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【eスポーツ小説】Faster Fastest R  作者: 赤城康彦
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Chase the mirage! ――彼方を追え!――

 フィチのi20は草原区間を抜け森林区間に入った。

 ひそめそうになるのをこらえて目を見開き、視界の変化に対応しようとする。

 前方にうっすらとKBカーが見える。

(ひゃ~、しょっぱなから大変なことに……)

 ライブ配信は切られたが、ビデオチャットではつながっている。優佳は落ち込む龍一の姿を目にして、何とも言えない気持ちになった。

(今まで勝てなかったものに、ぶっつけ本番で勝てるか!?)

 思えば無茶な挑戦だ。

 でも、いい感じだ。

 フィチはつとめて冷静にi20を走らせ、KBカーを追った。

 未舗装のダート林道だ。コーナーをクリアする難しさだけではなく、砂利で路面は滑りやすく、道もでこぼこし、あらぬへこみにタイヤを取られたり、盛り上がりに乗り上げバランスを崩したりと、罠も多い。

(龍一はへこんでいるか)

 どのようにリタイヤしてしまったのかわからないが、今の心境は想像にかたくない。

 森林の中を流れる川にかかる欄干のない橋を駆け抜ける。この前後は下り直線でアクセル全開でいけた。

 しかし次のコーナーはきつめの左。微妙な力加減でブレーキを踏み荷重を前にかけつつハンドルを回し、ハンドブレーキを引き、4つのタイヤがスライド状態で斜めになり、きれいなラインをなぞるようにコーナーをクリアしてゆく。

 サーキットトラックと違い、道幅の狭い林道コース。その動作は、とても忙しい。慣れぬ者が見れば、目を回すかもと思われた。

 森林区間を抜け、草原区間に出る。下り坂で右に左に曲がりくねっている。見晴らしがいい、エスケープゾーンも余裕がある。飛ばせそうだ。と思うのは胸中の悪魔の罠だった。

 微妙にブレーキをかけつつ右に左にコーナーをクリアし、草原区間を突っ走る。i20はほとんど斜めになりっぱなしだ。

「……」

 イン側の盛り上がりを少し踏み、車がやや傾く。ブレーキをより強めに踏み、姿勢を安定させる。

 見晴らしがよくなったと調子に乗れば、盛り上がりやへこみにタイヤを取られて姿勢を崩し、クラッシュしかねない。

 ディスプレイ向かって右下に表示されるタコメーターの針は常にレブリミットと一番トルクが利く区間の間の、パワーバンドにあった。加速をなるべく殺さないよう、ギアを落とし気味にパワーバンドをとらえて離さないドライブが必要とされた。

 もちろんギアもどこかのレンジに入れっぱなしはなく、常に上げたり下げたり。シフトアップのタイミングを誤るとパワーバンドを外れて、加速が鈍ってしまったり。シフトダウンのタイミングを誤ると必要以上に減速してしまったりする。

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