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7.あらそうこと




「そうか、ソナタは力を求めるか! それはいい事だ!!」


 ダリスの背を叩き豪快に笑うのは私の兄である力を司る神。人間達には武神と呼ばれて慕われている。


「外界は戦の女神が人間を唆しては信仰を募っていますもの。それさえも余興と眺めている神々と違い、人間は武を身に付ける事を怠ってはなりませんわ」


 薄い黄色に淡い黄緑の瞳。長い髪を左右にお下げにしている人間。彼女はウェンディと言って兄が神の使いとして側に置いている人物だ。


 神の使いは神に力を与えられた者の事で人間とはまた違う別の次元の生き物で老いを止める事もできる。以前会った際と変わらない姿であるから、おそらく今の姿が武術をする上で一番良い状態なのだと思う。


「神……という存在を守りたいなどと、自惚れと思うでしょうが、リザと共にいる為に必要な努力は惜しみたくないのです」


 私たちの暮らす森も、私も、故郷も守りたい。ダリスの欲張りな思いは、人の思考が読める私にはダダ漏れ。


 先日、人の集落から戻ってからダリスはずっとこんな調子。大規模な戦で住む場所を失った者、生きる事に精一杯で余裕のない人々と出会い、いずれ戦火がこの地にも迫るのではないかと時折深刻な顔をしては「守りたい、守らなければならない」と心で唱えているのだ。


「良い心掛けだ若者よ!! 特別に私がソナタを鍛えてやろう!! 私が側に居ない時もソナタが我が妹を守るのだ!!」


 私は……ダリスに強くなって欲しいとは思わない。力を求めて一生懸命になったらいずれ優しい彼が居なくなってしまうのではないかと危惧しているのだ。


 それからダリスは武神に厳しく剣術を習い、一年もしない内に兄の認める強さを手に入れた。魔術も継続して訓練して多くの魔術式を作り出し、どんな人間より強くなったと思う。


“守るため”


 私はそんな事求めていなかったのだけれど。


 その力を使って戦を終わらせようと彼は立ち上がり、人より優れた彼を認める人々を主導して長い年月をかけ平和を勝ち取った。


 そして、戦の後に生まれた安寧の地はアドレンス王国と名付けられる。


 多くの人間に慕われるダリス。

 王として人の上に立つダリス。


 ずっと近くにあった彼が、何処か遠くに行ってしまったように感じたーーーー。

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