スライム
「綺麗だ」
なんで、もうすぐ死ぬという時にこんなものを見せるんだろう。光がきらめいている。そこは鍾乳洞になっていた。天井から垂れている岩のつららは煌びやかに光っていて、まるで宝石箱のよう。そこで僕は弱気になっている自分を見つけた。何勝手に諦めてんだ。まだ腕に矢が刺さっただけだし致命傷は一つもない。ここで諦めるなんて馬鹿げてる。
「よし!!」
自分の頬を叩いて、先に進んだ。何があろうと乗り越える覚悟で。
先に進むと、あの暴虐を成したスライムが現れた。
「ッ!」
すぐ身構えたが、スライムは気にしないまま横を通り過ぎ去っている。よく見ると、あのスライムより色が薄く小さい。別個体らしい。それに、つららの影や端のほうにも、ちらちらいるようだ。しかし、どのスライムも自分に興味は無い様だった。俺はここにいるモンスターはどいつも襲い掛かってくる思っていたから驚いた。
どこか悲しみを味わいながら、こんな体の調子の時に襲い掛かってくることがなくてよかったと言い聞かせて移動した。なぜこんなに悲しいんだろうと思いながら。
先を進んでいると、何か狭くなったような感覚がした。どういうことだろう? 見回してみるが何か変わったようなところはない。相変わらずスライムたちは興味なさそうにしている……いや、よく見ると少し近づいているような気がするな……数も増えている。さっきまでは見にくいところに数匹いた程度だったけど、今では近くを普通に通っていて、見にくい所には数えられないほどいる。いつの間にこんなことになったんだ。
……まずい、何か分からないけど悪い予感がする。血が出るのを気にせず走りながら進んだ。途中で分かれ道もあったが位置関係を思い返し3つに別れた部屋に戻る方向に進む。これで分かるのはあくまで方角だけで、あってるかどうかも分からないがどうやらそんな複雑な道はしていないようだ。これなら遠回りこそが正解でしたって事にはならないだろう。
それよりも不安なのは周りにいるスライム達だ。どうやら、追ってきているわけではないようだが徐々に見えるスライムが増えているような気がする……気にしてもしょうがない、早く抜け出そうと思った走り出したその時不意に背筋が凍るような感覚がした。すぐにバックステップをすると天井からスライムが降ってきた。
ぞっとした、今危険だったことじゃない、ここまでの事があっても微塵も自分に対する興味が感じられないことだ。だが…………僕は笑った。単なる雑魚モンスターじゃないってことに、命が危険な「怪物」だってことに。