表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【eスポーツ小説】Faster Fastest R  作者: 赤城康彦
56/56

Tokyo Final ――東京決戦――

 主催者の北条たち、スタッフたちも賞賛の拍手を惜しまない。

「よし!」

 フィチは両拳を握り締め、勝利の喜びをあらわにする。龍一は、ふう、と大きく息を吐き出し。フィチに向け親指を立てた。

 ヤーナはシートに背を沈めるようにもたれかけさせた。

(あーあ、また負けたー)

 ディスプレイを見る目もうつろだったが。ため息ひとつついて、気を持ち直してシムリグから立ち上がろうとすれば。優が手を差し伸べていた。

 両チームのメンバーたちが裏から出てきていたのだ。

「お疲れさん」

「スパシーバ」(ありがとう)

 ヤーナは優の手を借りて立ち上がった。

 ウィングタイガーは、勝利と、ワン・ツーという好結果に沸いた。

 メンバーたちはシムリグから立ち上がった龍一とフィチを囲んで、勝利の喜びを分かち合あっていた。

 ポイント順で。

 フィチ17ポイント。龍一16ポイント。ヤーナ15ポイント。

 チームとしても、Forza E World GP以来の優勝だった。あの時はヴァイオレットガールが2位で間に挟まっていたが。今回はワン・ツーだ。

 それから、誰からともなく、両チーム交わり合い、肘タッチや握手をし。互いの健闘を讃え合った。

「やられましたよ。完敗です」

「ええ、でも、こっちも紙一重でしたわ」

 ソキョンと優は、優佳を通訳に挟んで、互いの健闘を讃え合った。

 ヤーナは龍一とフィチと相対し。

「次は負けないわよー」

 と、フィチの胸を拳で軽く突いた。フィチはおどけて吹っ飛ばされるようなコミカルな仕草を見せ、笑いを誘った。

 それからにっこと笑って龍一に向き直る。

「で、さあ、勝ってヴァイオレットガールからのご褒美は、おあずけ?」

「や、やめてください、そんな……」

 龍一は顔を真っ赤にして、しどろもどろ。

「あはは、あんた本当に面白いねえ」

 と言いながら左腕を龍一の首に巻きホールドし。耳元でささやく。

「そのほっぺはヴァイオレットガールのためにとってあげるから、安心しな」

「いえ、ですから、あの、その……」

「モテる男はつらいねえ~」

 なんと今度は反対側からフィチが龍一の首をホールドした。

 龍一は照れくさそうにしつつも、こんなのもたまにはいいかなとか考えた。

(いいなあ、青春の1ページって感じで)

 北条は3人に微笑ましさを覚えて、より笑顔になった。

 司会の冬月も笑顔で、マイクをまずフィチに向けた。が、フィチだけでなく、龍一とヤーナの3人は、互いに視線を交わして頷き合った。

 組み合ったまま。

 せーの、と、

「ありがとう! ギャラリーの皆さん、試合を観てくれて、ありがとう! チームや主催スタッフの皆さんも、ありがとう!」

 と3人一緒に声を張り上げ、感謝の気持ちを伝えた。

 やや驚いたが、笑顔の司会の冬月の目に、うっすらと感動の涙が滲む。

 北条たちスタッフも、ウィングタイガーにレッドブレイドのメンバーたちも、そしてギャラリーたちも。

 3人の気持ちが嬉しくて、万雷のごとく響く拍手を惜しまなかった。


おわり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ