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FIRE PROOF~硝煙の対価~   作者: 柴光
6/7

005 砂漠

 


 なんだコイツは?俺の名前を知っているようだが声に聞き覚えはない。

 通信機のチャンネルが合わないので俺も拡声にセットして語りかけた。


「お前は誰だ?」

『は!忘れたのか、ゼスト!初めて会った時もその機体だったな。所々改修されているようだが、俺は忘れはせんぞ!』

「答えになってねぇ、な!」


 そいつのライフルブレードを押し返すも、再び振るって鍔ぜり合いが続く。


『半年前、グルーム防衛戦でテメェに部隊を全滅させられた元分隊長だ!徹底的に調べてようやく辿り着いた、ゼストと言う名前にな!!』


 次に俺の方が弾き飛ばされてしまい、追い討ちをかけるようにもう一度振るってきた。


『名前はシンギ、シンギ・クロスだ。覚えておけゼスト!』

「グルームの丘での戦は覚えているが敵軍は全滅させたはずだが?」

『運悪く俺だけ生き残ったんだよ!』

「強運の持ち主だな、クロスよ」

『ッ!バカにしくさって!』


 俺とクロスは剣を交えながら会話と鍔ぜり合いを繰り返す。


『テメェのせいで義腕になって扱いづらくてしゃーなねぇんだよ。部下の命と共に払ってもらうぞ』

「それが戦争と言うものだろ!命が軽く奪われる、手前の命も然り」


 振りかざしたクロスのライフルブレードを、右脚を軸に回避して左手で引き抜いたもう1本のヒートソードで胸元目掛けて横払いをすると、奴は機体の姿勢を起こして剣先だけが胸部を切り裂く。

 ラジエーターをやられたクロスは、ライフルを撃ちながら後方へ飛び捨て台詞を吐いて去っていった。


『その命は俺が奪う!俺はいつでも狙っているぞ!』

「覚えといてやるよ」

『変なのに好かれたみたいだね』

「うっせ。変わり者だがあの機体、サージェントとは雲泥の差だぞ」

『コンペで出された機体でしょう。新型開発は西側の課題でしたから』

『どこから来たかわかんないけど、飛行距離も半端じゃなさそうだよ』

「ああ。ディシディアがどこまで通用するか…」

『待たせたな、戻ったぜ』

「おお、お疲れさん。では帰艦するか」

『『了解』』


 ロイ達の部隊はこの基地に残って新たな拠点作りの先発隊とされ、文句を言いながら片付けを行っていた。

 俺の隊は次のミッションに向けて艦を飛ばしているが、その場所がゴビ砂漠ときている。

 自由度が高い俺達の部隊は、この命令を反故にすることが出来るのだが、人命救助がメインの作戦なので優先度が高かった。



2日後14:08ゴビ砂漠内CCA耐久試験場

『アッチィなぁ、今日何度だよー!?』

『おいおい、ハッチ閉めとかねーと干からびちまうぜ?』

『エアコンぶっ壊れてんだよこのポンコツ!いつまでもタンク擬きなんて使ってるから現場の者が苦労すんだよ』

「まぁ、そういってやるな。因みに俺のはエアコンから砂が舞い込むぜ」

『ハハハハー!軍曹はサージェントなのにコイツのとどっこいとは』

『笑い事じゃねーよ!お前だけ快適な』

『「!?敵襲!!」』



「ガーディア、大破を確認。残りのサージェント、ガーディア動き出しました」

『了解だ。アーシェ、回り込んでくれ。勘づかれるなよ』

『了解』



「こちらノイマ隊!応援を求む」

『ノイマ隊、承知した。敵の数を報告しろ』

「敵数不明、位置、距離共に不明!」

『…第1、2分隊を回している。以後マークウェイ少尉の指揮に入れ』

「了解。クソ!一体何処のどいつだ!?」

『軍曹ー!』

「どうした?おい!応答しろ!クッ、反応が消えた…」

『待たせたな軍曹。これより俺の指揮下に入ってもらう』

「了解であります。マークウェイ少尉」

「敵はスナイパーだが、此方で捕捉出来ない距離にいる。動いてれば当たらん。左右に展開後、止まらずに近付く」

『『『了解!』』』



 サージェント4、ガーディア3の敵機が此方に近付いてきている。

 サージェントはスラスターによるホバー走行で砂漠を駆け抜けてスナイパー対策のセオリー通りに動いているが、ガーディアは履帯なので動きが単純でありその内のガーディア一機をレイヴンが撃ち抜いた。

 そろそろアーシェが着いた頃だろうから俺も囮を決行しよう。


「レイヴン、足の遅いガーディアは任せた。増援も自己判断で任すぞ」

『了解しました。邪魔にならない程度に狙撃します』

「俺も邪魔にならんように動き回るから頼むぞ」

『ハッ!』


14:12

 試験場内部で軟禁されている重要人物と作業員の解放が今回のミッションなので、俺は正面で派手に暴れてアーシェの機体と共に3名の救助隊員を裏へと回した。


『隊長、アーシェ機配置に着きました』

「了解だ。では暴れるとしよう」


 愛機を飛翔させて敵サージェント部隊の真上に来ると、敵機のライフル弾をかわしながら2丁のプラズマガンで頭部カメラを破壊しつつ降下して守りの薄い奴からコクピットを狙って連射していく。

 残る1機はライオットシールドにバズーカ持ち、俺の射撃を防ぎながらバズーカで狙って俺の脇スレスレを弾頭が通り過ぎる。


「あっぶねぇなコイツ」


「チッ!あれを避けるとは、やる!」


「守備は良いがそのスピードじゃあ」


「それはどうかな」



 サージェントの裏に回り込もうとすると、ソイツも旋回してまたしても正面を向き合う事になってしまった。

 乗り手の腕ではどうにもならない機動性の差が少ない…どうやらカスタマイズされているらしく、他のサージェントよりも速い。

 向き合った瞬間、バズーカの砲身を向けて1発の弾頭が放たれたのを瞬時にロックしてプラズマ弾を弾頭にぶつけて爆発させると、誘爆する危険性があるバズーカを放棄して距離を取った。

 飛び道具を失ったソイツは、腰に装着しているロングソードを抜いて近接戦闘を仕掛け、俺はシールドで振るわれたロングソードを防ぐとレイヴンに無線を送り一撃がソイツのバックパックを貫き体勢を崩した所にプラズマガンを突き付けて1発の発砲と共に沈黙した。


「助かったぞレイヴン」

『お役に立てて何よりです』

「少し手間取ったがこのまま作戦を続行する。俺が施設のCCAを引き付けたと思ったらアーシェに合図を送れ」

『了解です』


 俺が施設に近付くと、既に敵CCAが展開しているようだ。

 ガーディア6機、サージェント3機の反応だが、肉眼(カメラ)で確認すると防衛型のサージェントが1機混じっている。


「めんどくせぇ」


 そう呟いてプラズマガンをしまって2本のヒートソードを構えた。



「敵CCA来るぞ!マニュアス隊は滑空砲を目測で浴びせろ。ポットの距離に入ったら一斉射だ。ナバー隊は直撃コースを取れ」

『あの、俺達は?』

「死にたくなかったら俺の後ろにいろ。アイツはお前達がどうこう出来る相手じゃない」



「滑空砲か、鬱陶しいな。レイヴン、他のCCAはいるか?」

『確認出来るのは目前の9機のみです』

「なら合図を送ってくれ。その後、敵ガーディアの狙撃を頼む」

『了解です』



「なんなんだあの機動性は!?」

『マニュアス隊長、射撃指揮機働きません!』

『こちらも同様です!』

「速すぎるんだ…手動に切り替えて撃てば良いだろ!ん?光っダッ!」

「狙撃兵か!発砲やめ!ガーディアは後退しろ」

『りょう…』

『なんでこっちで捕捉出来ないんだ!?どれほガァーッ!』

「早く下がるんだ!」

『大尉!脚が、脚が破壊されて動ガッ』



「熱処理が追い付いていない…弾が逸れるなんてこの砂漠、暑すぎだ」

『珍しく外したかレイヴン』

「すみません。恥ずかしながら」

『誰も気にしないから謝るんじゃない』

「はい。…マニュアルにて着弾点の修正を行います」

『牽制頼むぞ』


 3機のガーディアは撃ちながら後退して行くが、あの足じゃすぐに捕まえられる。

 更にブーストを掛けて速度を増してサージェント3機の放火をスルーし、ガーディアの1機に近付くとヒートソードを振るって胴体と履帯を切り離し、続く2機目も同様に切り落とした。

 3機目は胴体を旋回させて此方をロックすると、ミサイルポットと手にした2丁のライフルを掃射してくる。


「乱れ打つのも良いが派手なのは見た目だけだな」



「クソー!当たれぇー!!」

『落ち着け伍長!』

「こんな僻地に送られて、挙げ句たったの2機でカハッ…」

『伍長ー!!』



 最後のガーディアはレイヴンの狙撃によってコクピットを貫かれて施設にぶつかり停止した。





  [MAAS―fg4cⅡ サージェント2型 拠点防衛型重装備]

 全高:15m

 動力:Hバッテリー

 最大飛翔時間:5分

 カラー:ブラウン

 固定武装:トマホーク、右背部6連装ミサイルポット

 追加武装:スクトゥムガード、100㎜ライフル改


 装甲の厚みを増して更に電磁反応装甲(ローレンツリアクティブアーマー)を採用、スクトゥムガードという名の前方のみならず屈折しており左側も覆える程の巨大なシールドを専用装備し徹底的に防御力を上げた機体。

 電磁反応装甲は敵弾が装甲部に着弾する直前の瞬間をセンサーによって感知し、電気回路の動作によって防弾板を飛ばして無力化する追加装甲だが、それを作動させる大型のバッテリーも同時に積まなくてはならないので重量過多の問題があった。そこで機動性を犠牲にして重装甲タイプの防衛型にすることで問題を (無理矢理)解決した。

  武装面でもガーディアと同型のミサイルポットを標準装備し、ロングマガジン化と発射速度を向上したライフルを持つ為、機動性以外では通常のサージェントを凌駕する。

 




















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