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午後1時。
王と王妃のいる間へ向かう。
公式な行事をする玉座のある大広間や、
大臣と執務をする部屋ではないが、
それなりに大きな問題を議論する部屋へ案内され首を傾げる。
普段なら、王妃の私室に呼ばれ、
お茶をしたりするし、
今回もてっきりそうだと思っていたのに。
「やあ、愛しい娘、元気なって良かった」
「本当、良かったこと」
王と王妃に迎えられ、カーテシーをする。
「ご心配をお掛け致しました、
もう体調は万全です、
何も問題ございません」
両親はにこにこしている。
父親の王の姿は、知識としては知っていたけけど、
改めて見てびっくりした、
金の髪に青い目、まさに王様!
しかもト〇クルーズ並みのイケオジ!
まだ38歳と若く、エネルギーに溢れいる、
声も声優ができそうな程いい声だし、
こんな人が父親なんて、何てラッキー!
母親の王妃も、金の髪と緑の目で、
私は母親に似たんだな~と思う。
それもあって、余計溺愛されているのだろう。
ぼっきゅんぼんのぼっが凄くて、羨ましいです。
「さて、ここに呼んだ本題と行こうか」
王と王妃以外にも、
数人の大臣と、裁判官がいて、
誰かを裁くのかな?と思いつつも、
そこに私が呼ばれる事に思い当たる事がない。
「罪人でもいるのですか?
しかし、私は裁判には関わっておりませんが」
そもそも、法律の知識など持ち合わせてはいない。
「ふむ、ここの顔ぶれをそう察するとは、
さすがは私も娘、なんと頭が良い。
しかし、今回の罪人はそなたに関わりがある、
連れてまいれ」
王の貫禄ある言葉に扉が開かれ、
腰と手をロープでぐるぐるに巻かれた女性が
兵士に連れられ部屋に入ってくる、
あ!あの女性はグレース先生!
我儘王女に、誰も注意しない中、
勉強をさぼろうとすると注意し、
平民の事も正確に教えようとしていた人!
しかもよりよい王女にしようと奮闘してくれていた人、
どうして、その先生が罪人なのだろう?
「この者は、そなたが倒れるまで勉強をさせ、
また、嫌がる事を無理やりさせたと報告が挙がっておる、
そなたの教育係だったのだ、どんな罪が良いか、
そなたの意見も聞こうと思ってな」
「ええ、あなたを苦しめるなんで許せません、
うんと罪を重くしても良いのですよ」
王妃もたたみかける。
この国は一応法律はあるが、あくまで一応だ、
王族の一言で罪が重くなったり、軽くなったり、
いかようにもなる。
「グレース先生の罪は?」
控えていた、裁判官が罪状を読み上げる
「恐れ多くも、王女殿下を苦しめた罪は重い、
教育係を解任、財産没収、国外追放とする!」
ばかが~!!!!
わざわざ王女付き、しかも我儘王女に付き合ってくれた、
超優秀な人物、そんな人物を手ばなしてどうする!
言わば、ヘレンケラーにおけるサリバン先生、
それぐらい重要な人物である事がなぜ分からないの?
グレース先生は平民だ、
平民でありなから、ここまで出世できる人物なんて、
相当な人物でしかありえないのに!
って、前世の私はそれでは生ぬるいと言って、
棒打ち10回追加させていたっけ・・・
本当にどうしょうもない王女だったのね。
ここでふと思う。
彼女が私の傍にいるかで、この人生は大きく変わる可能性がある、
貴族しかいない侍女の中で、
市民感覚と膨大な知識を味方に付けられるかどうか・・・
よし!
私はうるると瞳を潤わせ、
祈りのポーズを取って父王を見る。
「お父さま~私、この者がとても気に入っていますの、
今まで通り先生でいて欲しいですわ」
私の言葉に、会場全体がざわめく、
父王も予想外の言葉だったのだろう、
かなり驚い顔をしている。
「しかし、そなたの体調を見抜けなかったのは事実、
罰を与えなくても示しが付かない」
「あら、体調は侍女頭の役目、
彼女には関係ありませんわ、
それに罰をと言うなら、教師役は辞めてもらって、
私専属の上級侍女にしましょう!」
侍女頭は貴族であり、キャリアも長い、
侍女頭を責めず、平民のグレースに罪を着せようとしている、
悲しいかな、こんな事は日常茶飯事だ、
しかし、私はそれを許すつもりはない。
「上級侍女なら、むしろ出世ではないか」
うろたえる父王に、私は本領を発揮する。
「いう事聞いてくれないお父様なんて嫌い!」
これぞ我儘王女真骨頂!
我儘はこうやって使わないとね!
嫌い作戦は効果抜群だったようだ、
父王は大分狼狽えている。
「うむ、グレースよ、フローティアに仕える気はあるか」
グレースはしばらく黙った後、
「はい」
と信じられないといった風に答えた。
「分かった、ではグレースをフローティアの上級侍女にしよう」
その言葉に、私のテンションが一気に上がる。
「グレースはもう私の上級侍女よ、ロープを外しなさい」
私の言葉に、あわてて傍にいた騎士達がローブを解く、
「お父様ありがとう」
そういって父王に抱き着く。
「ははは、、、まだまだ子供だな」
「可愛いわ」
父王に頭を撫でてもらって、私はご機嫌だ。
よし、これで未来は1つ変えられた。