1.生まれる
私は、ある時、突然にその場に存在した。
その事に関しておかしいと思うこともなく、私という存在が造られた意味も初めから理解できた……。
私は始まりの神と愛の女神に造られた16番目の子供。その姿は生まれて間もないけれど両親とさほど変りない大きさ。
生まれたままの姿に白い布を被せられた私の頭を撫でるのは母上である愛の女神。その姿を見て美しいと思ったのが私の抱いた初めての感情。
「貴女は特別、私達に似ているわ」
「あぁ。お前に似てとても美しい」
にこやかに笑い合う二つの柱はキラキラと光って見えて、とても暖かく、永くこの場に留まりたいと思うほどに心地がよかった。
「さぁ、行きましょう」
「宴の準備は出来ている」
夜に灯る明かりは漂うようにしてあり、ひらけた場所に色とりどりの果実の並んだテーブル。そこには先に席について私を待つ兄姉たちがいて興味ありげな視線がいくつも向けられる。
「さぁ新たな子の誕生を祝おう」
席につくと、始まりの神が宴の開始を告げた。
「父に似た黒い髪」
「母と同じ赤い瞳」
「ようこそトルニテアへ」
トルニテアは始まりの神が創ったモノ全て。大地も海も空も風も……そして私達も。
差し出された果実を口に含むととても甘くて自然と顔がほころぶ。
「俺は大地を司る者」
「「私達は水を」」
「私は火を」
「僕は緑を」
「風と……」
「光だよ」
先に生まれた兄や姉達が口々に己の役割を口にする。
「君は??」
「私は……蛇の精霊を統べる者」
彼らのように何か特別に突出した能力はない。むしろ、なんでもできる。これからどのようになるかは私の自由らしい。
「愛らしい妹よ。何かあれば頼るといい」
隣にいた力を司る神が頭を優しく撫でた。大きく強く逞しい。なのにとても優しい。
「馬鹿力のお前が撫でたら、この子が怪我をする!!」
「誓って怪我などさせるものか!!」
神々はとても賑やかで、私はクスリと小さく笑った。
「其方が触れねば怪我はしない」
「そうね」
「違いない」
「えぇい。うるさい。いいか、何があろうと私はお前の味方であるからな!!」
「誰とも敵対する事などないだろうに……」
賑やかで楽しい宴は太陽が登るまで続いた。