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【eスポーツ小説】Faster Fastest R  作者: 赤城康彦
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Chase the mirage! ――彼方を追え!――

 KBカーは見えない。ほぼ同じ位置にいると思われる。が、ディスプレイ向かって右上に表示される順位表を見れば、Kenny Brakeが上にある。つまりKBカーの方がわずかながら速く走っている。

 フィチは静かに息を吐き出す。

 そのころ、ヤーナは。

 コースも中ほどをすぎ、KBカーとはいい勝負をしている。と言っても、順位表ではKBカーが上に表示されている。

 優やスタッフたちは黙り込んで、静かに成り行きを見守る。

(さすがに一度目では無理か)

 いい感じで走れてはいるが、さすがに一度目で勝てはしないだろうと内心思っていた。

 それでも、最悪でも規定内の三度目で勝ってくれると信じている。

 草原区間を抜け、森林区間に入る。何度も練習してあるし、ワールドレコードを出してもいるので、ある程度慣れているとはいえ、見晴らしがいいのから一気に視界が悪くなるのは、慎重にならざるを得なかった。

 なにより森林区間の道は山を削りだして作られた、片方は山で片方は崖といういやらしい、エスケープゾーンのない道路形状だった。

 砂利道で滑る。コーナーで4つのタイヤはスライドしながら、後輪はがけっぷちぎりぎり、あるいはケツが山にぎりぎり迫る。

 コースアウトしそうでしないぎりぎりの走り。

(まったく、ヤーナはどこまでもヤーナだな!)

 順位こそ変動はないが、KBカーは現れなくなった。ほぼ同じ位置にいる。

 ミラージュカーのいやらしいところは、当たり判定がなく接触しないから、前に出てインをふさぐなどして抜かれないようにすることができないことだ。

 山と崖に挟まれた森林区間のダートの道を右に左に。木陰と木漏れ日が交錯し、赤いフィエスタのボンネットに影と陽光が交互に覆う。

 ゴールまでの距離も縮まってゆく。

 ディスプレイの向かって左側に縦線があり、その横に三角矢印が2つあって、線をなぞるように上っているが。これはスタートからゴールまでを表し、三角矢印は車を表している。

 三角矢印はほぼ重なっている。

 線の真ん中を過ぎ、てっぺんのゴール目指して線をなぞるように上っているのは、ヤーナがゴール目指して走っていることも表していた。

 森林区間の間で、うっすらとKBカー、緑と黒のフィエスタが見え出す。ヤーナのペースが落ちたのだ。

 上り坂を上り切り、緩い右カーブの下り坂を駆け下る。エキゾーストノートの叫びをヘッドセットで聞き、感じる。

 エキゾーストノートの響きは、獣と化したマシンの咆哮。疾風となって風を食らう。

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