表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/89

異世界人への誘惑


 ミュルダールは自分が勝利すると判っていた。敗北など微塵も考えていない。


 まあ、そもそもこの人のいい少年は負けても見逃してくれる、とは思っていたが。


 とにかく当初の予定通り勝った。圧勝だ。


 どうもこの世界の人々は魔法を異端と決めつけた時から、魔法に対する防備を失っている。ボガートとかもそうだ。


 魔法使いと戦う時はもっと間髪入れず攻めねばならない。魔法使いが精神を集中する余裕を与えてはならない。


 しかし白矢もボガートも、その他彼女が相手にしてきた敵達も、何故か魔法使いと向かい合い、正面から戦おうとする。 


 こちらが第一撃を繰り出すまで、それこそぼけっと待ってる。


 ──しょうがないなあ、


 ミュルダールは嘆息しながら毎回圧勝している。


 その後は大概殺している。手品の種明かしは一度きりなのだ。 


 だが今回の目的は違った。


 ミュルダールは、氷りづけのビャクヤをしげしげと見つめ、熱く呟いた。


「やっぱり似てるなー」


 彼女の元夫だ。


 ミュルダールはこれで四〇〇歳だ。ハーフエルフはエルフよりは短いが人間などより余程長命だ。


 だからこそ魔法の達人になったりする。


 だからこそ、人間の男の心理を知悉している。


「ねえービャクヤー」


 ミュルダールは彼の耳に囁いた。アホの血が疼く。



「この決闘ーチャラにしないー?」



「え?」案の定ビャクヤは驚く。


「私ねー、最近夜がさみしーの……君が私とー一晩共にしてくれたら、決闘忘れたげるー」


 ミュルダールはビャクヤの温もりが欲しかった。欲しくなった。昔の夫に似た少年に愛されたい。アホな行為だとしても。


「そ、そんな!」


 ビャクヤは耳まで赤くなる。


「出来るわけ無いです」


 だが彼の目にちらちらと欲望の火が灯っている。仕方ない、ミュルダールは知っている。この位の年頃の男の子は、女の子への興味で一杯なのだ。


「いいじゃないー、君、恋人いないんでしょー」


「でも……」


「オリエちゃんもー、あなたをーどう思っているかーわからないんでしょー?」



「それは……」



「たった一度だけー、お願いー」


 ミュルダールは深々と頭を下げる。


「私をー、助けてー、欲望に負けそー」


「あああ、あの」


「それともー」彼女の目が鋭くなる。


「決闘続けるー」


 ビャクヤは何か考えている。頬を染めながら。


 このまま決闘を、など不可能だ。もう彼は負けている。


 ミュルダールは彼の内心を完璧に見抜いていた。理性と欲望が戦っている。密かに首元に息をふーとする。



「二人だけのー、ナイショにーするからー」



 ビャクヤの頭ががくっと垂れた。落ちたのだ。


「うふふー、宿屋はー私のおごりー」


 こうしてビャクヤとミュルダールは、一夜を共にすることとなった。



 ハーフエルフのソーサラー・ミュルダールVS異世界人戦士・皆部白矢。ミュルダールの勝ち(童貞の白矢は、経験豊富のミュルダールにより何度も昇天)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ