと思しきシーンがある)、パソコン通信の勃興、などの後ではリアルタイムではなく「歴史」であった。
それでも「ワォ!」と声が出たエピソードもあった。事件自体ではなく、著者クリフ・ストールが学位論文の口頭試問の時に教授に「空はなぜ青いのかな?」と問いかけられたエピソードである。「もっと詳しく」と畳み掛けられて、大気中での青色光のレイリー散乱から原子や分子の吸収スペクトル、電子の励起状態と説明を続けた、という体験談がいちばんワクワクした。ハードSFじゃん。
「空が青いのは黄砂が飛んできていないからだよ」というオチを3月末に下書きを始めた時に用意していたが、このままでは「吹雪いているからだよ」になりそうなので慌てて投稿する。