マドッグとミュルダール3
どこかに消えていたマドッグが姿を現した。ロングソードを手にしたまま。
「……ふう」その様子をしげしげと見つめ、ミュルダール納得した。
「そう……これは作戦ね? 私を疲れさせる」
「まあな。昨日騎士と戦った時にあんたの弱点を二つ見つけた……一つはあんたは優しい。あのどうしようもない騎士どもを殺すのも躊躇っていた。小さな女の子を見捨てる訳がない。そして魔法を使った後、あんたは疲れていた。どうやら魔法は疲れる物らしい」
その通りだ。魔法はいちいち全身全霊を込めて精神集中をしなければならず、しかもそれは徐々に出来なくなっていく。つまり回数がある。
マドッグはそれを突いたのだ。
「さあ、決闘だ」
何でもないかのようにマドッグが宣言する。
「ダメ!」気配にエリナはミュルダールの前で、両手を広げる。
「お姉ちゃんを傷つけないで!」
ミュルダールは少女の背に、頬が緩んだ。
──まあいいか、私にしてはいい死に方だ。少なくてもこの子を守れた。
「エリナちゃん、危ないから下がってて」
「お姉ちゃん!」
ミュルダールはエリナの丸い目に自らの微笑みを見た。
「大丈夫、お姉ちゃん強いから……見たでしょ? あんな奴がーんよ」
エリナは迷っていたようだが、渋々繁みに戻る。
勿論、ミュルダールは判っていた。
疲労で杖が重く、もう魔法も殆ど使えない……この状態でマドッグに勝てるわけがない。
マドッグのロングソードは時を置かず、あっさりミュルダールを肩から斜めに切り裂いた。




