64/89
希望
第六章
マドッグが懸案の復讐騎士どもを倒して帰ると、ソフィーはベッドの上に半身を起こしていた。
まだ顔は青白く、瞳の輝きも弱い。
「ソフィー……」マドッグは彼女を抱きしめる。
「どうしたのマドッグ?」
ソフィーは突然の抱擁に狼狽しながら、微かに笑った。
「いい知らせがある」
彼は大きく膨らんだ袋を見せる。
「お前に医療を施せるんだ。英雄的治療法の薬も手に入る」
ふっとソフィーの表情が暗くなる。
「……そのお金、どうしての? マドッグ……危険な事していない?」
「してないさ、これはちょっとした冒険の結果だよ」
マドッグは嘘をついた。心の中で、騎士達との戦いもちょっとした冒険だ、と言い訳しながら。
「そう」ソフィーは安堵したように俯いた。
「あした浴場主のムノンの所に行こうぜ、まず治療だ」
「うん……そしてらまた……」
ソフィーの言葉が詰まる。子供を失ってから日にちも経っていない。彼女はまだ傷ついている。
マドッグは再び彼女を抱きしめた。
「ああ、考えておいてくれ……俺達の子供の名前を」
「うん」ソフィーが輝くように笑った。