彼女のその後。
目覚めたとき、気がついたとき、真っ白な雪のような部屋いた。
目の前には白い机とモヤのように顔が見えない『何か』がいた。互いに椅子に座っている。
『何か』は、彼女の注意がこちらに向いたことに気づき言葉を紡ぎはじめた。
甲高くそれでいて甘い声、女性のような少年のような声、が彼女に響く。
「気がつきましたか?」
彼女は頷く。そして疑問が湧く。
ここはどこなのか?
『何か』は、それを見透かすように、
「ここは、受付。魂が安らぐ場所を案内する受付です。あなたは現世で頑張りました。しかし心傷つき夢半ばで力尽きここに辿りついたのです。」
そう言われた瞬間、彼女はフラッシュバックのように断片的に最後の時を思い出す。
悲しみ
絶望
不安
雪
冷たさ
痛み
そして赤い血・・・。
そこまで思い出すとノイズが激しくなり全身を切り裂くような痛みが襲う。
『何か』は、彼女の様子を見て、
「辛い最後でしたね。無理をするとあなたの存在が揺らぎますよ。今は思い出さなくていいですよ。」
と穏やかな口調で言われた。
「さて、貴方はこれからどうしたいですか?現世での不遇や不幸を対価にこれから世界を創ることができます。そう・・・分かりやすく言えば『異世界』を創りそこでなに不自由なく生活を送ることができます。
現世でどうしても叶わなかったことも叶います。あなたが望むなら現世での性別も変えられます。
どうしますか?」
彼女は戸惑う、世界?異世界?創る?
確かにそういったものは好んで観ていたし好きだけど。
「私は・・・現世で罪を犯しました。多くの人に迷惑をかけてしまった。それを償うことがしたいです。」
彼女がここで初めていった言葉は悔恨だった。
『何か』は厳かにいう。
「あなたに罪などはないです。こちらでの価値観ではそれを罪とは言わないのです。だから安心して忘れなさい。まずはその冷え切った心を溶かして、あなたを癒し再び輪廻の輪に加える準備が必要です。
癒される場所を提供しますよ。」
彼女は、一時とも永劫と言える時間を考え答えた。
「普通がいいです。普通の家庭に生まれて、育って学んで、恋をして、子供を育てて、穏やかに過ごして最後を迎える、普通がほしいです。」
『何か』は、ため息をつくように
「あなたならそう言うでしょうね。」
そして努めて明るい声で
「・・・では、こうしましょう。貴方の努力や実績などが正当に評価される世界にしましょう。
自分以外の誰かに影響によって評価が影響されない境遇にしましょう。
そしてほんのちょっと幸運に恵まれるようにしましょう。」
と提案してきた。
彼女は、ほっとしたように頷く。
『何か』は、囁やくように
「あなたを守護する氷の精霊と共に行きなさい。貴方がこれから過ごす時は、愛にあふれ歌にあふれ、不安や恐怖などない穏やかな世界です。安心していきなさい。」
といい、この部屋の扉を指さした。
彼女はゆっくりと席をたち、扉に向かう。そして・・・
「ありがとうございました。」というと、扉をあけ消えていった。
残された『何か』は、
「あなたに幸あれ・・・。」
とつぶやくと、次の魂が来るのをまった。
ご冥福をお祈りいたします。
妄想です。
現実はあまりにもグロテスクで、救われない終わり方でした。
せめて妄想では幸せをと思い、鎮魂の意味で書きました。
なんのことを書いているのはご想像にお任せします。