騎士と勇士9
全ての後片づけが終わり、マドック達四人の勇士が、また一堂に返していた。
「これで騎士殺しはなしだ」
六つ消し炭を要塞近くに埋めたマドッグは陽気に宣言した。
「あんまりー、いい気分じゃーないなー」疲労で顔色が悪いミュルダールが唇を尖らせる。
「とにかく、俺達はこれで決闘に専念できる」
「どうしても、やるんですか?」
ビャクヤの問いに、肩をすくめて見せたマドッグは、
「やらないとお前はブローデルから情報を聞けないだろ? ミュルダール、だからあんたは俺とだ」
「はあー」ミュルダールは吐息し、「あんましー、あんたはー、好みじゃないのよねー」とそっぽを向く。
「仕方ないさ」マドッグはどこか投げやりだ。
「では、ビャクヤ殿。私の相手はそなたでよろいしか?」
「……はい」ビャクヤはしばらく唇を噛んでいたが、決心したのか頷いた。
「ミュルダール、決闘は明日の夕方、場所は南の街道だ。見届け人は俺が探す」
「はー、もー好きにしてー」
ミュルダールはうんざりしたように、丸投げする。
「ビャクヤ殿」ブローデルは少し体をすぼめて詫びた。
「すまぬが、私には務めがある、決闘は三日後でよろしいかな?」
彼等は何か言い合っているが、マドッグは密かに考えることがあった。
かっぱぎだ。
騎士達の大仰な鎧と飾りのついた剣は、魔法で燃やすのに邪魔だから外している。それを売ろうと彼は考えている。勿論、彼等がここまで乗って来た軍馬もだ。
それらはかなりの額になるはずだ。普通金貨五〇〇枚が相場だろう。
ソフィーにそれで『英雄的治療』に使う薬と、浴場で医療も施せる。ついでに新鮮な肉も、ライ麦ではないパンも買える。
マドッグは、たった一人の家族であるソフィーを幸せにしてやれる幸運に、一人心が浮き立っていた。