59/89
騎士と勇士5
「しまった!」
ビャクヤはがしゃりと倒れたユベールを抱きかかえた。しかし折れたレイピアは彼女の右目に深々と刺さっており、ユベールはとうに事切れていた。
呆然とする。女性を殺したくなかった。
「……違うのよー、事故だよー。気にしちゃダメよー」
いつの間にかミュルダールが隣にいた。疲れた様子の彼女だが、彼の身を案じてくれた。
「ううう」白矢はその場に跪いた。
「すみません……ごめんなさい、ごめんなさい」とユベールの遺体に、何度も謝罪する。
「もうー、この子はー」
ミュルダールは優しく彼を抱きしめて、有無を言わず唇を重ねた。
細木織恵が判るはずがないが、二人は今夜も交わうことになる。