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動物好きの侯爵令嬢、結婚相手を探しに行く  作者: 霞合 りの
第六章 馬車に揺られて話すことといったらロマンチックのかけらもない
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6-1.不動産での出来事

ランディが紹介してくれた不動産屋は、それなりに老舗の、しっかりしたところだった。常連や紹介でないと取引ができないと、後から聞いた。


「これはこれはランディ様! いつもありがとうございます」


手もみする人なんて、本の中以外で初めて見たわ。

私が目を丸くしていると、パーカーは私ににっこりと微笑んだ。


「素敵な方をお連れして、隅に置けませんな。ご婦人方には退屈でしょうが、お付き合いくださいませ。ランディ様、今回はどういったご用件で?」


すると、ランディは私を振り返り、にこりと微笑んだ。


怖くない、怖くない。私、まるで子供扱いだわ。仕方ないけど。


「アデリン嬢。こちらは、このアラス不動産のパーカー・アラス社長。アラス殿、こちらは、アデリン・ヴォーコルベイユ嬢、侯爵令嬢だよ」

「あ、あの、……よろしくお願いいたしますわ」

「はい、よろしくお願いいたします」


挨拶をし合ったところで、ランディがパーカーに向き直った。


「今日は、彼女が土地を見たいと言っていたので、連れて来たんだ」

「アデリン様が……ですか……?」


パーカーが目を丸くし、吹き出した。


「いやいや。これは失礼。ランディ様、ご冗談を。何のためにお探しになるのです?」

「事業を始めるためだそうだ」

「ご婦人が! 王都で商売を! いやぁ、おやめになった方がよろしいですよ? 借金も抱えますし、第一、そんなお金があなたにおありなんですか? もちろん、お金のかかった素敵な衣装で、侯爵令嬢というからには、良いご身分なのでしょうけれど……」


パーカーが私を値踏みするような目で見た。いやらしい視線ではないけれど、上から見るような、軽んじる視線だ。


大方、『金だけあって暇だから、遊びで事業しようかな☆』的な発想で、私が気まぐれを起こしたと思っているのだろう。


意図はどうであれ、この視線は、いろんな場面で出会ったことのある視線だ、よくわかる。特にあの優秀な兄の妹がイモ女であればなおさらだった。今はドレスも新調して、見た目だけはそれらしいけど、中身は変わっていない。イモのままだ。


でもこれだけは言わせてもらおう。これでもペットショップを始める時は、不動産関係の本も十冊以上読んだし、動物についての本も三十冊以上読んだ。虐待がないように、幸せに過ごせるように、どう指導したらいいのか、アフターケアについても、たくさん勉強した。


母が亡くなってから、私の癒しは飼っていたペット達だった。その幸せをみんなに感じてもらって、少しでも誰かのためになるように、私だって考えてきた。決して気まぐれや遊びではない。


私が反論をしようとしたその時、ランディがため息混じりに言った。


「パーカー、君がそんなに愚かだとはな。客の要望を一方的に決めつけるのは良くないと思うが?」


ランディの鋭い声に、パーカーが動揺を見せた。


「で、ですが」

「彼女は資産家だし、私の財産を狙うほど執着しておりませんよ。何より、彼女はすでに仕事で成功している」


財産? 狙う? 私は驚いてランディを見た。


ああ、もしかして、パーカーは、私が自分の気まぐれにランディを付き合わせようとしてると思ったってこと? それなら、値踏みするのもわかる。でもランディがそんな風に、頭の悪い溺愛をするようには見えないけど……


「何を……?」

「ペットショップさ」

「……ペットショップ?」




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