001 猟兵
『』内の会話は無線通話です。
「なんでこんな所まで来なきゃなんねーのかねぇ」
「しょうがないだろ。シリアで残存勢力が集結してるってんだから」
「そりゃあ分かってんだが、この辺はまだ制圧下じゃないんだろ?ミサイルでも飛んできたらどーすんだよ」
「そんときは、あれだ、神様に祈るしかないな」
「おいおい、神頼みってシャ…ん?レーダーに熱源」
「なに?ミサイルか?」
「いや、これはっガ!!!」
『各機、熱源反応確認だ。二番艦どうした?』
「二番艦、高度が下がってるぞ!ザナック!アスレイ!応答しろ!」
「中尉!三番艦が!」
「なに!?どうした三番艦!」
『イ、猟機兵です…』
「なんだと!?」
「一番艦、爆発!大破です!」
「クソ!荷物(CCA)を捨てるぞ!地上部隊に連絡しろ!」
「それが先程から応答がないんです」
「…別動隊か。構わん、パイロットに降下準備をっ」
「輸送機3隻の沈黙を確認。任務完了」
少し前のこと。
敵軍がシリアの集結基地に進軍しているとの情報が入った俺達は、大将の命によって出撃した。
作戦としては、レイヴン・ギアード少佐による上空から接近する輸送機の狙撃、地上部隊は俺ことサキ・ゼストとアーシェ・レオンハート中佐の駆るディシディア2機で叩くという、単純明快な作戦だ。
「レイヴンはポーター (CCA積載状態でホバリング可能なプロペラ機)とともに出撃。敵航空部隊の狙撃を任す」
「了解です」
「アーシェは俺と地上部隊を殲滅しに行くぞ」
「りょーかい」
「良し、行くぞ。スクランブルだ」
「「サー!」」
17:34
『敵部隊を捕捉。データ送るね』
「ああ、サンキュー」
輸送艇5、陸戦艇1か。輸送艇の中にCCAが4機づつ搭載されているとすると計20機となる。
この程度の戦力でよく進行してきたものだと関心するが、先の大戦とその後の鎮圧を見るに、情けなどかける必要はない。
「徹底的にやらせてもらう。俺が先行する」
『りょーかい』
「熱源反応有り!数は2、急速に近づく!」
「先手を取られたか。CCAを発進させろ。それまで奴等の足を止めるぞ」
「ハッ!各部隊に通達、敵CCAの接近を確認、緊急発進せよ、繰り返す。緊急発進せよ」
「APCR装填、目標敵機械騎士、テェッ!!」
「アーシェ、来るぞ!避けろよ」
『分かってる』
「フルバースト!」
敵陸戦艇から放たれた撤甲弾は、俺達の後方で土煙を上げて地面に突き刺さった。
2射目が撃たれるも、同様に回避して此方の射程距離まで一気に近づく。
「当たったか!?」
「ダメです!カメラでは捉えきれません!」
「マニュアルでやれ!もうそこまで迫っ…なん」
「機械騎士を殺るなら機銃だろ」
俺は陸戦艇のブリッジ目掛けてヒートソードを突き刺して行動不能に陥らせると、それに続く輸送艇がぶつかって停止した。
その周囲には既に発進済みの敵CCA、サージェント2型が取り巻いている。
確認出来る限りだと、ライフル持ちが3機、槍持ちが6機。何機かはアーシェが撃破したようで、今もプラズマライフルの光りと実弾の発砲音が入り交じる。
「土足で踏み込んできたこと、覚悟しろよ」
「クソ!速すぎて当たらねー!」
『バカ野郎!目測バーストでも使っとけ!』
『接近戦に持ち込めばっグァァ!!』
「曹長!?」
『後ろだ!!』
「え?ガハッ!!」
「呆けているからだ」
『もう8機落としたよ』
「なんだと?なら後は俺がやる」
『冗談、私のディシディアはまだやる気よ』
「なら左舷は任せた」
『りょーかい』
愛機に右手にヒートソード、左手にプラズマガンを持って俺が得意とする近距離攻撃を繰り出している。
コイツ等が駆るサージェントなど改修されようがウスノロには違いない。此処には手慣れもおらず、アーシェと二人で次々と落としていった。
『隊長、隊長ー!!』
『やめろ、く、来るなー!』
「クッ!ここまでか」
「残るは1機」
「せめて片方だけでも!!うぉー!ガァッ!!」
「恨むならお前等の国を恨むんだな」
『任務完了。レイヴンも終わったみたいよ』
「ああ、そうみたいだな。これより帰投するぞ」
『報告しとくね』
「頼んだ」