表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界一地味な姫騎士と運命の歯車  作者: はるかず


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/8

オリバー姉さま、とっても意地悪ですの!

あらすじ

影の薄かったアンジェ。しかし、騎士ラスタルとの出会いにより、段々と活力を取り戻してくる。

影が薄いのはそのままであったが、騎士としての鍛錬をする日々を送っていた。

しかし、妹オリバーの意地悪がアンジェに迫り、アンジェは困惑することとなる。

 数か月して、城のお昼の食事時。

 食卓を王様とお后、そしてアンジェが囲み、王族の食事が執り行われていた。

 その中の次女オリバーは、一人アンジェがいると思われる席をにらみつけ、めらめらと燃えていた。

「おのれぇ、アンジェ! 私の意地悪から、逃れようったってそうはいきませんわぁ~」

 聞こえないように怒りの呟きを放つ。

 アンジェを忘れるという障害に、執念で立ち向かうオリバー。

 ここ数か月、オリバーは起きてはアンジェへの執念と怒りでメモをとる習慣がつき始めていた。

 オリバーは今持っているメモを手に握りしめつぶす。

「どうせ騎士様とイチャイチャしているんですわぁ、許せませんわぁ!」

 ぐぬぬ、と拳に力が入る。

「このバラ園で捕まえてきた、ドデカ・カブトムシを靴に放り入れてやりますのよぉ……」

 しめしめと顔を悪い顔にして、次女は懐から自分の手のひら(90mm)はあるカブトムシを取り出した。

 他の虫にチャレンジしようとしたが、余りにもその魑魅魍魎ぶりにドン引いて、捕まえられなかったのだ。抵抗感の薄いカブトムシが終着点となった。

「せいぜいその大きさに驚愕しなさい」

 机に潜り、床を這って、前進し、アンジェの靴元にカブトムシを放り入れる。

 無事にスカートによじ登っていくのを見ると、ガッツポーズを入れ、匍匐前進を後退させて元の席に戻ろうとした。


 カサカサカサ……!


「……!」

「……この音は??」

「もしかして~~ですわぁ!」

 ゆっくりと首を、その音の主の方へと次女オリバーは見遣る。

 床に居たのは、青い触手を纏わせ、黒く動き回るナニカ。


「は、歯車ぁ……」

 ギギ、ゴゴ、とその黒く動くナニカが呻くように言う。


「ぎぇえええええええええええええ!?!?」


 次女オリバーの叫び声が、食卓に木霊する。

 国王が驚き、后が机下から這い出て来たオリバーを助け起こす。

「下に、ナニカ、ナニカがいるわぁ~~!とてつもないデカい、虫ヨォ!虫がいるわァ!」

 指さしながら、ぶんぶんと手を振り回すオリバー。

 食堂はひと騒動となり、逃げ回る家臣や、王様の警護が飛び出てくる様となる。

「お、大きい! 騎士様に見せてあげますの~」

 その横では、影の薄いアンジェか軽やかにカブトムシを拾って、きゃっきゃと、その大きさに喜んでいた。




「機械甲虫が食堂で出た!?」

 騎士ラスタルは、青いカールの髪を揺らすほどの大声を出した。

「はいですの」

 あの後、食堂であった騒動の一部始終の聴取に、ラスタルは奔走していた。

 その一人の目撃者ではないが当事者である、アンジェに協力してもらっているのだ。

「それで、姫ご自身はカブトムシを拾われてたのでありますか」

「実は、申し訳ありませんの! 私、カブトムシに目を輝かせてしまって!」

 ぺこ、ぺこ!とアンジェは平謝りする。

 呆れたようにせき込むと、ラスタルはアンジェの頭がある場所を撫でる。

「無事なのならいいのでありますが、なかなか度胸がある姫様だな」

 ははは、と笑い。からかわれたとアンジェは顔を赤くする。

「おや、恥ずかしがられて」

 ラスタルは大分アンジェが顔が見えなくとも、大体どんな人物か把握できるまではなっていた。

 ここ最近はラスタルはアンジェの教育に、バラ園で剣の素振りやランニング、簡単な筋トレを覚えさせ、体力作りに専念させている。

 アンジェは今まで構ってもらっていなかった衝動もあって、素直に何でも”はい!”の喜びの一言で、鍛錬に耐えていた。

 構ってもらえるのが嬉しいのだろう。ラスタルはそう思うと、姫を不憫に感じざるおえなかった。

「子供っぽすぎますの、カブトムシに喜ぶなんて」

 そばかす顔を赤くするアンジェ。その大きなカブトムシは、未だアンジェの手の中にいた。

「しかし、虫は自然に帰してあげようか」

 ラスタルは姫に提案する。

「そうですの。ほら、お帰り!」

 近くの木へと、アンジェはカブトムシをそっと置く。

 次第に登っていき、蜜を吸うカブトムシを二人で眺めていた。


 そよそよと木立がそよぐ木の下で、アンジェはラスタルに聞いた。

「ところで、機械甲虫ってどんな姿なんですの?」

「次女オリバー様が見たとおり、青い触手を纏った姿をしている」

「青なら外敵を攻撃することはないのだが、機械の無い王宮に出たのが問題だな」

 カブトムシから目を離し、下に居るアンジェの方を見下ろすとラスタルは言った。

「これから、聴取に王宮を回ろうと思う。それをしながら説明しよう」

 アンジェも木刀を持つと、ふんすといった表情でラスタルの後ろに着いて行った。



 アンジェとラスタルは王宮の廊下歩きながら、二人して話していた。

「機械甲虫は機械に寄生する。なので、危険性を知る教会の戒律で、機械は王宮で使われないのだ」

「何故ですの?騎士様??」

「命の危険性や、それを使って暗殺をたくらむ者がいるとされているからだ。勿論、機械は市民生活の方でも禁止されている」

 機械甲虫に襲われる危険性のせいで、機械の発展や研究はおろそかになっていた。また、教会の締め付けもあって、街では限定された機械しか使われていなかった。

「でも、この都市の地下には機械がたくさん埋まっているって聞いてますの」

「はるか昔の機械戦争で、機械はこの世界の全てに広がっている。この都市もそうだ。教会は戒めとして機械を制限することで対策を測ってきたのだ」

 歴史を知らないアンジェは、簡単な疑問を提言した。

「安全な場所はないのですの?」

「今のところ、ない……な」

 深刻そうにラスタルが応える。アンジェは歴史の重みを知らなかった。


 国王が座る謁見室にて、ラスタルは調査を開始していた。

 一番国王が座るであろう、謁見の場で暗殺として機械甲虫が使われる事を考えての事だった。

 見回しつつ、丁重に探索を進めるラスタル。

 ぽそりとアンジェが謁見室の椅子を見て、呟く。

「お父様は、私に関心が無いんですの」

「ふむ、それは何故?」

「だって、一度も私の部屋を訪れたことが無いんですの」

 悲しそうに呟くアンジェ。

「そんなことはないだろう。何か、思い出はないのかいアンジェ?」

 ラスタルは悲しそうな顔をするアンジェに問うてみた。

「むかし、私が姿が見えなくて、周りに放っておかれているとき。泣いて泣いて、訴えていたのですの」

 アンジェは思い出す。小さなころのアンジェは、継母と一緒に部屋を共にしていた。

 ベッドには沢山のぬいぐるみに敷き詰められていたはずだった。

「そんな時は、必ずお父様が大きなぬいぐるみを買ってきてくれて、私の部屋はぬいぐるみにあふれていたと聞いてますの」

 しかし、今のがらんとした部屋を思い起こし。疑問の言葉を発した。

「それが、いつ頃か消えてなくなっていましたの……? 昔は空想の中で人形たちと遊ぶこともあったですの」

「ふむ、そのぬいぐるみが何処に行ったかは気になるな」

 顎に手を当てて、青い髪を少し払ってアンジェを見遣る。

「アンジェ、良かったら私からぬいぐるみを送ろう。今度、都市の方に下りてみないか?」

「いいんですの!?」

 アンジェはぴょんっと跳ねて大きなおさげを揺らす。

「勿論でありますとも」

 ラスタルは謁見室を一回りし、衛兵にチェックしたことを伝える。

 機嫌を直したアンジェと共に、王様の謁見室を後にした。


 次に、后の部屋の扉を開いた。

 左右を警戒しつつ剣を持って入り込むラスタル。ちょいちょいと、手をこまねいてアンジェも中に誘導する。

 后の部屋は赤いカーテンの仕切りが多い、壁紙も赤を基調とした部屋で会った。

「お義母さまはいい人ですの」

 父の話題をしたので、義母についても話し始める。

「私の事を見ることができる、数少ない理解者なんですの」

 機嫌よくアンジェは言う。

「小さいころ、お母様とご友人だったのも会って、お父様が気に入ったと聞いていますの」

「君のお母さんと、君のお后様はご友人であられたのだね」

「ですの」

 ラスタルは后の部屋をテクテクと歩いて回る。ドレッサーの上に王様と今の后の絵画が飾ってあった。

「しかし、アンジェの母上殿の肖像画を私はまだ見たことが無い」

 アンジェはびっくりして眼鏡をずり下ろしかけた。

「そんな! どこかにあるはずですの。お母様と、お義母さまは中が良かったと――」

「これは、何やら何か意図を感じるのであります」

 后がほほ笑む肖像を眺めつつ、ラスタルは言う。 

「お母さまは仲が良かったんですの。何かの間違いですの!」

 ぽか、ぽか、とラスタルを叩く音がする。

「わかった、わかった。君が言うなら、そうだろう……次の部屋に行こうか」

 ラスタルはアンジェをなだめると、衛兵にチェックを伝え次の部屋に行った。


 最後に訪れたのは、次女オリバーの部屋だった。

 オリバーの部屋には、メモが散乱し、現在使用人が片づけて周っているようであった。

「あらぁ、騎士様ようこそですわぁ。そして、そこにいるのはアンジェですわねえ!」

 金のツインドリルをふぁっさと優雅に揺らし、迎え入れるオリバー。

「お姉さま、ご自分の顔にアンジェって文字が書いてありますの……」

 オリバーの顔に黒く書かれた文字に、アンジェは嬉しそうに声をあげて喜んだ。

「こ、これはぁ、貴方を倒すためのぉ、覚書ですわぁ~~~~!」

 顔をペタペタと触ってひた隠しにするオリバー。

「洗顔したときに思い出して、あげてますのよ!」

「私の事、覚えてくれてるんですの……!?」

 ぱぁあと花開くように喜ぶアンジェ。

「じょ、冗談じゃないわぁ! 誰が善意で覚えていると思っているのぉ????」

 アンジェに勘違いをされて、オリバーは驚き凄む。

「貴方のような、騎士様と一緒でないと何もできない子に。年上のくせして、ガキっぽいですわぁ!」

 オーホホホと、高笑いを決めるオリバー。しかし……

「……ぐすん」

「え”?」

 アンジェの泣き顔が、透明さが薄れすぅっと見えるようになる。

 目からあふれ出る涙をかきむしり、辛そうにしかめながら泣きわめいていた。

「うぁあああ……ぁ……ぁあ……」

「な、なんたることだ! アンジェ、泣かないでおくれ。君が泣くと、お日様さえ隠れてしまう」

 オリバーが真正面から見たアンジェが泣いていることに動揺する。

「あ、あらぁ? な、泣いてますのぉ?」

 自分が言った言葉に責任が持てない子供らしく、さらに慌てるオリバー。

 仕返しをするはずのアンジェが泣いているのに、その気配もオリバーからは次第に薄れていく。

「すまない、オリバー様。私はアンジェ様を一度部屋に連れていく」

 ひょいとアンジェを抱えるようにして、ラスタルが逃げ去るように去っていく。

 あ、あ、と何か言おうとしては、オリバーは去るのを見送る事しかできなかった。


 オリバーは叫ぶ。

「これでは騎士様への印象最悪ですわぁ~~~~泣きたいのですわぁ~~~~!!!!」




 その夜。

 結局、次女が見たという機械甲虫の姿は城では発見されることはなく。

 しかし、全てを見張り見終わった城内は、一端の静かな様子を見せていた。

 その廊下で、ネグリジェの上にローブ姿で歩く一人の尊い少女の姿があった。

 その少女はオリバー。

「コホン、アンジェ……今日の事だけれど」

 トントンと、アンジェの部屋を叩くオリバー。

 何気に、今日はアンジェをメモしなくても覚えていられる不思議な夜であった。

「私も言いすぎましたわ! 何を気にして泣いてらしたのかは知りませんけれど、謝って差し上げてよぉ?」

 

……。


「アンジェ?アンジェ……?」

 数10分待っても、出て来ないアンジェの姿にオリバーは首をかしげる。

「ワタクシ、意地悪ですから、貴方の部屋に入ってやりますわよ? さっさと出て来ないと、またあなたを泣かせてしまいますわよ?」


 しーん


「アンジェ?」

 不安になってオリバーは思いっきりアンジェの部屋を開ける。

 少し埃っぽいにおいと共に、開かれた場所には大きな空ベッドがあった。

 オリバーは中に入って、周囲をうかがう。

「いない、アンジェ! 何処へ……!?」

 第一王女、アンジェの姿が部屋から消えていた。

アンジェとオリバーの関係が好きです。

続きに期待があるのであれば、★の方よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ