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【eスポーツ小説】Faster Fastest R  作者: 赤城康彦
15/56

New Challenge ――新たな挑戦――

 戦争がはじまった時、龍一は不安そうに、

「どうなるんだろう」

 と言った。それに対して、

「惑わされず、日常生活を送るんだ。それも十分な抵抗だよ」

 と応えたものだった。

 それだけでなく、フィチは関連機関を通じての義援金も寄付もしていた。龍一もそれに倣い同じように寄付していた。

 フィチは淡々と読書を進める。文字ひとつひとつ、誰かが生きた証である。それが胸に打ち込まれて、心が涵養かんようされてゆく。

 ゲーマーになっていなかったら作家になっていたかもしれなかった。たとえプロになれずともアマチュアとして活動しただろう。

 運命とはわからないものである。

 そんなことを考えたりしながら、本は、フィチの手によって、また1ページ。

 そのころ東京で、ヤーナはチームメンバーとしての仕事を終えて拘束時間から解き放たれて。防寒ジャケットを羽織り、ヘルメットをかぶりロードバイクを駆り、寄り道をせずまっすぐ自分のアパートに帰り着くと、エアコンをつけ、服を軽装のものに着替えて。

 パソコンを立ち上げて操作し、関連機関のウェブサイトを通じて寄付をしていた。

 今日は自分に課している月一の寄付の日だ。

 それが終わるとベッドに横たわり。心地よく昼寝についたのだった。

 いろいろあるが、あれこれ考えることはせず、余計な消耗を防ぎ、温存するときは徹して温存したのだった。

 龍一はというと、愛車ミライースを転がし。郊外の山道、ワインディングロードに入っていた。もちろん飛ばすような馬鹿な真似はしない。

 飛ばさなくても車は動く。その動きを感じるのがこのドライブの第1の目的で。第2の目的は気晴らしだ。

 青かった空が徐々に藍色づいてきている。緑葉と紅葉が入り混じる山の景色を目にしながら、ミライースを転がし。程よいところで自動販売機のある休憩所で停まり、のんびり缶コーヒーをすすった。

 肌に張り付くような寒気だが、エアコンを利かせて暑いくらいだった車内から出てすぐだと心地いいくらいだ。

 外でひとりなのでマスクはしていない。

 しばらく走ったから、もうすっかり藍色の空模様になり、太陽もうっすら紅色をともしながらほとんど山に沈もうとしていた。

 缶コーヒーを飲み終えてリサイクルボックスに入れると、ミライースに戻って、帰路に就く。

 どの操作でどのように動くかを感じながら。

 翌日。

 練習にて、3つのコースをひととおり走ってみて。

 更新こそならなかったものの。

「……いいじゃない」

「挙動の安定感が増したんじゃないですか?」

 と、ソキョンと優佳は笑顔で言って。フィチも笑顔でうなずいて。

 龍一は得意げに、まあ、頑張りました、と応えたのだった。


New Challenge ――新たな挑戦―― 終わり

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