マドッグとミュルダール2
アンデッドどもが襲いかかった。ファイヤースカルが一直線に突っ込んでくる。
「ふん」とミュルダールは意にも帰さない。
「ウィッチ・アロー!」
ミュルダールの杖から青い光が迸り、空を飛ぶ髑髏が粉砕される。
「ほら」と一転優しく、エリナに囁く。
「あんな奴らにあなたを傷つけさせない、大丈夫よ」
怯えていたエリナが、ぎゅっとミュルダールに抱きついた。
力が沸く、子供の温もりが彼女を奮い立たせた。
「ウィッチ・アロー」彼女は何度もそれを唱え、ファイヤースカルを一掃した。
「さて」雑魚を蹴散らした彼女の前にいるのは、スペクターだ。
自分が死んだことが許せず、怒りに燃える亡霊。
「もう仕方ないでしょ! 黙って死んでろ!」
ミュルダールは一言叫ぶと、真剣な表情で呪文を唱える。もうぼーとしている彼女はどこにもいない。
「ライトニング・ボルト!」
雷の魔法を放ち、次には跳ぶ。スペクターの反撃を避けたのだ。
「グウォォォォ」
ライトニング・ボルトに打たれた亡霊は苦しんだようだが、まだ形を失っていない。さらにそんな奴がまだ数体残っている。
「ふふ」ミュルダールは挑戦的に笑う。
「よろしい、どちらが上かはっきりさせましょう。真の魔道を見せようぞっ!」
「ファイアー・ボール」ミュルダールが唱え、スペクター達は炎に包まれる。
「グオゥゥ」苦悶の呻きが上がり、スペクターは微かに薄らむ。
が、慌ててミュルダールは防御の魔法を使った。
「ソーサラー・アーマー」エリナにだ。
怒ったスペクターが反撃の一撃を向けた。
間一髪、エリナは魔法の防具により守られた。だがミュルダールのローブの胸部はざっくりと裂かれる。
「お姉ちゃん!」エリナ悲痛に叫ぶ。
「大丈夫大丈夫」とミュルダールはむしろ笑って、彼女の頭を撫でた。
「私これでも強いから、平気だよ」
ミュルダールは傷ついた胸を張り、次の魔法に移った。
スペクターどもが消えるにはその後、しばらく必要だった。だが老練のソーサラーミュルダールはエリナと言う弱点を抱えながらも、ついに敵を滅ぼした。
「はあはあ、ふう、ふう」と彼女はエリナを降ろして、杖に寄りかかる。
「大丈夫だった? 怖かった?」
エリナを心配すると、少女は豊かになった表情に、輝くような笑顔を浮かべる。
「うん! ちょっと怖かったけど、お姉ちゃんが強いから大丈夫!」
「そう」ミュルダールもつられて笑みを浮かべる。
その時、
「ご苦労さん、だいぶ疲れたようだな」




