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【eスポーツ小説】Faster Fastest R  作者: 赤城康彦
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Tokyo Final ――東京決戦――

 自分はそのページをめくる者になるなんて、夢にも思わなかったものだった。

「さあ第2レース、夜のスペインのターマックステージ、スタートです!」

 司会の冬月の声とともにコ・ドライバー、フランシス・シェイクスピアがカウントを始める。

「5、4、3、2、1、Go!」

 アクセルを踏み、スタートゲートをくぐり、エキゾーストノートを響かせて、スタートした。

 ヘッドライトで夜闇を切り開き、エキゾーストノートでくうを揺らしながら、スペインのターマックを右に左に駆ける。

 しばらくして、町が見えてきた。

「おお、きれいだな」

 誰かがぽそりとつぶやいた。

 100インチ大型ディスプレイには、夜のスペインの町の風景が映し出される。街路灯や窓の明かり、それらが照らし出すヨーロッパならではの暖色系の彩の家屋や教会、塔のある町。道端のギャラリーたち。中には発煙筒を掲げ赤い煙をもくもくと煙らせている者まであったが。

 夜闇と町の灯かりのコントラストも鮮やかで、一幅の風景画を観ているような気分にもなるのだった。

 その、夜闇を払うともしびをともす町を、フィエスタが、i20が、ミラージュがくうを揺らさんがばかりに駆け抜けてゆく。

 町中にはヘアピンよりもきつい右のV字のカーブもあった。一気にスピードを落とし、1速まで落とし。3人ともうまくハンドブレーキを引いてリアタイヤをロックさせてスピンターンし、3台のマシンはスキール音を響かせ、タイヤから煙を吐き、V字カーブをクリアし。

 次の左直角カーブも、うまくハンドブレーキを引き、クリアしてゆく。町の灯かりに照らされるタイヤからの煙が、ほのかに白く映し出されて。くうに溶け込むように消えてゆく。そこには幽玄の趣さえ感じられた。

 町を飛び出し、郊外のワインディングロードに突入する。

 夜空には星々がきらめき。月も浮かび月光をともし、夜闇の中から丘陵のなだらかなラインがうっすらと浮かび上がる。

 区間によっては夜空が紫がかることもあった。

 ふうーと龍一は大きく息を吐き出す。やっぱり夜となると視界が悪く、昼のように飛ばせない。

 それだけに記憶力とコ・ドライバーのフランシス・シェイクスピアの指示が頼りだった。

 ハンドルを握り、ディスプレイを見据える。右に左に、あるいは坂を上ったり下ったり。

(カールさんはこれをリアルにやってたんだな。まったくすげーな)

 eスポーツの試合の決勝ともなれば、やはり練習とは違う。ワンミス命とりの緊張感が半端ない。

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