白矢とブローデル2
一瞬の困惑。それが命取りだった。
ブローデルのモーニング・スターは雷のように落ち、白矢の肩を板金鎧ごとぐちゃぐちゃにした。
皆部白矢は前のめりに倒れた。
「ありがとうございます、地母神様」
倒れたビャクヤの前でブローデルは地母神エルジェナに感謝の祈りを捧げた。
「ひ、卑怯者っ!」
荒い息を吐きながらビャクヤが罵る。
「卑怯?」ブローデルは首を傾げた。
確かに本来ならば手出ししてはならない見届け人がクロスボウを撃ったが、前日にそれについて地母神にお伺いを立てていた。
結果、許可されていた。卑怯なわけがない。
「貴殿は何か勘違いをされておる」
きょとんと言う風に、ブローデルは答えた。
「見届け人に加勢させるなんて……」ビャクヤは血で赤く染まる歯を食いしばる。
ゆっくりと彼は立ち上がった。
脇腹にクロスボウを受け、肩を潰されながら、彼は戦いをやめようとしていない。
「何と見事な!」ブローデルは感激した。感激して涙を拭った。
「判りました。この決闘を続けましょう、いざ正々堂々ですぞ」
見届け人が二発目のボルトを装填している。
ブローデルは最早戦闘不能に近いビャクヤに、モーニング・スターを払った。
簡単に吹っ飛んだ。今度は胸部の金属を歪ませて。
二発目のクロスボウが肩に当たり、反応できなかったのだろう。
ビャクヤは太い木にぶつかり、落ち、動かなくなった。
「終わりですかな?」ブローデルが目配せすると、彼の弟子たる見届け人のリュイが今一度クロスボウを装填する。
「これでよいのです」ブローデルはモーニング・スターを下げて、天に祈る。
「おお! 大いなる地母神エルジェナ、私はこの試練に勝ちましたぞ」