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25  ケリをつける!

 

 戦いは終わったかのように思えた。操作元を失ったからか対人兵器は尽く自爆し、鉄の骸も機密保持を目的としてか魔方陣と共に消滅した。

 しかし、グリムは内心焦っていた。そんなことを他所に、勝利を確信した少女たちは集まってきた。


「あんたたち、あとはあたしとハンナでケリをつけに行くわ」


 その一言にその場の誰もが「?」を浮かべた。


「え、まだ終わってないの? どこに敵がいるの!?」


 再び臨戦状態のマリーが聞くと、ハンナがこれに応えた。


「さきほど戦っていたMDには誰も乗っていませんでした。おそらく、遠くから魔力を使って操作していたものと思われるのです」

「な、なによその卑怯な方法……! 自身は戦わずに高見の見物ってこと?」

「まあまあ、お気持ちはわかりますが、同じ魔族である私たちに任せてください」


「でも!」とマリーは不服のようだった。とはいえ、問題は襲撃してきた彼女たちがどこに居るのかということだが……。

 レイたちが「俺も」「私も」と追撃に加わろうと話す中、エレナが丸めた紙を持ってグリムに近づき、それをサッと渡した。


(なにこの紙……?)

 訝しげにもそれを少し広げて覗くと、村とその近くの地図のようだ。そして、村にほど近い林に赤い丸が点いている。


(もしかして!)

 察して顔を上げてエレナの方を見やると、彼女はウィンクをしながらサムズアップをしていた。

 それに対して笑顔を返すと、グリムは「場所が分かったから行ってくる」とバッサリ言って飛び立ち、ハンナも一礼して後を追いかける。


「お、おい、行っちまったぞ……」


 レイたちはそれを見て唖然としていた。


 グリムは地図を見ながらハンナとともに空を飛んでいた。


「グリム様、その地図はどうです?」

「うん、エレナは気づいていたようね……あの感知能力は流石よ」


 地図の赤丸の付いた場所に着き、草木をかき分ける。そこにはたしかにあった。

 ブラックホールのような黒い異空間の門。向こうは狭間の世界が広がっている……。


「まさか、またこれを見るなんてね」

「思い出しますね。あのデスマーチの日々を」

「余計なこと言わなくていいわ」


 しかし、ふと気になった。魔界からこの世界に来るためにはこのゲートが必要不可欠だ。にも拘らず、MDの持ち主である三人はおろか、警備も何もないぞ。


「もしかしてアイツら、一目散に逃げたってこと?」

「おそらくはそういうことでしょう。近くに地雷とかの罠もありませんし……MD三機でラクに占領できると高を括っていたとかだと思いますね」

「はぁ、思慮も無ければプライドもないのね。三人とも貴族のくせに」


 MDの三人は、親の七光りで調査隊に選ばれただけの中身のない魔族だったということだろう。

 ともかくとして、このゲートをどうするか……。


「どうします? 魔界にカチコミますか?」

「バーカ、それは自殺行為よ。おそらくだけど、この件であたしは貴族共に目を付けられてまた襲われるわ」

「では、如何様に?」

「簡単よ」


 グリムはそう言い放つと距離を取り、赤黒い球体を掌に出現させて蹴り込んだ!


「【ヘルファイア】ッ!」


 彼女の十八番、ヘルファイアがゲートへと吸い込まれ、内部で轟音と共に崩壊を始めた!

 それは膨張して外にも広がり、その爆炎と煙が晴れるころには跡形もなくゲートは消滅していた。


「はぁ、結局ゴリ押しですか」

「なによ、これで万事解決でしょ?」


 ハンナはため息をついていたが、ゲートは消滅した!

 結果オーライというわけで、グリムたちは村へと戻っていった。


 ***


 宴が終わってさらに暇になったグリムは、こともあって家のリビングでくつろいでいた。

 昼寝でもしようかと考えていると、テーブルで執筆作業をしていたエールが話しかけてきた。


「ねえ、なんであの時グリムは私たちの味方になってくれたの?」

「ん? 簡単な話よ。アイツらは最初からあたしと取引するつもりなんてなかったのよ」

「どういうこと?」

「利用したかっただけ。人間界を制圧して用が無くなったら魔界に連れて行って拘束。そこからでっち上げとかいろいろ罪を着せて処刑するつもりだったのよ。…暗殺の可能性もあったけど」


 再び裏切る気満々だったということだ…にしても嫌に具体的だな。


「なんでそこまで分かったの?」

「そうね、いくらか想像も絡んでるけど、一つは「魔王は一度下した命令を撤回しない」ってことね。魔王が処刑と言ったら処刑。流刑と言ったら流刑。だから、追放されたあたしはどうせ犯罪者のままってことよ」


 流刑にされた罪人が戻ってきたところで歓迎されるはずもない。


「でも、グリムってでっち上げの冤罪で追放されたんだよね?」

「もちろんそれも例外じゃない。それに、今回で貴族に喧嘩を売ったんだから尚更よ」


 グリムにはもう魔界に戻る気は無くなっていた。むしろ、この世界のことが気に入ってもいた。

 そして、あることを思い出した。


「エール、あんたのソレは完成したの?」

「え? あ、えっとね……まだだけど、納得いかなくてね。一からやり直してるんだ」

「なに? 全部完成させてから作り直しなさいよ!」


「ごもっとも……」とエールは返すほかなかった。

 そこでグリムには名案が思い浮かんだ。


「そうだ、だったらあんた自身が魔法少女になっちゃいなさいよ!」

「え、ええぇ!!?」

「あんたが魔法少女になれないっていうのはもう知ってるけど、それでも諦めちゃいないんでしょ? 実際になっちゃえば執筆も捗るし、憧れの魔法少女にもなれちゃうし一石二鳥ってこと!」

「そ、そうだけど、そんなことできるの!?」

「やってみなきゃわからないわ。ほら! 魔力を扱えるように心機一転よ!」


 グリムは修行をつけるためにエールを強引に連れて外へと向かって行く。


「グリム様、本当に此処に来て嬉しそうですね」


 ハンナはその様子を見てほほ笑んでいた。

 人間界の平和は、魔界の悪魔が人間界の正義へと変わったことで維持されたのだった……。


 —―第一部—― お し ま い ! !


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