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第拾弐鬼:碧兎のミクリとリヴァイアス

「──ねぇ。ねぇってば! 二人ともっ!」

「……ん?」

「…………」


空を眺めながらぼーっとする二人に、カンナは大きな声をあげた。


「ずっと二人が悲しんでても、きっとあの子達は喜ばないよ?」



『オニーちゃんッ! にしししししッ!』

『キャハハハハハッ!!』



暑い日差しで立ち昇る陽炎に、桜の花弁を舞い上げながら無邪気に走るメルとラルの幻影を見る──


「──そうだな」

「スゥ……ハァ……。だなッ」

深く深く、一息をつく二人。


 『第陸王都 桜花埜街オウカノマチ』での出来事は、大人に成り切れていない十三歳の三人にとって、あまりにも辛い遺恨と成った。

あの日の記憶は、きっと一生涯忘れる事はないだろう。


「ところでカンナ。お前、一体何処へ向かってるんだよ? そろそろ第壱王都に──」

「ふっふっふー! じゃじゃあーーーんっ!」


 カンナは出立の際に持参した、旅行ガイドブックを広げ、二人に見せつける。

まるで、自分の中に秘めた哀しみを覆い隠す様にして──


「なになに? あおの……海?

 へぇー、綺麗だな。まるで碧色の宝石みたいだ」

「なぁなぁッ! でっけぇマカイシャークは居るのか!?」

「まっ、マカイシャークが居るかは、分からないけど……」

「じゃあ、皆で探しに行こうぜッ!」

「そんなの探してどうすんだよ?」

「決まってんだろッ! 食うんだよッ!」

「「食べるんかいっ!」」


 アクトに秘技『夫婦めおとツッコミ』を披露する二人。

どうやら三人は、少しだけ元気を取り戻した様だ。

鼓膜に残響として残った二人の声は、少しずつ消えていく──


『きゃはははッ!!』

『きゃーーーーーッ!!』



──長い獣道を抜け、風上から漂う磯の香り。

三人の目の前には──


「「「海だぁァーーーーー!!」」」


 三人は両手を上げ、満面の笑みで飛び跳ねる。

分厚いガウンコートで旅を続けるアルトの顔からは、汗が止め処なく溢れていた。


「やっとついたなぁ……。あぢぃ~~……」

「もうっ! そんな暑そうなコートなんか着てるからでしょっ!」

「ばっ、バカっ! これが最先端のオシャレなんだよっ!」

「ふぅーーん……」


カンナはジト目で、汗だくのアルトを見つめる。


「見てみなよ、アクトくんなんて──」

「あぢィ~~……」


項垂れていた。


「ズコーーーーー!!」


 ズサーっと、マカイペンギンの如く、地面を滑るカンナであった。

パンパンッと砂埃を払い、カンナは言う。


「脱ごっか?」

「「え゛っ゛ッ゛!?」」


 内股になり、自分の胸を両手で隠す二人。

ここだけ聞けば、痴女の発言にしか聞こえない事だろう。


「カ、カンナ……。お前、そういうのは二人っ切りの時に……ブツブツ……」

「ちっっがぁーーーーうっっ!!

 み・ず・ぎ・に・な・る・のっっ!!」


カンナは水着のレンタルショップを指さす。


「なるほど……それならっ!」

「暑さを凌げるッ!」

「二人とも、位置について……」


 アルトとアクトは、まるで運動会の短距離走の様に腕を構えた。

カンナの掛け声と共に両者、一斉にスタート──


「よーい……ドンっ!」


 土煙をあげ、二人は店先へと爆走する。

一人置いて行かれるカンナ。


「もうっ。まだまだ子供なんだから──」


母が子を見送る様に、カンナは二人の後姿を見つめた。


「さて……と。私も行きますかっ! 待ってー! 二人ともーー!!」



──ここは海の家『魔海・まかい・うじな


「どーれーにーしーよーおーかーなっ──」


水着を選ぶカンナの真剣な眼差しが、ギラリと光る。


「これだっ!!」


「へー。色んな水着があるんだな。アクト、お前どれにする?」

「オレサマは、これだァッ!!」

「おまっ── まーた黒かよ……」

「そういうお前だって、白じゃねーかッ!」

「まぁ……」

「お互い様……だなッ」


 二人はいつも通り、白と黒を基調とした小洒落たトランクスタイプの水着を選び、そそくさと着替えた。

其々、太腿部分には波風を意識したと思われる模様が入っている。

そして、尻部分には葉っぱの模様が入っていた。


「ふんふんふーん♪」


 可愛い系、クール系、セクシー系、アダルティ──

試着室で様々な形状、色の水着を試着し、ご機嫌のカンナ。

試着室の下からはカンナの浮かれた素足が、チラチラと二人の視界に入る。


「カンナぁ~……まだかよぉ~……」

「もーちょっとぉ~~」


「なーんで、女子ってヤツは服選ぶのに時間かかるんだろうな。なぁ、アクト?」

「──えッ? あ、ああ」

「どうしたんだよ?」

「──いや、なんでもない」

「そっか……」


 アクトは亡きサクヤの事を考えていた。

ふとした時に、サクヤの笑った顔、怒った顔、寂しそうな顔が、瞼の裏側に描写されていた。

 もしも、今この場にサクヤが居たら何て言うだろう。どんな顔をするだろう。

きっとサクヤは────


「お、お待たせ……っ」


モジモジしながら恥ずかしそうに、頬を紅く染めたカンナが試着室からお目見えする。


「どう……、かな……」


 カンナが選んだのは、桜の花弁が右下に描かれた濃紺色のワンピース水着だった。

尻部分には二人と同様、葉っぱの模様が入っていた。

恐らくはオリジナルブランドなのだろうと、三人は軽く考えていた。

この時までは────


「お、おうっ……。似合ってるんじゃないか……?」


アルトは頬を赤らめ、露骨に視線を逸らす。


「えへへっ……」


「なぁなぁ、そんな事より、早く海入ろーぜッ!マカイシャークを捕まえるんだッ!」

「そ、そうだねっ! 行こっ、アルト!」


 カンナは火照ったアルトの手を引っ張り、店外へと誘う。

アルトの身体は、暑さ以外でも体温が上がっていた。

思春期の男子は解り易いものだ。


「誰が一番先に、マカイシャークを見つけられるか、競争だッ! よーいドンッ!」

「あっ! ずるいぞ、アクトっ!」

「マカイシャークは、全部オレが喰うんだッ!!」

「待ってよ、二人とも~!」


 無邪気な子供の様に、海へと駆け出す三人。

一体何の因果が、三人を辛く苦しい未来へ導くのだろうか。

大きな陰謀が「早く来い」と言わんばかりに、手招きをする──



「ひゃっほーーっ!!」

「きゃーー! つめたーーい!」

「マカイシャークッ! 何処に隠れたァッ!」


 無邪気な子供らしく、はしゃぐ三人。

そこでも新たな出逢いが待ち受けていた。


「……あっ! 見て、あそこ!」

「どうした?」


カンナが波打ち際の方へと、慌てて駆け出す。


「ねぇ、君っ! 大丈夫!?」

『うぅ……』

「なんだよ、そのウサギ。食うのかッ!?」

「食べないわよっ!」

「酷く衰弱してるじゃないか……」

「待ってて、今治療してあげるから!」


 淡い碧色の小さなウサギを日陰に寝かせ、左腿の『神在月の扇子』を広げたカンナが舞い始める。

それは、アルトの母アルマからカンナへと託された紫苑しおん色の扇子。

満月を囲う様に、純白の吹き出しフナ尾の金魚が描かれている。


「『雨求うきゅう』!!」


天から光の雨が降り注ぎ、見る見る内にウサギが回復していく──


『うぅ……。ここ……は?』

「あっ、目が覚めた。大丈夫? 一体、何があったの?」


『そ、そうだっ! 都……碧の都は!?』

「碧の都? 何処の事?」

『海底の──僕の故郷です……』

「海底っ!? 君、ウサギだろ? 海底で、どうやって──」


『ももっ、申し遅れました!

 僕は『碧兎へきとの精霊 ミクリ』です。

 僕ら碧兎は、酸素を必要としません……』


「「なるほどなー」」


「かかっ……」

「「かかっ?」」


「可愛いいいいい!!」


 ミクリを抱き締め、クルクルと回り始めるカンナ。

長い垂れ耳と、耳の付け根で結んだ紅色の二つのリボンが、ひらひらと宙を舞う。


『あ~~れ~~~~』

「お、おいカンナっ! 病み上がりだぞ!」

「あっ── ごめんなさい……つい……」

『い、いえっ……』


「ところでお前、何であんなに弱ってたんだ?」


目を回したミクリに、アクトが問いかける。


『そ、そーだ! リヴァイアス!』

「「「リヴァイアス?」」」

『“紺碧龍 リヴァイアス〟ですよ!

 僕の故郷……碧の都を火の海にした、龍神様です……』

「龍神様が、何故そんな非道な事を?」

『わかりません……。ですが、僕には苦しんでいる様に見えたのです……」


「他に、何か気付いた事は有るか?」

『そう言えば──

 龍神様の口から、見た事もない、黒い魔物が出て来ていた様な……』


「よし……ッ」

「俺達で──」

「リュウジンサマをやっつけ──」

「鎮めてあげましょっ!」

「「お、オー……」」


『み、皆さん……。こんな見ず知らずの“ダメウサギ〟の為に……。

 道案内しますっ! 付いてきてください!』


ミクリに誘われ、碧色に透き通る海へと潜る三人だったが──


「……っぷはぁッ!」

「ゼーハー……ゼーハー……」

「く、苦しい……」

『皆さんっ! そう言えば、皆さんには酸素が必要なのですね……そうだっ!』


ミクリは背負った大きなリュックを、ガサゴソと漁り始める。


『あった! ルフトストーン!』

「それは?」

『これをお口に入れてると、酸素が発生するんです!

 三人分ありますので、どうぞお使いくださいなのです』


「ありがとう。遠慮なく頂くよ」

「さんきゅー!」

「あー……んっ! あっ、この味……」


「「「マカイサイダー味!!」」」


 マカイサイダーとは、高純度のライフソルトを含む、魔界の天然炭酸水の事である。

人世と魘獄えんごくに局所的に湧き出ている、魔界のオアシスだった。


「おいしー♪」


 カンナは頬を膨らませ、さっぱりとした味を堪能する。

シュワシュワとした刺激が、三人の舌をくすぐった。


「さぁ、皆さん! 改めて、行きますよー!」

「「「おーーー!!」」」


 暫く潜り、美しい碧の海底が見え始める。

3mを超える、緑柱石の様なエメラルシャコガイ。紫色に透けるアメジスロブスター。

 水色の水晶玉の様なマカイクラゲが無数に浮かび、まるで電飾の様に光っていた。

カンナの幼き日の記憶が蘇る。

亡き母の宝石箱を見せてもらった時に似た、色とりどりの光が瞼の裏側で星座を描く。


「わぁ──綺麗────」


『皆さんっ、あっちです!』


 ミクリが指さす方に目をやると──

戦火に包まれた、美しかったであろう都が三人の視界に入る。


「ひどい……」

「なぁ……。何であの青緑の炎は、海中でも消えないんだ?」

『あれは“神火〟です。神が死ぬまで、永遠に燃え続けると言われています』

「じゃあ……龍神様を殺すしかないのか?」


『そう……ですね──ですが、龍神様は、永遠を掌る神様ですっ!

 なので、きっと……きっと、大丈夫なのですっ!』

「そっか……」

「じゃあ、遠慮はしないぜ」

「私も……出来る限りの事は、やってみるっ!」

『皆さん──』


 リヴァイアスがこちらに気付き、ギロリと睨みつけた。

一瞬、蛇に睨まれた蛙の様に硬直したが、アルトとアクトは瞬時に気合いを入れ直す。


「おいッ! こっちに気付いたぞッ!」

「気を付けろ、皆っ!」

「きゃっ!!」

「カンナっ!!」


 リヴァイアスが、その巨体に見合わぬ速度で泳ぎ回る。

三人が対峙しているのは、畏怖の対象である「神」そのもの。

 高々人間如きが勝てる相手なのかと、アルトは半信半疑だった。

しかしアクトは違った。


「アルトッ! お前はカンナを護ってやれッ! 俺はヤツを──狩るッ!!」

「アクト! 無茶はするなよ!」


 ニヤッと笑い、リヴァイアスの方へ突き進むアクト。

紺碧に透き通る鱗の巨龍、リヴァイアス。

その体内では、異常が起きていた──


「オラァッ! この蛇野郎ッ! 今日の昼食は、お前で決まりだァッ!!」


「『朔ノ太刀サクノタチ』ッ!」

『グギャアアアアアアア!!』

「──ッぶねッ! テメェ……やりやがったなッ!!

 出し惜しみは無しだ……。本気で行くぞッ!!」


 アクトの身体を、紫炎のライフソルトが取り囲む。

そこから流れる様に、連撃を繋げた。


「『弐ノ太刀・神楽』ッ!」

神楽を舞う様に『骸刀・朔夜』を振るう。


「『参ノ太刀・柳月リュウゲツ』ッ!」

柳の葉の様に、高速で縦に斬り刻む。


「『肆ノ太刀・虎乱シノタチ・コラン』ッ!!」

荒れ狂う虎の様に、乱雑に荒々しく斬り刻む。


「『伍ノ太刀・龍獄リュウゴク』ッ!!」

荒れ狂う龍の様に、縦に高速回転しながら斬り刻む。


「『陸ノ太刀・鬼刃キジン』ッ!!」

荒れ狂う鬼の様に、横に高速回転しながら斬り刻む。


『ガアアアアアアアアッッ!!』


リヴァイアスの口から、黒い魔物達が群れとなり、直線と成ってアクトを襲う。

しかし、アクトは冷静に呼吸を整える。


「スゥ──ハァ───行くぞッ! これでトドメだッ!!

 『終ノ太刀・滅牙シュウノタチ・メツガ』ッッ!!」


 刃を引き、右肩の上で構えた刀を正面へ向け、全神経と紫炎のライフソルトを刃先に集中する。

そして、音速で一閃────

軌跡には、紫黒の闇が刻まれた。


「すまない──」


『グ、ガ……アリガ……トウ…………』


リヴァイアスの口から禍々しい“黒き竿〟が飛び出し、アクトが掴んだ。


「ん? 何だこれ?」


「アクトーーー!!」

「アクトくんっ!!」

「お前、凄いな! あの龍神様を一人で倒すなんてっ!」

『アクト様っ! お見事でした!』

「い、いや……それより、これ──」

「何だ、その黒い竿?」

「──うっ! 凄い瘴気だよ、これ!!」


 カンナの神子の血が、危険を察知する。

誰も近付けない、魔界の深淵の瘴気に良く似た黒きライフソルトが、竿を覆っていた。


「なるほどな……。こいつは魘獄の鍛冶師が造ったモンに違いねぇ」

「アクト。それ、どうするんだ?」

「そうだな……。折角だし、オレが貰うわ。龍神サマの形見だしな」

「そうね。きっとそれは、魘獄出身のアクトくんじゃないと扱えない」


「見て! 龍神様が、碧の泡になって消えて行く──」

「ああ───ッ」


「ところで……なんか、苦しくないか?」

「言われてみれば……」

「がはッ!?」


『皆さんっ! そろそろ“ルフトストーン〟の効果が切れる頃合いですよっ!』


「「「言うのが遅ーーーーい!!」」」



 ──かくして、碧の都の危機を救った三人。

新たな武具『黄泉の竿』を手に入れたアクト。

三人は、砂浜へと戻る。大慌てで、必死に藻掻きながら──



「くぅ~~……っ」

「つっかれたぁ……ッ」

「お疲れ様、二人ともっ」


「さて。そろそろ水着を返して、宿を探そうか」

「飯ィ~~~……。飯ィ~~~……」

「くすくすっ。はいはいっ。えーっと、海の家は……あれ?」

「どうした、カンナ?」


「ない……」

「えっ?」

「海の家が無ああああああいっっ!!」


 海の家『魔海・まかい・うじな』が消えいてる事に、三人は気が付く。

次の瞬間、三人の水着が葉っぱと成って消えていく。

葉がひらひらと舞い、生温い砂浜に落ちた。


 アルトとアクトは、カンナの胸から足までを舐める様に見る。

カンナも二人の『マカイゾウサン』を凝視する──


「「「きゃあああああああああああっっッ!!」」」


三人は声を揃えて絶叫し、胸を隠しながらしゃがみ込む。


「なななっ、なんでぇ……? なんでぇっ!?」


 カンナが涙目になり、声を震わせた。

今度は持参したガイドブックが「ボンッ」と白煙をあげ、消え去った。

やはり、代わりに葉っぱが顔を出す。

ガイドブックの背表紙には、三人の水着の裏側にあった葉っぱの模様が描かれていた。


「なんでぇ~……? なんでぇ~!? ねぇ、なんでぇっ!?」


涙目のカンナが勢い良く立ち上がり、葉っぱをドスドスと踏みつける。


「おおおおおいっ! か、隠せっ! カンナ、おいっ!!」

「きゃああああああああああ!!」


カンナの『神在月の扇子』が、神の風を放った。

だが、その風で昏倒させられるのは弱い精神を持つ者のみ。


「なんでぇ!? 何で倒れないのよぉっ!! ばかぁ~~~っ!!」


再びカンナが泣き崩れる。


「わかった、わかったから! 俺が服取って来るから……ちょっと待ってろっ!」


 アルトは海の家が建っていた場所へと駆け出した。

途端に静まり返り、短い静寂の後、カンナは重々しく口を開いた。


「──ねぇ……アクトくん」

「……なんだよ?」

「アイツ、冷徹に見えて、実は誰よりも優しいんだよ──」


 カンナとアクトは背を向け、語り合う。

言いたい事は山の様にある二人だったが、必要最小限の言葉を小分けにして出した。


「──わかってるさ」

「そっか。良かった……」


「あの時は心配……かけちまったな……。

 それに、その手……火傷しちまっただろ? ごめんな……」


「ん-んっ! 全然ぜんぜんっ! ほらっ!」

両手に巻いていた包帯を解き、アクトに手の平を見せつける。

裸と一緒に──


「ばッ!!」

「えっ? あっ……きゃあああああああ!!」


「バチンッ!」という、大きく鈍い音が海岸中に響き渡った。


「どうしたっ!? 爆発音がしたぞ!」


一足先に服を着たアルトが、二人の服を抱えながら走って来る。


「あっ、アクトっ!?」


 白目を剥き、仰向けで気絶しているアクトを見つけるアルトは警戒する。

きっと、近くに敵がいるに違いない──と。


「あのアクトがここまで……まさかっ!

 『アニマソルト』だなっ!? 何処だ、姿を見せろっ!!」


「ち、ちがうの……」

「どうした、カンナ!? まさかお前もケガっ──」

「私がやったの……」

「えっ?」


「わ・た・し・がっ! た・た・い・た・のっっ!!」


裸を隠す様に、しゃがんだカンナは顔を真っ赤にする。


「あ、あー……。そういう事……ね。

 そ、それより、これっ! 早く着ろよ、風邪引くぞっ!」

「う、うんっ……。ありがと……」


 アルトが持つ服に、手を伸ばすカンナだった──が、ピタリと止まる。

握られていたのは神子装束とスパッツ、そしてもう一つ──

仄かに生暖かい、空色の下着セットだった。


「ばかあああああああっっ!!」


 またもカンナの平手が飛ぶ。

アルトの左眼『天の鬼眼』は未來視の魔眼。平手の軌道が事細かに視えていた。

しかし──


バチンッ────


 あえて平手を左頬で受け止めたアルト。

これもまた、アルトなりの優しさなのだろう。


本日の犠牲者、二人。






『──────三つ目』

【新規登場キャラクター】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

碧兎(へきと)の精霊:ミクリ≫ 声のイメージ:金田朋子さんvoice

■概要■淡い碧色の兎精霊(ロップイヤー)

    “碧の(あおのうみ)〟の海底にある「碧のあおのみやこ」に棲んでいる。

    ≪紺碧龍:リヴァイアス≫に因り、碧の都が戦火に包まれているところをアルト達に救われた。


§性別§女性


〇年齢〇1歳


● 眼 ●水色


┫体型┣ぽっちゃり


◆服装◆紅のリボンを、耳の付け根に付けている。

    背中には栗茶色のリュックを背負い、拾った綺麗な貝殻や天然石等を入れている。

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