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【eスポーツ小説】Faster Fastest R  作者: 赤城康彦
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Chase the mirage! ――彼方を追え!――

 レコードを叩き出した証であるミラージュカーと同じように走れば、たしかになんとかなりそうで、シムレーシングをしているシムレーサーなら誰でも考え付くことだ。

 が、簡単なことではない。

 人間の身体は、定められたプログラムではないから、まったく同じことを再現することはできない。

 自分の出したゴーストやミラージュカーにすら勝てないことなど、シムレーシングではよくあることだ。

 実際龍一はForza Eで自分のゴーストに勝てず呻吟していたことがある。

(だからって、もう駄目だとあきらめるようじゃお話にならないわよね)

 ミラージュは4つのタイヤを激しく回転させながら、ダート林道を右に左に。四駆なのでほぼカウンターを当てず、きれいなラインをなぞり砂利や砂煙を撒き散らしつつ、突っ走る。

 ゲームでの視点は、ボンネット越しの視点。木陰と木漏れ日が交錯する森林ダート林道の風景が、次々と迫って流れてゆく。常に斜めなので、崖か山肌に、道端のギャラリーがちらちら見える。

 下りの少し緩い左カーブ。ミラージュは雄叫びあげて、下り坂を駆け下り。下りきってから緩い右カーブの上りになり。これも雄叫び挙げて駆け上がり。駆け上がりながら、龍一はさらに右を向かせ。

 上がり切ったところで、ふわっとタイヤが路面から離れそうなところを、ブレーキを踏み前に荷重をかけマシンを安定させ。

 4つのタイヤが路面とつかまえていると確信し。

 タコメーターの針が一気に跳ね上がり、レブリミットでぶるぶる震え。マシンの咆哮は一段と甲高くなる。

 上がり切ってから、よりきつめの右カーブとなっており。コ・ドライバーの指示と記憶力の見事な連携で上手くクリアし。

 4つのタイヤは砂利や砂煙を撒き散らし、ダート林道を駆け抜け。森林区間を過ぎ、草原区間に入り。視界が広がる。

 青空澄み渡り、雲は思い思いに空を泳ぎ、草原の緑も陽光に照らされて、その緑も澄み渡るようだ。

 その中を茶色のダート林道がくねくねと走り、丘陵地帯の丘の上り坂を見せ。その向こうの青空めがけて、丘をカタパルトにするように、ミラージュは、i20は駆け抜けた。

 KBカーと同じラインを走るプランは、今のところ、現時点では功を奏しているようで。うっすらとその姿がおぼろげに見えるものの。 

 引き離されることなく、ついてゆけている。

「ミラージュでミラージュを追うのか」

 龍一は、ぽそっとつぶやいた。

 優佳はゲーム進行をはらはらしつつ眺め。ウェールズの草原を突っ走るミラージュに思いを馳せた。

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