結ばれる者たち2
「もし俺が負けたら……君はみんなの元に帰ってくれ、大変だろうけど」
「それって」織恵の目が大きくなり、次には見る見る濡れだした。
「何それ、命がけって事じゃない! そんなのダメ、嫌よ!」
今まで距離を取っていた織恵が、勢いよく白矢に飛びついた。
「ダメ! やめようよ、ね?」
「……でも、加藤君と岡部君が……」
「どうでもいいわ!」織恵の絶叫に白矢は驚いた。
彼が知っている細木織恵は、常に誰かの心配をしているような優しい娘で、友人の命をどうでもいいと突き放す少女では、なかった。
「どうしたんだよ? 織恵」
「もういい、もういいじゃない……ねえ、逃げようよ。私この世界で暮らしてもいい、白矢がいるなら我慢する」
「え」白矢は首を傾げる。何を言われたか判らなかった。
「好きよ! あなたが好きなのよ! だからあの人のことが許せなかった! 違う女と触れ合うなんて許せない……ね? 私と一緒にこの世界で静かに暮らそうよ。元の世界に戻らなくてもいいから」
白矢は腕の中のいる織恵に何を言えばいいか判らない。ただ、その言葉は彼の目を覚まさせた。
──そうだ! 俺だってずっと前から織恵が好きだった。だけど相手にされていないと思ってた……けど、けど……
白矢は不意に、織恵に激しく狂おしいような愛おしさを感じ、そのままベッドに倒した。
「え!」と彼女は少し驚いたようだが、静かに目をつぶる。
「……私、最初は白矢だと決めてた……でも、こんな状態は嫌だったな。せめてお風呂行けばよかった……私汚いし臭いし……本当はちゃんと髪を洗って、シャワーで体も綺麗にして、念入りに歯磨きもしたかった……むだ毛だってこの世界に来てからどうしようも出来なかったし、女の子らしく処理したい」織恵は悔しそうにむせび泣く。
「そんな事ないよ」白矢は優しく慰め、彼女の服を脱がしていく。
「これはきっと人間の臭いなんだ。人の生の臭い。自然なんだよ、だから俺は気にしないし君の何もかも愛おしい」
皆部白矢と細木織恵はこうして結ばれた。ミュルダールに鍛えられた白矢はともかく、初めての織恵は戸惑うばかりだったが、若さが二人を楽しませた。
彼等の噴き出した欲望と愛は止まらず、そのまま決闘の期日まで三日間ベッドで貪り合った。




