決闘者の意地
「いくぞ」白矢はマドッグのその冷たさに、反感を覚えた。
敵とは言え、もう少し労ってもいいはずだ。
「違うな」マドッグは白矢の心理を読んでいた。
「こいつは自分の死に様を他人に見せたくないはずだ……特にあんな手を使っちまったんだから」
「どうして助けてくれんですか?」白矢は訊ねた。考えてみたら彼を助ける必要はなかったはずだ。共倒れならマドッグの一人勝ちだ。
マドッグはしばし黙した。
「俺も全てを賭けたからな」彼はふわっと笑う。
「何をもかも捨てて、仲間に軽蔑されて……でもこの決闘はやらなくちゃならない……だったらよう、せめててめえの節だけは曲げない。ルールには従う、それだけさ」
マドッグは残った目で白矢を見下ろす。
「で、最後の決闘はどうする?」
そうなのだ。もう選ばれた勇士で残っているのはマドッグと白矢だけだ。
「お願いがあります」白矢はマドッグに頭を下げる。
「『死を超越した者』と会わせて下さい。その後なら、決闘は受けます」
「わかった、手伝ってやる。明日にでも行くぜ」
「はい」白矢は治った体を動かし、大丈夫であることを確認した。
「それでいいです」