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再び因縁の洞窟で手がかり探し

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m


 ※※※


「はひゃあ~、いいお湯だった」この宿の大浴場から一人自分が泊まっている部屋に戻り、一息ついているケーラ。コーヒー牛乳でもあれば、腰に手を当ててグビグビ喜んで飲んでいそうなほど、リラックスしている様子。


「そしてアクーの魚料理最高ー! 美味しかった~! 満足じゃ~」ここは浜辺近くの宿という事もあって、夕食は魚料理がメイン。アクーでのケーラの目的の一つが達成されたからか、ご満悦の様子。


「でも、タケトとようやく旅に出たはいいけど、何か進展しない感じがするなー」


 ザザァという波音を聞きつつ、窓の外に見える夜の浜辺を一人眺めながら、小さくふう、とため息をつきたそがれるケーラ。思っていた以上にマシロという、すまほとやらで見せてもらった猫耳美少女への、健人の気持ちが強い。一緒にいればいるほど、それが分かってしまう。入り込む余地が中々見いだせない。まあそれでも、諦めるつもりは毛頭ないのだが。


「リリアムが邪魔だなあ。。今はあの子とボク、タケトとの距離感は変わらないんだよね。でも、何とかして先にボクがリードするんだ」


 そして一人思い直して、フンス、と握り拳を作って気合を入れるケーラであった。


 ご満悦だったり自分の恋路が不安だったり、コロコロ気持ちが変わりつつ、独り言を言いつつ寝支度をしていると、窓をコンコンと叩く音が聞こえた。


「ありゃ? こっちにも来たんだ」ケーラが意外そうに呟く。そして警戒する事もなく窓を開ける。そこには一匹のコウモリが逆さになって止まっていた。


「ケーラ様。ご指示通り、預かっていたサンプルを持っていきました」コウモリがケーラに何か報告をしている。


「で、どうだった?」


「とりあえず調べてみる、との事ですが、ケーラ様の仰った通り、あれは書物庫に隔離されている、禁忌の手法で造られているのは間違いないだろう、と言っておりました」


「……やっぱりそうか」暗い顔になるケーラ。


「ええ。思った以上にまずいかと」コウモリなので表情は分からないが、ケーラ同様、余り芳しくない、という感情は伝わってくる。


「あ、そうだ。もう一つの件は何か分かった?」


「何分、人族の中には、未だ魔族は少ないので、情報を集めるのが大変で御座います故、苦戦しております」申し訳無さそうに頭を下げるコウモリ。いや、逆さに止まっているので頭を上げる、と言うのが正解かも知れない。


「仕方ないね。何かわかったらまた教えてね」情報がなかったのが残念そうだが、それでもコウモリを労うケーラ。


「かしこまりました」そう言って、逆さのまま礼? のような、お辞儀のような仕草をして、コウモリは闇夜に飛び立っていった。


 ※※※


「ここだったかな?」健人が思い出しながら、鬱蒼と木々が茂る、海辺に近く湿気の多い洞窟の入り口辺りを見渡している。


「私は途中で気を失ってしまったけど、私の意識があった時を思い返してみると、この辺りで間違いないと思うわ」リリアムも同じ場所を見渡している。森が深くなっている上の方も注視しながら。


 今三人は、以前真白が魔族に襲われた洞窟の入口に来ている。この入り口付近で魔族と戦ったので、魔薬をばら撒いた犯人の手がかりを探しているのだ。


「ふむふむ、ここでマシロさんが襲われたのか」他の二人は二度目だが、ケーラは初めてだ。何があったのかは詳しく知らないケーラは、あてもなくキョロキョロしている。


「タケトさん。そう言えば魔族達の亡骸がないわね」リリアムが気づく。


「あれから相当日数経ってるから、この辺りの魔物とかに死体を食べられたりしたのかな?」にしても、服とか武器とかは残っていて良さそうだが。それも見当たらない。ゴブリンとかの魔物が持っていったのだろうか?


「とりあえず、魔素を感知出来れば、手がかり見つかるかもね」そし思いつくままあちこち探索するケーラ。


「一回中に入る?」どうも魔素も感じないし、特に何も見つからないので、二人に聞いてみる。


「中は魔物がぼちぼちいるんだよなあ。戦うのが面倒なんだが。魔族とやりあったのはこの辺りだから、手がかりがあるなら入り口付近だと思うんだけどな。今は真白もいるしな」そう言って肩から下げているカバンをポンポンと叩く。「にゃーん」と反応する白猫。健人が肩からかけているカバンには、退屈そうに白猫が顔を覗かせている。宿に置いてくるわけにもいかなかったので、連れてきたのだ。魔族に襲われた当人の白猫は、我関せずといった雰囲気だが。


「でも、タケトさんも相当お強くなられているし、魔物が多少いても、前ほど時間はかからないと思うわ。私もそれなりにお役に立てるとは思うし。マシロさんを近くに置いて戦えるでしょうし」健人の面倒くさそうな話しぶりに対し、ケーラの提案に賛成のリリアム。


「まあ、そうかな? ケーラでもここで何も見つけられないなら、中に入ってみるか。魔族達が入っていたかも知れないし」


 当時健人達を襲った魔族達は、中には入らず入り口付近で待機していたのだが、その事を知らない健人とリリアムは、特に何も見つからないので、手がかりを探すため、中に入る事にした。


 リリアムが光魔法で「シャイン」と呟く。アイラが以前、健人と真白を騙すために使ったあの目くらましの光魔法だが、今回リリアムが使うのは、手のひらに乗る程度の大きさの小さいバージョンだ。フッとリリアムの手のひらに、ピンポン玉程度の光の玉が浮かぶ。白色蛍光灯のような明るさで、火の魔法のランプより相当明るい。これもリリアムの修行の成果だ。アイラとの特訓により加減をコントロール出来るようになっていたので、このように大きさも自在に操れるようになっていた。


 灯りがついたので、健人を先頭に、リリアム、ケーラと続く。一度来た洞窟なので勝手知ったる、とまではいかないが、それでも慣れた感じで入っていく二人。それについていくケーラ。程なくして、ホールのようになっている、大きな部屋となっている地下一階にたどり着く。以前と同じように、上空からギャーギャーと魔物の声が聞こえる。ただ、声の感じだと以前より数は少ないようだ。


「やっぱ攻撃してくるな」そう健人が呟くと同時に、巨大なコウモリの魔物が空から飛来してくる。背に背負っていた大剣を鞘から抜き、襲いかかってくる巨大コウモリを次々となぎ倒す健人。結局白猫が入ったカバンは肩にかけたまま、ものの数分で片付いた。


「数が少ない事もあってか、思ったより面倒じゃなかったな」能力を使うまでも無かった。ブンと大剣についた魔物の血糊を払い、鞘に収めようとしたところで、上から急に人の大きさほどの影が眼の前に降りてきた。


「魔物か?」他のコウモリ達とは違う雰囲気に、危険を感じて急いで大剣を構える健人。そして後ろで見ていたリリアムも、シャインの魔法を使っていない左手に、ダガーを構え、臨戦態勢を取る。


「あー、二人とも大丈夫」唐突にケーラがそう声をかけて、おもむろに二人の前に出た。


「「え?」」ケーラの行動に驚く二人。


「おい、ケーラ、何してんだ?」声をかける健人。


「彼はボクの仲間だよ」振り返って答えるケーラ。え? 仲間? 


「ケーラ様。突然このような場所にて現れた事、お許し頂きたく」その影はケーラに対し恭しく頭を下げた。



 ※※※


「ケーラの使役している魔物なのか」健人がケーラから説明を受け、納得した。


 使役は、テイムとも言われる、魔族特有の特殊能力である。使役とは、魔物を自分の配下にする事が出来る能力だ。全ての魔族が使えるわけではないが、他の種族にはない能力であるため、戦闘になれば大いに役立つ。約五年前の人族との戦いの時も、使役した魔物の大群を操り、人族の脅威になった。因みに使役は、魔族の「格」によって、操れる魔物のレベルが変わる。格が高ければ高いほど、強力な魔物を操る事が出来る。


「なるほどね。モルドー、昼間はここにいたのか」


「仰る通りで御座います」ケーラの言葉にまたも恭しく頭を下げるモルドーと呼ばれた魔物。


 身長は180cmくらいで黒髪に黒い眉。目は瞳がなく真っ赤で、唇もルージュをひいたように真っ赤、口元からは鋭い牙が垣間見える。タキシードのような黒い服装で、背中には黒いコウモリの羽が生え、先がハート型になっている黒い細い尻尾をふりふりしている。因みに痩せ型のオッサンである。だからだろう。尻尾ふりふりが余り可愛くない。愛嬌もくそもない。寧ろウザい。


「モルドーは暗闇でしか行動できないから、ボクがアクーの宿からこっちに移動した時に、この洞窟で休んでたんだね。確かに同族がいるし日中もずっと暗いからここは君にとって丁度いいかも」同族とはさっき健人が倒したコウモリの魔物の事だろう。


「ええ。その通りで御座います」一貫して丁寧な口調のモルドー。


「もしかして、モルドーさんって吸血鬼ですか?」健人がその見た目で質問する。コウモリの羽と牙と赤い目と尻尾。ファンタジーを余り知らずゲームもしない健人でも、その容姿が吸血鬼だろう事は知っている。


「そうだ。私は高貴なる吸血鬼。お前如き矮小な人族が、私のような格式高い魔物に馴れ馴れしく話しかけるな」ギロリと赤い目で健人を一睨みし、耳辺りまで避けた口を大きく開け、牙の生えた真っ赤な口の中を威嚇するようにわざと見せるモルドー。


 さっきまでの丁寧な口調とは打って変わり、急変したモルドーの態度にびっくりしてたじろく健人。だがすぐにパカーンと気持ちいい音が洞窟のドーム内に響き渡る。その音と共に「ウググ」と蹲るモルドー。


「こら! タケトに偉そうな口きくな!」ケーラがモルドーの頭をげんこつ、いやナックルで小突いたのだった。


「な、ケーラ様! ご無体な! こやつら人族は我々の贄で御座いますのに。しかもケーラ様は魔……モガガ」ケーラに唐突にヘッドロックされ、口を塞がれたモルドー。贄って事はやっぱり人間の血を吸うのだろうか? 健人がちょっとビビる。


「それ以上言ったら使役解除するよ」ヘッドロックを決めながらギロリとモルドーを睨むケーラ。そして口を塞がれながら怯えるような目でコクコク頷くモルドー。


「とにかく、タケトはボクの大事な大事な彼氏候補なんだから、偉そうにしたらタダじゃおかないからね」モルドーを離し、未だ怯えながら見上げる吸血鬼に対し、仁王のように見下ろし脅すケーラ。


「ケ、ケーラ様! たかが人族を彼氏候補だなどと! お戯れで御座いますでしょうか!」ケーラの言葉に物凄く狼狽えるモルドー。


「……解除しよっか?」手のひらをモルドーに向けるケーラ。多分解除のポーズ? そして冷たい視線をモルドーに浴びせる。それを見てがくがく膝を震わせ、途轍もなく怯えるモルドー。痩せたオッサンの怯える姿は、何というか、色んな意味で様になります。


「も、申し訳御座いません。私が間違っておりました」未だ膝をがくがくさせながら、土下座するモルドー。恐怖し過ぎ?


「誰が彼氏候補やねん」一方彼氏候補と言われた事をきちんと突っ込む健人。だが、そんな二人の一連のやり取りを、驚きの表情で見ている健人とリリアムである。高圧的なケーラを見るのは初めてで若干引き気味なのだ。しかもあんな恐ろしい形相のオッサンなのに。そのオッサンは今全く怖くないが。


「あなたは未だ彼氏候補どころか、仲間としてもまだまだだと思いますわ」彼氏候補の言葉が気に入らなかった様子のリリアムが、ケーラの様子に引きながらも、対抗心を丸出しに煽る。


「ケーラ様に偉そうに語るお前は何者だ? 」ケーラが何か言い返す前に、少し立ち直ったモルドーが若干怒ったような口調で質問する。


「リリアムよ」モルドーの偉そうな態度も気に入らないリリアムが、ケーラのように高圧的に答える。


「まさか、リリアム王女なのか?」驚いているモルドー。


「そうよ。で、あなたも旅についてくるの?」驚いた様子に、自分の王女という身分を知っているようなので、今度は普通に質問するリリアム。


「私はケーラ様の影であり支えであり下僕だ。ついていくのではない」あくまで使役された魔物なので、必要な時以外は出てこないという意味だろう。


「なるほどね。あなたはあくまでケーラのサポートなのね。でもケーラが使役している魔物と一緒だなんて知らなかったわ」


「そうだな。しかも吸血鬼なんてな」未だ贄という事が気になっている様子の健人。


「まあ、聞かれなかったし言うタイミングもなかったしねー。隠してたわけじゃないんだけどね」苦笑いするケーラ。


「因みにモルドーは暗闇でしか行動出来ないんだ。だから夜にならないと移動出来ないし、普段はこうやって暗いところにいるんだ。でも、こういう暗いところや闇での強さは半端ないよ。普段は目立たないようにコウモリになってるけどね」と、ケーラがモルドーについて説明すると、それを証明するかのように、ボンと音がして白い煙幕のようなものにモルドーが包まれ、小さなコウモリに変身した。おおー、と健人とリリアムが二人して感心している。マジックのようだ。驚いている二人の様子にモルドーがちょっと嬉しそうに見えなくもない。コウモリだから分からないが。


「で、こないだ、魔薬で化け物に変化した時に採取したサンプル、あれモルドーに運んでもらったんだよ」


「何処に?」初耳だ。サンプルを運んだ場所は当然気になる健人。


「魔族の都市の中の、ボクの協力者のところだね。遠いから往復に時間かかったみたいだけど。モルドーは夜しか動けないし」


「協力者って?」


「んー。んとね、魔族も一枚岩じゃないんだ」


 そう言ってケーラは二人に事情を説明する。魔族と人族は、和平交渉をして、今は少ないながらもお互い交流をしている。これから徐々に交流を深め、お互い進展し合おうとしている最中であるが、魔族の中には、人族との和平を未だ受け入れられない者達がいる。魔族とは人族より優れている種族であり、同等である事は看過出来ない、許せないという感情を持つ者達だ。今回の魔薬の件は、その一派の仕業の可能性が高い。協力者というのは、和平反対派とは逆の和平賛成派の事である。


「魔王も、ボク達も、和平賛成派なんだけどね。プライドやこれまでの歴史から、受け入れられない一定の魔族が、今回の件を引き起こしているんじゃないかと。で、ボクは魔薬をばら撒いた犯人を見つける事で、和平反対派の首謀者を知りたいわけ」


 なるほど、それがケーラの目的なのか。健人はこの時初めてケーラの目的の詳細を聞いたのだった。何故今まで聞かなかったのかって? それはケーラの好き好きアピールがウザかったからだそうです。






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