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とりあえず水辺を上る。

「あー、コーヒーは子供には良くないっていうのは分かるけどのど乾いた~」


 リッカはカフェインが子供にもたらす影響と水分不足を訴えていたことを考慮して一口単位でシオンのコーヒー摂取量を規制した。そのうちそんなことを言っていられなくなるとは考えている。

 ジョーは何も考えずに全部飲んだ。結果リッカは飲めてない。脳筋死ねばいい。


「確かこの辺りは汽水域なんだよね。飲んだらしょっぱいのかな」


「しょっぱいぞ。飲むなよ。死ぬぞ。食塩は人体に必須だが取りすぎると乾く。この状況では最も避けるべきだ」


「俺はさっきの浜で水遊びしたかったんだが」


「アホか!」


 案の定リッカに後ろ頭を叩かれたジョー。リッカの力では脳にダメージを与える叩き方を計算しきってもダメージを与えられなかった。この男は控えめに言ってもゴリラを超えているのではないだろうか。


 リッカはこのゴリラの戦力をキープするための栄養量を考えて目眩がしている。三人はそのまま上流に歩いていく。


「どうなれば水が飲めるようになるかな?」


「飲むだけならもうほぼ淡水で飲めるはずだが、上流に行った方が安全性は高くなる。滝壺のような源流に近く流れが速く水量が多い場所の方が距離当たりの水の総循環量が大量なので寄生虫に中る可能性は当然低くなる」


「当然なんだ。算数で考えるのは苦手だなあ」


「理解されると逆に困る」


 リッカの存在意義がなくなることは有り得ないが、リッカは自分が役に立てることは少ないと考えている。身体能力はシオンとおいかけっこをしたら負けるレベルだ。多分一番初めにダウンするのは自分だと考えて免疫を強化する方法を考えている。

 一番手軽なのは笑うことだ。


「ここでゴリラを犠牲にしなければ私が死ぬ」


「突然何か言い出したよこの人ぉっ!!」


「リッカさんのために死んで! ジョー!」


「何この子俺に厳しい!!」


「い、いや、くくく、笑いのために犠牲になってもらおうと思っただけなんだが」


「何でいきなりお笑い要員にされてるの?!」


 実際免疫力を高めるために笑いは効率的だし、このやり取りでリッカは免疫力を高められたと確信している。実際にどれくらい強くなったか分かりはしないが。


「はあ、はあ、おっ、そろそろ良さそうなところにたどり着いたな」


「リッカお姉ちゃん笑いすぎて体力使ってどうするの?」


「計算外だった」


「犠牲になった俺のメンタルに謝ってください」


「ゴリラ語は理解できない。分かるかシオン」


「分かるわけないよ」


「この人たち俺にめっちゃ厳しい!」


 ジョーが乗りが悪かったらそろそろ殴り殺されてるな、と、リッカは思っている。この土地に法律もそれを守る戦力も存在しない。レイプされる可能性も考えていたのでジョーの心の強さに感心していたりするが口にはしない。そういうネタはジョーが危険になったときに使うべきだ。死なせたりしないが。


 リッカは誰か死ぬ可能性まで考えているが、絶対にこの三人で生き残る。そのために計算を繰り返している。リッカは石橋を叩き壊して鉄橋を作って強度検査までしてから渡るタイプだ。計算で行動するのは冷たいのではなく、心配しているだけだ。仲間に傷付いて欲しくない。自分の見た目や性格のせいで友達は多くないから。


 シオンは考えていた。まだ子供の自分はこの二人の足を確実に引っ張る。おそらくそれを避けるにはリッカの言うことを忠実に聞きつつリッカの過ちを正さなければならない。この手の人は誰も望んでないのに自己犠牲とか始めてしまう。それは避けなければ。


 ジョーは考えていた。自分はこの二人にとってある意味城塞だ。けして折れるわけにはいかないし、この二人に傷の一つも負わせてはならないと。

 ただそんなことを考えていると二人に知られるとどうなるかまでは考えが及んでいない。


「ふむ」


「リッカさん、ずっと川を見てどうしたの?」


「綺麗だろ?」


「そういうのは僕の役割じゃない?」


「冗談だ。魚影を見ていた。栄養を得るのに最も手っ取り早いのは魚を食うことだからな」


「……本当にリッカお姉さんは凄いよね」


「い、いや、お腹が空いただけさ」


「だからそういうの僕のセリフ!」


 何で相手を気遣う言葉を理系の人に言われてるんだろう。それは僕の仕事のはずだ。そうだよな、文系で地理的な知識でもリッカに勝ててない気がする子供の自分に与えられた役割はバランスメーカーなんだと思う。精神的支柱になるのが一番役割として大切だろう。


 シオンは考えた。必ずやリッカとジョーの心を軽くせねばならぬと。


 その時、ジョーは素手で小鳥を捕まえて絞めていた。おい。


「意外と捕まるものだな」


「普通は無理だよぉ!」


 そう言ったシオンにリッカは言う。


「いや、案外捕まるんだぞ。昔うちで飼ってた犬とか猫が雀を捕まえたことがあってな」


「普通は無理だよぉ!」


 犬の場合獲物とかをその場に固定する謎スキルを持ってるんだよな。だから猟師が猟犬を連れているんだ。ジョーはそれができるらしい。やっぱり人間じゃない。ゴリラでもない何かだ。


「これ食えるか?」


「肉は少ないので揚げて骨まで食いたいところだ。味は多分青臭いぞ」


「そこまで予測できるって凄くない?!」


「ふ、普通だ」


 照れるリッカの胸に突撃するシオン。お前は一回死んだ方が良い。


 野鳥は大きい方が調理しやすいんだよね。アホウドリは大型だし捕まえやすい上に、食料になるのでアホウドリと呼ばれているそうだ。英語だとアルバトロスな。ゴルフ用語は鳥由来なんだよ。イーグルとか。

 リッカは鷹も肉付き良さそうだな、とか考えている。






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