VS巨狼 3
ああ、なんだか海の中にいるみたいだ。体が重くて時の流れがゆっくりに感じる、でも頭の中や心は違う。頭の中は必死に何がいいか考えてるし、心の中は相手を殺すと笑って叫んでる。ああ、冷静に戦おうとしてりけど我慢できなくて心のままに僕の口元が吊り上がる。僕の心が殺せと殺すと叫んでいることがどこか笑えて楽しい。なんで殺し合いというどうしようもない物がこんなに楽しいんだろう。
自分でも完璧と思えるほどの突きだった、相手も強敵だけあってギリギリ避けられたが姿勢がガタガタで死ぬのが少し遅くなっただけだ。もちろん、僕は瞬時に追撃した。しかし、巨狼は尾で土を払い砂煙を出した、もちろんそれで止まることはしない。だが、一瞬砂から目を守るために目を瞑ってしまった。その一瞬の隙に巨狼は後ろに下がっていた……くそ、絶好の機会を逃した。
たった一瞬であそこまで移動できるとは。しかし、あのタイミングならそれでも当たると思ったんだが何か他にも原因があるのか? 痛っ……今更だが攻撃したせいで右腕に痛みが走り、流れていた血がさらに溢れ出た。
そうか、右腕の握力は弱まっていたな。思っていた以上に速度に影響があったらしい。状況は元に戻ったように見えるが時間経過は血が流れている僕の方に不利だ、さっきの一撃で仕留められなかったのは痛い。だが、次は外さない。
さっきの一撃が頭に残っているのか、巨狼は周りをゆっくり回って僕を観察している。油断が消えて慎重になっていると言えるのもかもしれないが、今までと違って怯えを感じる……見ているだけだは何も解決しない。このまま怯え続けるならもう勝負は決まったといってもいいだろう。
僕は今までの隙を見逃さないスタイルを捨て悠然と近づいた。巨狼はすぐ飛びのいてこちらを唸っている、威嚇しているようだけど本心は怯えているのが分かる。押し込んで、下がって、押して、下がる、主導権は完全に僕が握っていた、今の状態じゃ攻撃されても簡単にカウンターを食らわせられるし、逆にこっちの攻撃を避けられないだろう。そしたら、突然急に覚悟を決めたような眼をし突っ込んできた。
僕の敵への軽視も合わさって、避けれずギリギリで槍を挟ませることしか出来なかった。もちろん体格差から僕はふっ飛ぶ。軽視したのは僕の愚かさだ、しかし追撃を食らうまでその愚かさを続けない。僕はその勢いを槍で殺してダメージを負った体を無視して敵を睨んだ。そして、ふっ飛ばされた僕にそのまま追撃を仕掛けようとした巨狼に今度こそカウンターを食らわせた。
無理して突いたせいで貫く事はなかったが、重傷だろう。これで僕と同じだ。巨狼は傷をつけられた事に怒り吠えてきたが、こっちも同じように吠えた。距離はどっちも一発でもミスったら即死に繋がる近距離戦。
どっちも叫びながら突いて、切り裂き、払い、噛みつき、血だらけになりながら戦った。回避力はこっちの方が上だが身体能力はあっちのほうが上だ。一進一退の攻防を繰り返す、時間が経つにつれ相手も学び始めてるようでフェイントや駆け引きをしてくるようになった、変わりにこっちも相手の行動パターンをさらに読み、無駄が削れていく。
巨狼はこのままでは埒が明かないと思ったのか一旦下がろうとしてきた、そうはさせぬと腕を振り血を相手の顔面に当てる。戦いによって意識が鋭くなっているのか血は目に当たり、相手の視覚を潰した。今がチャンスとその隙に突いたが、相手がモンスターであり狼。視覚が潰されても他の鋭敏な感覚で僕の攻撃を躱した。
とはいっても、あくまで一時凌ぎこのまま闘っていれば自然と勝っただろう、しかし有利に目が眩み無様な攻撃をしてしまった、その隙をぬって。目も見えぬというのに前に向かってきて噛みつかれた。痛みを気合で押し殺してその土手っ腹に槍を食らわせた。それでも、意地でも相打ちにしてやる執念か力を緩ませることはなかった。
……そして、僕もそれだけで殺せるとは思わなかった。普通の狼でも生きていたんだお前なら生きているよな。あの時と同じような状況なら結果も同じだ。
「おおおおお──!!」
そして、そのまま腹を裂いた。
僕の………勝利だ!!




