6-2.謝罪と話し合い
パーカーが私を見、ランディが促すように私に視線を向けてきた。
「あ……、えぇ、ストローブ侯爵領地の首都の外れで、ペットショップを営んでおります。王都からも買いに来てくださる方が多く、遊ばせるためにわざわざ私どもの領地に来ていただくのが申し訳なく思っておりました。そこで、近くにペット達の遊び場がどこかに作れないか、考えていたところ、どうせなら、こちらに支店を出そうかと……思いまして……」
「なるほど……そういうことでございましたか」
パーカーがウンウンと頷いた。
「いや、最近、ペットを遊ばせるために、ちょっと広い庭とか、ペットのための部屋とか、そういうお問い合わせを受けることが多くてですね、気にはなっていたんです。ペットショップから提案をいただいたとか、それが、あなたのお店ということですか?」
「ええ、はい、そうだと思います」
「でしたら、王都の土地をお見せするのに値する方でしたね。候補地を検討いたしましょう。こちらで資料を……」
「謝罪は?」
不意にランディが口を挟み、パーカーはスッと顔色を悪くした。
「はっ」
「君は先ほど、彼女の意図を知らないのに、下に見るような発言をして、彼女を馬鹿にしたね? それについての謝罪は?」
「あ、はい……申し訳ありませんでした! 貴族の女性に対する先入観から、無茶なことをしたがってていると……王都の土地を荒らされたくないと思ってしまいまして……完全に私の主観で、あなたの尊厳を傷つけるようなことをしてしまいました。申し訳ありません」
「い、いえいえ、あの、顔をあげてください。慣れてますから、そういうの。領地で始める時も、兄から私に交代した途端、業者を仕切るのが大変でした」
「アデリン。たとえそうだとしても、君はそういうことに慣れてはいけない。最低限の尊重はされるべきだ。女性だからといって、優秀な人物を逃してはならない、そうだろう、パーカー?」
「はい、おっしゃる通りで……」
パーカーは冷や汗をかきながら私とランディを交互に見た。
「ランディ様が初めて、お仕事としてお美しい令嬢をお連れになって、しかもごく親しいご様子で、あんな目を向けているのを見ては……失礼ですが、お優しいランディ様にたかろうとなさっているんだと」
目とは? 私は首をかしげながら、パーカーを安心させようと笑った。
「ランディ様はどんなに女性に傾倒しても、おそらく無意味な出費はなさらないと思いますわ。見た目より頭の良い方ですし、あの堅物の私の兄と、友人として親しくできるんですもの、きっと冷静に判断なさるでしょう。もっとランディ様を信用なさってください」
おそらくは多分、騙されやすそうで女性に甘い私の兄を、面白がって見ているんだろうと思うのだけど。
ちらりとランディを見ると、嬉しそうに目を細めていた。
「そうだ。彼女は私の大事な友人の妹御だ。大切に思ってはいるけれど、丸め込まれるほど、惚けてはいないつもりさ」
ランディは言うと、パーカーに笑顔を向けた。
「僕がそんなに甘い人間だと思われたのは心外だな」
「え、でもあの、あんな顔をなさってるのは初めてで、その、どれだけ惚れ込」
「で、候補の土地はあるのかな? どのくらいある? 今から見に行ける?」
謎の威圧感でパーカーを圧しながら、ランディは私に振り向いた。
「幾つかあるようだよ。よかったね、アデリン」
ええ。よかったけど。
なんでパーカーはそんなに怯えてるのかしら?