騎士たち2
その様子をもう一人の騎士であり、一行の中で唯一の女騎士・ユベールは冷ややかに見ていた。
ユベールはベルリオーズの妹であり、従兄弟でしかないコクトー達とは一段上の存在だ。
さらに彼女は野心を抱いている。
兄の領地を我が物にしようとしていた。
普通、女の兄弟に相続権など殆ど降りてこない。常に財産は男達かその妻が分けるのだ。
ただ一つの例外を除いて。
相続権のある妻が、修道院に入った場合だ。
ユベールは張り切るコクトーを目にし、唇を歪める。
彼の魂胆ははっきりしていた。亡き兄の妻ウィーダと再婚して、領地を手にしようと考えている。
妻へ相続された財産は再婚した夫の物となる。
コクトーはそれを狙っている。
なぜなら、ベルリオーズの妻ウィーダとベルリオーズの従兄弟コクトーは、今熱烈な『宮廷風の恋』の真っ最中だ。
「はっ」とユベールは嗤う。
『宮廷風の恋』などと美化されていても、本質は姦淫であり不倫だ。もしこの事実が表に出れば、ウィーダは自動的に修道院に送られ、コクトーは破滅する。
そうなれば兄の領地は全て彼女の物となる……まだだ。兄には息子のエルンストがいた。
しかし彼はまだ二歳で、ウィーダを追い払った後にユベール自身が後見人になればいい。
事故はどこでも起きるし、毒蛇はどの繁みにもいる。
ユベールはほころびそうになる口元を引き締めると、信用ならない騎士達の後に続いた。