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夏の風に誘われて

作者: ラモス

昨年だったか、一昨年だったか。詳しく覚えてないが、身体の奥底から込み上げる何か珍しい物を感じたあの日を忘れないように此処に記す。


それは、まだ私達の周りが蟲の囁で溢れ初めて間もない頃、僕はいつも通り明朝から学校へ行き学生の本分である勉強をする為に授業を受けた。今日は珍しく学校は昼までだった。昼からは自由に帰っていいのだが、クラスの奴らとは帰り道が一緒なのと、そいつらと一緒に帰りたくないのが相俟って、僕は少しだけ自習室に残ることにした。


30分くらいたつと僕は帰りの支度をし、駐輪場へ向かう。そしていつも通りの道を通りいつも通り家に帰る筈だった。


帰りの道中、何時もより時間に余裕があったからなのか受験生らしくも無く寄り道をしたくなった。ほぼ三年間も通い続けた道だし抜け道を探すことも兼ねて何時もなら行かないであろう踏切の奥へ行った。当時、僕の住んでいる町は都会ではなくかと言って田舎でも無いよく言えば中庸、悪く言えば優柔不断のような町だった。いかにもその町が人だとしたら決心をつけるのが遅そうな印象はとてもある。


踏切を入る前のいつも通りの道は塗装された何の変哲もない道路であり、その日は見慣れていた事も相俟ってか、殺風景であり、あまりいい印象はなかった。その上、いつもとは違う行動をとるのは些か安心出来るものではなく、好奇心で踏切を渡ってみたものも実際少し後悔している面もあった。


最初の方は楽しかったが、少しするうちに不安になり15分もしないうちにいつもの道に帰りたくなってきた。普段なら自分の思うままに行動するのだが、今日はそれが出来ない。それが出来ない状況にあった。つまり、迷ったのだ。見ると辺りは見知らぬ光景でとてもいい思いはしなかった。見知らぬ家、見知らぬマンション、見知らぬロウソン、様々な見知らぬ面子に眩暈がする程、不安の念に駆られたが、初めて見る新鮮な風景に次第に心踊らされていった。


少しするともう、時間も忘れるくらい楽しかった。目新しい景色ばかりで、次第に自分の町に色が付いていった感覚だった。


少し進むと大きな森が見えた。真っ先に危険という感情よりも気になるという感情が出てきた。


森の中はとても綺麗だった。陽の光と木々の生い茂りによって生まれるグラデーションは僕の目に焼き付いた。周りで鳴き叫ぶ虫たちの囁も耳にこびり付いた。今まで通っていた通学路にこんな場所があるなんて、想像も出来なかった。生い茂る木々に囲まれて僕は夕日が起き上がる直前の時間帯まで物思いにふけていた。この場所の温度、匂い、音、光、味、全てに我が身を委ねた。その時、自分の身体の奥底でドロッとした物がフツフツと湧き出てくるような感覚があった。


僕はまた生まれたのだ。

思い出しながら書いたので随筆なのですかね?ジャンルがあまり分からないもので…

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