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PROJECT • AXL  作者: 銀鱗
黎明
2/18

ニューウェポン

不定期連載だからいつ出してもヨシ!

 鞍馬のボスによる驚きのバディ宣言から数時間後、俺は館の一室にあるソファでだらしなく横になりながら貰ったイヤーカフを見つめる。

 (ああは言ったけど、俺これからあのことやっていけるのか?)

 考えてみればこのイヤーカフが何なのかを聞いていないし、そもそもマトモに会話すらしていない。数分しか顔を合わせていないので当然と言えば当然だが、これからバディになるならもう少し何かあっても…

 一人ではどうしようもない問い、というか愚痴に頭を悩ませていると不意に部屋の扉が開く。

 扉の先には煤に汚れ、両手をケースで塞がった作業着の人物が立っていた。

「おっ、ミナトじゃん。どうしたんだよ?」

 俺の問いに作業着人間ことミナトは左手に手にした長筒を見せながら嫌味口調で答える。

「頼まれてた刀の修理が終わったから私にきたんだよ。ったく派手に壊し上がって。どんな奴と戦ってきたんだよ?」

「前にも言ったろ。普通の粛清依頼かと思っていったらメチャクチャに強い人と出くわしたんだよ。あの感じは間違いなく獣化タイプだったね」

「ふーん。まっお前がどうなろうとこっちは研究できればいいけど…って手に持ってるそれなんだよ。」

 ミナトが手に持っているイヤーカフの存在に気づく。

「ああ。これはさっき…」

 話そうとする俺を遮ってミナトはイヤーカフをひったくった。

 

 ……人のもの勝手に取るなよ

 

 俺の非難の視線に気付かずミナトは喋り続ける。

「イヤーカフか。随分おしゃれなアクセサリーだね〜。っと思ったけど違うな。これ通信機の魔粒具だわ」

「通信機?!コレが?!何でそんなことわかるんだよ?」

 予想外の答えに俺は戸惑いを隠さずに聞く。がミナトはなんでもないようにさらりと答えた。

「僕みたいな錬金術師が見れば一発よ。」

 そう、ミナトは錬金術師なのだ。魔粒には単なるエネルギー変換の他にもう一つの特徴があった。それは

 

 "万物に変化できること"

 

 物質、機械など既知のものから未知のもの。法則を超えたものなど様々なものに変化する。それを狙って出す人たちのことを中世の錬金術になぞらえて"錬金術師"と呼んでいる。

「この形で通信機なのか。でも何でイヤーカフ?」

「それは本人に聞けよ。はいこれ。ってか刀の確認してもらってもいい?」

 イヤーカフを返されながら言われて思い出す。俺は慌てて長筒を受け取る。本来の目的をすっかり忘れていた。疑問は残るがまずは我が戦友と久々の再会をするとしよう。ワクワクしながら長筒を開け、

 次の瞬間俺は固まった。

「……あの、ミナトサン」

「はいなんでしょう?」

「何ですかこれは」

「何って、あなたの戦友でしょう?」

「僕の戦友はこんなメカメカしくないんですけど」

 中にいたのは古き良き古風な刀ではなく近未来風に機械化アレンジされた戦友の変わり果てた姿だった。あまりのショックに声も出せない。人はリミットを超えると叫ぶ気力もなくなるものだ。死んだ目をしながらゆっくりと崩れる俺。

「そんな……今まで大事に研いできたのに……」

 前職場から持ってきた数少ないものの一つが消えてしまった。

「それね、ボスからの要望なのよ。」

「ボスからのぉ?」

 ショックから立ち直れないまま自分でも信じられないほど情けない声でミナトに聞き返す。

「なんか修理してる時勝手に入ってきて、『魔粒でなんか出来るようにしといて』て命令されたんだよ。つーわけでその剣空気中から魔粒吸って切れ味が上がるようにしたから。」

 流石に何でも切れるようにはならなかったけどな。と続けるミナトは未だ頭を垂れている俺を立たせる。

「ほら、いつまでしょげてんだよ。こっからが本番なのに。」

「本番?」

「お前への用は刀だけじゃないってこと。」

 ミナトは会話をしつつも俺を立たせて、そばに置いてあったもう一つの大きなケースを開ける。

 中には……何だこれ、パッと見では何の装置かわからない。一部分がかけた大きな輪っかがコードで繋がっている。輪っかの側面には写真で見たことある車のマフラー。コードで接続された先にはバイクのハンドルのようなものが付いている。

 俺が困惑する間にもミナトは手慣れた手つきで俺の脚に輪っかを嵌めていく。

 これ脚につけるやつなのか。

 こんなの一人で作ってたのかよ。

 感心する間にもミナトはテキパキと装置を装着する。

「よしっ!完成完璧だ。」

「つけ終わったか。でこれ何なの?」

 これは『脚部装着用戦闘時加速魔粒具』名前でわかる通りこいつは…まぁ細かい話は後だ。莉音、腰のハンドル捻ってみ。」

 言われるがままに腰につけられたハンドルを捻る。

 その瞬間、後ろから巨人に押し出されたかのように壁に向かって爆走する。

「うおおおおお?!」

 俺は受け身も取ることができずに体の正面から壁にぶつかった。"ビターン!!"という擬音が付くくらいには強い勢いだった。

 俺はぶつけた鼻を押さえながらミナトに詰め寄る。

「ぐおおお、めっちゃいてー。オマエぇ‼︎事前説明も無しにいきなりやらせるなよ!!」

「動作は正常っと。」

「おい聞いてんのか?」

「次からそれつけて活動してね。」

「だったらもう少し説明とか……」

「これでボスからの依頼は完了。あー、やっと自分の研究ができる。そんじゃ後は頑張って。」

「あっおい!まだ話は…」

 文句を言う俺を無視してミナトはそそくさと部屋を出ていった。

 一人ポツンと残された俺。壁には数分前に作った新しい巨大なヒビが虚無感を増幅させる。

 みんなして俺へ確認取らずに物事を進めてくる。

 

 今日俺に対して紳士だった人、鈴鳴さんだけじゃね?

 

 バディ宣言されて謎の魔粒具つけられて、そしてこれから魔粒タンクの見回り。

 

 夜は長いというけれどちょっと盛りだくさんやしませんか?

 

 心の中で愚痴りつつ俺は見回りの準備をする為に部屋を出るのだった。

【魔粒具】

魔粒の「万物に変化する性質」を利用して作られた道具全般のこと。

その数は計測できず、今もどこかで新しい魔粒具が生まれている。


(作者)

これから出す原理が説明できない物は全部魔粒具にできるので我ながらすごく都合のいい物作ったと思ってます。

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