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戦士ルベリエ2

 ルベリエの住む街を収める領主が、下らないことで隣の領主と諍いを起こした。


 騎士達の群れはすぐにやって来た。


 領主は負け戦に街を見捨てて逃げ出し、となると勝った騎士達は騎士道精神を発揮した。


 街のいたる物を略奪し始めた。


 金目の物は勿論、個人所有の下らない骨董品、何もかも奪って……かっぱいで行った。


 それらが一段落すると、今度は騎士の高潔なる儀式が始まる。


 市民への虐殺と、強姦だ。


 騎士どもはそれが当然と言わんばかりに、ありとあらゆる女達に群がった。


 その中にルベリエの母がいた。


 彼の母はそれほど器量がよくない。太っていたし年も重ねていた。


 父が彼女を選んだのは愛とか呼ばれる下らない物ではなく、母の実家も大きな商家で財産を狙っただけだ。


 だから父には何人もの愛人と、その子供がいた。


 何故、見た目も悪い年増の母に騎士達が群がったのか、それが騎士道だからだ。母はルベリエの目の前で陵辱され、騎士達は笑いながら去っていった。


 人生の転換期だった。


 嵐が過ぎると、領主は帰り、何事もなかったかのように隣の領主と和解した。彼等の世界は平和その物だ。



 ルベリエの家は違う。



 愛など無かった癖に、騎士に犯された母を父は激しく罵った。父の罵声と母の泣き声がルベリエの日課になり、ある日母は泣かなくなった。


 しゃべらなくなった。動かなくなった。ただ起きて居間に行くとぶら下がっていた。



 耐えられずに首を吊っていた。



 父は何事もなく適当な理由をつけて葬ると、考えを変えた。


 美しい愛人に産ませた子を、後継者にしようと。


 その日からルベリエの立場は変わった。父の愛人とその息子が大手を振って彼の家をかっ歩し、どうしてかルベリエは愛人にこき使われるようになった。


 今まで無縁だった労働を、他の雇われ人と変わらず強制されるようになった。さらに雇われ人も今まで上にいたルベリエに、腹の中にため込む物があったのか、辛く当たった。


 ルベリエは彼等を憎んだ。ただ憎んだ。だがそれ以上に卑劣な騎士達を憎んだ。


 彼が家を飛び出し冒険者になったのは、野心があったからだ。


 冒険で名を挙げて、騎士達の悪行を断罪できる身分になろう。



 ガキの世迷い言だ。



 そもそも名を挙げた冒険者など皆無であり、騎士どもの馬鹿な夢である「王になった騎士」もお話だけにしかいない。


 社会はガチガチに造られていて、それを覆すなど不可能だ。


 ルベリエが悟ったのは、冒険者となってからしばらく経ってからだった。


 その時は何とも思わなかった。


 ルベリエはまだ若く、冒険者としての生き方も楽しかった。


 誰にも命令されず、誰にも強要されない。教会や領主に税を納める必要もない。眠っていたい時は一日中寝て、金が欲しければ冒険者ギルドで仕事を受け、敵の装備をかっぱぐ。


 彼は生まれはよかったから字が読め、法外な値段が書かれている依頼の羊皮紙も読めた。だから心配しなかった。


 いつか強くなったら強力で大きな魔物を倒して、一攫千金だ。



 ガキの世迷い言だ。



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