2.精霊と暮らす
精霊を統べるためトルニテアの大地に降りた私の日々は中々に退屈なものでした。
始まりの神が創ったトルニテアには精霊という意思を持った存在が溢れていて、その形は様々。
ただ、植物のように実体は持つものはおらず、透けた体に大地の力であったり水の力であったり……様々な力を秘めた存在。
私が統べる蛇達も形や能力、性格も様々だけど、皆、私を慕ってくれるし、蛇同士争たまに小さな喧嘩はあるけれど基本的に愉快にお喋りをしているのが常。
毎日、空の様子を眺めては今日は水の神がご機嫌だとか、風の神がソワソワしているだとか、取り留めもない事を蛇達とお話しする。
ただ、同じ事の繰り返し。
彼らと協力して心地よい時間を過ごせるよう大地に緑を増やし、毎日、大地に魔力をそそいだりしているのに……使命感を上回る虚無感。
すぐ近くに自分を慕ってくれる蛇達がいるのに何故か孤独感に苛まれるの。
時折、私の様子を見に来てくれる力の神と、私よりも幼い子が生まれた際に神々の暮らす場所で行われる宴が小さな息抜き。
何年、何十年、何百年。
老いることはなく、生まれた時のままの長い黒髪と赤い瞳。
体に宿る、始まりの神の力は使い所もない。
ただ、森を大地を潤すだけ。
ただ、蛇達と話すだけ。
ただ、変わる事のない日々。
それが終わる日が来るとは、この頃の私は全く思いもしませんでした。