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動物好きの侯爵令嬢、結婚相手を探しに行く  作者: 霞合 りの
第七章 良い出会いとはすなわち動物との出会いである
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7-3.良い提案

私は思わずランディをうっとり見つめた。


「ランディ……」

「え。何?」


一瞬顔を赤らめたランディに、私は思わず抱きついた。


「素晴らしいわ、その考え! 採用していい? みんなに聞いてみなきゃ。ね、カミーユ! あ、聞いて、もう長くは話さないから」


私は話しながらすぐにランディから離れ、カミーユの手を引っ張ると、カミーユは目をつぶって叫んだ。


「私は反対ですよ! 試しに家に蛇用の温室を作るなんて! ペットショップにだって」

「そうなのよ。やめたの。ごめんね、さっきははしゃいでしまって」

「……そうなんですか?」


急に気が抜けたように、カミーユが肩を落として私を見た。そんなに嫌だったのに話を聞かせてしまって、本当に申し訳ない。


「ランディが、蛇用の受注窓口を作ればいいって提案してくれたの。そこに申し込みがあったら、希望内容に沿った蛇を探して、世話の方法は、専門家に指導してもらうようにして……定期的にお宅訪問やチェックも手伝ってもらえるように、話を通す必要があるわね。でも、同じ蛇好きとして、大切に蛇を飼ってもらいたいと、蛇の可愛らしさを知ってもらいたいと思っているはず! きっと、共感してくれる方もいらっしゃるわ。そういうわけで、まずは協力施設探しね。カミーユも、それでいい?」


カミーユの瞳から涙があふれた。


「もちろん! もちろんでございますわ! 私、本当に家に蛇が来たらどうしようかと……辞職願を出そうかと……あぁ、ランディ様、どうもありがとうございます!」


「カミーユったら大袈裟ね……」

「本気ですもの。生けとし生けるものとはいえ、苦手なものは苦手なんでございますよ! きっとペットショップだって同じですわ」

「そこは別室にするつもりで……」

「だからと言って、お嬢様……本当に……ランディ様には感謝の念が絶えませんわ……」


うっ、うっ、とカミーユはハンカチで目頭を押さえる。


「アデリン」

「何ですか?」

「君、カミーユに苦労させてるんだなぁ……」


ランディの目が、若干私を残念がっているように見える。


「そ……そんなことはないわ。少しだけよ、少しだけ。ね?」

「……ええ、少しだけですわ、お嬢様。突然、旦那様探しに王都に来るとおっしゃった時だって、気にしていたのはウサギのことだった時には、さすがに力が抜けましたけれど」

「あら。言ったわね」


ランディが私を見て唖然とした。


「アデリン、君は一生を共にする旦那様より、手を離れてしまう売り物のペットの方が大切だと?」

「ペットへの愛は一生ですわよ! 癒しなのですよ!」

「伴侶だって癒しになるよね?」

「求めておりませんわ。必要なのは自由とお金です」


私が拳を握ると、ランディは顔を引きつらせた。


「えげつないほど現実的」

「そうさせたのはお兄様です」

「ダリウスは君のことが心配なんだよ」

「それはわかっておりますわ。でも、……財産差し押さえなんて、大人気ないではありませんか。私は自由に本を読んで動物を愛でたいのです……!」


私がさらに強く拳を握っていると、ランディはため息をついた。


「僕は正直、君をどう捉えていいのかわからないよ」

「何がですの?」

「麗しい変人令嬢なのか、変わった性格の、麗しの令嬢なのか」


私は少し考えて、ランディを軽く睨んだ。


「何?」

「それ、同じ意味ではありませんか?」

「違うよ。全然違う。僕はどっちでも君が君なら構わないけどね。どっちがいい?」

「それは……もちろん、動物好きの優しい令嬢で」

「動物狂いにしておくよ」


ランディがにこりと微笑んだ。夕暮れを背景に浮かび上がり、それはそれは、麗しの貴族令息だった。私を見てうっすらと微笑む姿はあまりに美しく、ずっと見ていたいと思うほど。


「素敵……」


ずっとこの笑顔が私に向けられていたらいいのに。そう、私だけに。


「君は変わってるな。動物狂いなんて称号が気にいるなんて」

「え?」


しまった。口に出してた。


私はランディに見とれてたことに気がついた。ランディの方はそれに気がつかず、ふっと笑って外を見た。


「それも君らしいか」


馬車は私の家へ向かってゆっくりと進んでいった。




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