まおうの役割
少し長め…かな?
しばらく歩くと、玉座の間より少し小さい両開きの扉がある場所にたどり着いた。
「さて、ここかな。」
レディアウスはそう言いながら扉を開いた。するとそこは、先程の間より狭く、大きな長机に椅子がいくつも並んでいた。
レディアウスが迷いもなく椅子に座り、ラゲルトもその隣に腰を下ろした。
「さて、ラゲルト。そうだね、まずは魔王が何たるかを話さなければならないね。君は魔王とはどんな存在だと思っているのかな?」
「──…んー、国を治め、自国の民を守る存在…?」
「うん、いい線いってるよ。その認識は間違いではないけど…うん、もう言ってしまおうか。」
そうして勿体ぶるようにわざとらしく咳払いをした。
「いいかい?魔王というのはね、国そのものなのだよ。国のあり方全てが、魔王によって決定づけられる。君が言ったことはあってはいるんだけど、それだと何かまだ物足りない。うーん、説明が難しいな。簡単に言ってしまうとね、魔王がこうしたい!と望んだら民はそうなるように動く。魔王の言葉、存在、その全てが国であり、民の意向であり、他国とのあり方なのだよ。だけれどね、だからといって自分の好き勝手に国を運営しては行けない。なぜなら民が疲弊してしまうからね。民が疲弊してしまえば国は栄えない。他国と関係を持つこともまた難しくなってしまう。
魔王=国なのだよ、ラゲルト。だからよく考えて運営しなければならないよ。」
「ちょ、ちょっと待ってくださいレディアウス様。俺…いえ、私にはそこまで全て管轄しやりきる自信がありません…。」
慌てふためくラゲルトの言葉にレディアウスは一瞬キョトンとしてから大笑いした。
「──あっはっはっはっは、ふひひひ、ふへ、うあっはっはっはっは──…そりゃ、そんなの私にだってできないさ。魔王は万能ではないしね。」
その様子に再びラゲルトはほっとする。
「ここで魔王の常識をひとつ君に伝授しよう。魔王はね、一般的に魔王軍と呼ばれる軍を持つんだ。戦争に行く兵士たちの軍、国の方針を決める主に政治を担当する軍、国民の意見を聞き入れ改善点を模索する軍とかね。そして、そこには全部で10人のトップができる。それを魔王は『テイナー』と呼び、その中でも特に優れた3人が魔王の側近として活動するんだ。魔王軍の幹部たちは基本的に国民から募って魔王が誰を幹部にするか判断するのだが、この側近の3人だけは自分で何かしらを召喚することが多い。なぜなら、召喚では召喚者の力に応じて力のある者が召喚されるからだ。特に私たちのような魔王は強大な力を持っているね。だから、召喚した方がより強い者を従えることができる。まぁそこは君に任せるけどね。魔王としてやっていくための基礎知識はこんなもんかな。まぁ、私は引退した身だし、今代赤はよくやってくれていて私が面倒みる必要も無いから一年ぐらいは君についていることにするよ。」
ラゲルトはお礼を言いつつレディアウスの言ったことを一つ一つ飲み込む。そして疑問をぶつけることにした。
「側近というのはいつ召喚するものなのでしょうか。それと、魔王が代替わりしたことを国民に伝えなくてはテイナーを募れないのでは?」
「あぁ。代替わりについては魔王会議が終わってから伝えるからまだ少し先だよ。でもそうだね、召喚する側近3人ぐらいは早めに手元に置いておいた方がいいね。なんなら今一人目召喚するでもいいよ?」
「今?」
「そう。召喚っていうのは結構魔力を使うし失敗することも多い。だから、早めに召喚を始めるのをおすすめするよ。一日に召喚できる回数は3回までだけど、納得できるレベルで強い者が召喚されるのなんて、ゲーム内でレア度MAXのカードをピックアップ無しのランダムで引くぐらいの確率だからね。」
レディアウスはそう得意げに話す。ラゲルトは少し考えた素振りを見せたあと、決心したように1度うなずいた。
「──…はい。召喚してみようと思います。」