表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/65

5-1.まずはお友達から?

翌日、またカミーユにお願いして、本屋へ行ってみることにした。


もしかしたらいるかも。私の未来を買ってくれる……違った、自分の未来を売ってくれる人が。


「いたわ!」


私がカミーユをバンバンと叩くと、カミーユは呆れた顔で腕をさすった。


「本当に彼に提案するおつもりですか?」

「もちろん」

「どんな方かも知らずに?」

「それをこれから知るんじゃない。ここで合わなそうだったらやめておくけど、良い人そうだったら、提案しようと思ってるわ」

「あなたを利用しないとも限りませんよ。人はお金が絡むと変わりますから」

「わかってるつもりだけど……何事も、試してみなきゃ始まらないわ。ペットショップだって、最初は大変だったでしょう。覚えてる? カミーユ、私たちはあの日……」

「この調子ですと、思い出話を三時間して、このままジャン様にお声がけもできないと思いますが、よろしいのですか? ええ、私は問題ありませんが」

「悪かったわ」


私はすぐに話をやめると、少し咳払いをして喉を整えた。


「……よし」


そしてちょっと可愛らしさを演出し、ジャンに向かって歩いて行った。なお、服装は、私の手持ちの服を、ジジに今風に仕立て直してもらった、それなりの服だ。新しすぎず古すぎない、ジャンだってちょっとは私にプラスの印象を持つだろう。


「……ジャン! またお会いできましたわね!」


私が駆け寄ると、ジャンは嬉しそうな笑顔になった。


「会えるのはもっと先かと思っていましたよ、アデリンさん。お会いできて嬉しいです」

「私もよ、ジャン。ちょっとお話しない?」

「ええ、いいですね」


そうして私たちは店の外に出て、思った以上に弾む会話を楽しんだのだった。


「そういえば、お一人とおっしゃっていたけれど……お友達や恋人はいらっしゃるでしょう?」


会話が途切れた瞬間、私はなるべく自然に質問を投げた。思惑がバレませんように。すると、ジャンは慌ただしく身だしなみを整えた。


「え?! 恋人など……まぁ、友達はおりますけど、結婚など、まだ考えられません。好きな方もいませんしね」

「ジャンは好きな方と結婚するのが理想ですか?」


「ええ、できれば。私も継ぐ家などがあれば別なのでしょうが、天涯孤独となれば、好きなように生きたくなるものです。それに、作家志望ですからね。ロマンティックな感情に憧れています。恋をして、愛し合い、互いを尊重し合い、互いのために生きる……そんな生活を夢見てはいますよ」


天涯孤独の理想家とは。


下手にカネカネ言うと引かれるだろうから、ここは慎重にいかないとならないわ。


私がさらなる情報の得方を考えていると、ジャンは恥ずかしそうに頭を下げた。


「あ、すみません! 昔から、夢ばかり語ると言われていて……」

「いいえ、素敵ですわ。私もあなたのような夢を、みたいものです」


私が甘えたように言うと、ジャンは照れ臭そうに頭をかいた。


本当にジャンに甘えられたらいいのかもしれないわ。

今はまだ私には打算しかないけれど、私だって夢を見てる。


ジャンなら……もしかして……


「アデリンさん、それは嬉しいですね。お互い、そのような相手が見つかるといいのですが」


あなたのお相手に、私を数えてはくれないの?


そう尋ねようとしたが、できなかった。


「やぁ、アデリン。アデリンじゃないか?」


そうやって、前方からやってきたのは、なんとキラキラの笑顔を振りまく、ランディだったからだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ