3.生き物を作る
変わらない日々を過ごすある日、蛇達が私に言いました。
「女神様、私は自分達と似た生き物を造ってほしいの」
「似た生き物とは?」
変わらない日々に変化が起こる気がして蛇達に尋ねると、どうやら蛇達も変化に飢えていたようで……。
「植物は実体があって、育つと形を変えるよね」
「だったら、僕らと同じ形の生き物がいても良いと思うの」
「実体があったらどんな風に暮らすのか眺めるんだ」
「ソレは……楽しいのかしら」
蛇達の考える娯楽が娯楽になり得るのか疑問はもったものの、言われるままに蛇の形に土を捏ね、命を吹き込んでゆく。
たくさん。とても、たくさん。
造られた蛇は高い知能や寿命は持たないものの、交わり子をなし、種を保存すべく営む。
時を重ねるごとに少しずつ独自の進化を遂げ、幾つもの種類の蛇が生まれくるのだから不思議。
他の神々も蛇を真似て己の統べる精霊に似せた生き物を次々と作り出していった。
トルニテアに存在する生き物は全てそうして作られた存在。トルニテアが生き物の楽園になるのにはそう時間はかならなかった。
蛇に始まり、犬猫兎、鳥や魚。
強いものもいれば、弱いものもいる。弱いなりに知恵を持って生き延びるものもいれば、弱いままに子を増やすものもいた。
どこか退屈だった日々は、賑やかに。
蛇の精霊たちは、生きた蛇に乗り移って生活してみたり、観察して意見を交わしたり楽しそうにしている。
しばらくは私もそうしていたけれど、やはり何年も経つと退屈に思うのは仕方のない事。
「物足りないわ……」
瞳を閉じて、深く息を吐き出した。