Tokyo Final ――東京決戦――
「得意なところだと調子に乗らず、苦手なところは安全運転……」
「それじゃ勝てないじゃないの」
フィチの言葉にソキョンは口をとがらせる。
「連勝されたら、あとはチーム内の順位争いになっちゃいますねえ」
優佳が憂いを含んでい言う。
次も同じ順位だと、ヤーナ14ポイント、フィチ10ポイント、龍一8ポイント。第3レースでフィチが勝っても、ヤーナ19ポイント、フィチ17ポイントで、逆転はなくなるから。
次のレースではウィングタイガーでワン・ツーで、どうしてもいきたいところだ。
「もっと頑張らないと、応援団もいるんだから」
と、ソキョンはスマホを差し出す。Forza E World GPでウィングタイガーを応援し実況ライブ配信もしてくれた、あのコスプレコンビからの応援メールだった。コンビの写真も添付されている。
スケジュールの都合で実況はできないけれど、応援しています。ファイティン! と書かれていた。
龍一も、ヴァイオレットガールとレインボー・アイリーンから応援のメールが送られていた。
予選時は時間が空いていたが。スケジュールの都合で今日はライブ視聴できないそうだ。だけど、応援してるよ、頑張ってと、来ていた。もちろん、ありがとう、頑張るよ、と返信したのは言うまでもない。
「あの、いいかな……」
と、龍一は何か思いついたようで、小声でつぶやくように言う。何事かとメンバーは耳を澄ませて、話を聞けば。
「なるほど。それはやってみる価値はあるかも」
と、一応の納得の反応。
「馬鹿正直に頑張るだけじゃだめだけど、それでもそうしなきゃいけないときはあると思うし」
「そうね。龍一も成長してるわね。これが結果につながれば、もっといい条件で契約更新してもいいわね」
「まあ、そんな下心で言ったわけでもないけどさ」
「謙虚さは君のいいところだけど、もっと貪欲になってもいいと思うよ」
とかなんとか言いつつ、いかに第2レースを戦うかの方針は決まった。
レッドブレイドも方針打ち合わせは余念がなかった。
時間となった。
3者シムリグにスタンバイする。
夜のスペインのターマックコース、16キロ。
蒼天のウエールズから一転しての、夜の世界。
夜空には星々がちりばめられて、銀河を形成している。
「シムレーシングの歴史がまた1ページ」
と、龍一はおどけてつぶやいた。ケニー・ブレイクはやがて自分を負かすであろうシムレーサーの出現を楽しみにし、それを、ページをめくると表現していたが。




