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冒険開始

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

今回より健人の物語開始です。

今日は出かけるので、少し早めの更新で申し訳ないですm(__)m

「……いなくなったか」


「……寂しいわね」


 ゲイルとアイラが、空っぽになった大きめのベッドを見つめて呟く。勇者カオルが先にいなくなり、そして今度は剣鬼ヴァロック。共に冒険した彼らには二度と会えない事も分かっている。寂寥の念が湧かないはずはなかった。


「考えたら、四人で旅していた時が一番楽しかったねえ」ゲイルが振り返る。


「そうね。あなたとの今の平和な生活も悪くはないけど、平和というのは退屈ですしね」アイラも同意する。


「あの3人も、僕達と同じように、かけがえのない仲間になってほしいねえ」今日から旅立つ3人に、思いを馳せるゲイルだった。


 ※※※


「ちょっと! あなたがなんでそちら側にいるんですの?」


「うっさい! ボクがこっちにいたいからいるだけだよ!」


「ほんっと、わがままだこと! タケトさんの気持ちを少しは考えなさい!」


「あんただって本音はイチャイチャしたいくせに!」


「な! 今はそういう事言ってるんじゃないでしょう?」


「あーもうパーティ解散して一人で旅したい」


 伯爵邸の家の前で、二人がギャイギャイ喚いている。その傍らで、一人深く大きなため息をついて愚痴る健人。そしてさっきまでこの三人の冒険者が、より良い仲間として、仲良く旅をしていくよう、願っていた大人二人は、この様子を見て呆れています。


 ゲイルが若干青筋をこめかみに浮かび上がらせ、ため息混じりに「ウォーターシャワー」と水魔法を唱える。単なるシャワーの魔法だが、多少ゲイルの怒りが入り混じっているからか? 何か過剰な魔力を感じる。雷雲のようにゴロゴロ灰色の雲が3人の頭上に現れ、ゲリラ雷雨のような激しい雨が、滝のように三人に畳み掛ける。


「きゃああ! なんなのー!」「うぎゃあああ雨だー!」「なんで俺までー!」


「これから三人仲間として旅するというのに、何をくだらない事で揉めているのかね?」怒り口調のゲイル。一旦ウォーターシャワーを止めたが、明らかに怒っている。びしょ濡れの二人はゲイルが何故怒っているかわからない様子。健人は単に巻き込まれただけなのでちょっと可愛そうではあるが。


「リリアムもいい加減になさい。仲良く出来ないなら、あなたが冒険者になる事、お父様に風魔法で報告しないわよ?」アイラがリリアムを嗜める。王都への報告は、アイラにお願いしていた。


「わ、分かったわお姉様。だからそんな事言わないで」びしょ濡れになったので、慌ててメイドがタオルを持ってきて、それで体や顔を拭きながら謝るリリアム。


「ケーラ。余りひつこかったら本気でパーティ解除するからな」健人もメイドが差し出してくれたタオルで顔や体を拭きつつ、ケーラに注意する。


「わ、分かったよ。リリアムごめんよう」健人と離れたくないケーラは、とりあえずリリアムに謝りながら、同じくメイドにタオルを貰って体を拭いている。


「全く、そんな調子で魔薬の調査の件は大丈夫なのかい?」ゲイルが三人に呆れながら確認する。


「それはきちんとやらせてもらいます」まだ濡れたままの健人が真面目に答える。


「とにかく、三人共仲良くしなさいね」アイラがやや殺気の混じった冷ややかな目線で注意する。さすがは元勇者メンバー。迫力は半端ない。コクコクと頷く三人だった。


 ※※※


「真白が一緒に濡れて無くてよかった」ふう、と一息ついて、ある程度服が乾き、メイドが抱き抱えてくれていた白猫をカバンに入れる。カバンの中でゴソゴソした後、カンガルーの子どもののように首だけぴょこんと出した白猫。そして馬に跨がり、お世話になった伯爵夫妻と、メイド・執事に感謝の挨拶をした後、二人にも一旦別れの挨拶をして、伯爵邸を出る。そして久々に自分の家に戻るため馬を駆る。ケーラは既に家を出て宿に移っているはずだ。因みに今乗っている馬はケーラから返して貰った自分の馬である。


 これから本格的に真白をもとに戻すために旅をする予定だが、その前にゲイルから依頼された魔薬をばら撒いている犯人探しだ。それも真白の件と関係がない事でもない。魔薬のせいで真白が猫になったわけだから、この調査で何かヒントが得られるかも知れない。なので健人は、ゲイルからの依頼を有り難く思っていた。


 その案件が片付いたら、アクーを出て他の街や都市へ向かう予定だ。ケーラの人探しを手伝う傍ら、獣人のいる街にも行こうと思っている。真白もこの世界では獣人であるわけで、そこに何かヒントがあるかも知れない。


 そして、ケーラとリリアムの三人で修行していた事を振り返ってみる。振り返ってみて改めて思う。一人だときっと行き詰っていただろうと。未だ真白を想う気持ちに変わりはない。だからこそ今でも真白がいないのは寂しい。だが、その寂しさは、騒がしい美女二人が紛らわせてくれた事も事実である。今はこの美女二人に感謝している。今は一人じゃなくてよかったと思っていた。


 あれこれ考えながら馬を駆り、自分の家に到着する。予定通り、ケーラは既に出ていってくれていたようだ。庭に馬を繋げ、久々に自分の家に入る。思ったより綺麗に使ってくれていたようで、汚れはない。


「つーか、結局このベッド使ってたのかよ。あっちの客間のを使えって言ってたのに」家を確認しながらため息が出る健人。真白との思い出の部屋に入って、キングサイズベッドを確認したら、明らかに普段から使っていた後があった。掛け布団が若干乱れていたのと、机の上に飲みかけのコップが置いてあった。綺麗に片付けているからまあ良し、と無理やり納得したが。


「さて、留守番していてくれな」そして白猫をキングサイズベッドの上にそっと置く。帰ってきてすぐだが出かけないといけない。「にゃーん」と一声寂しそうに鳴く白猫。それを見て愛おしそうによしよしと頭を撫でる健人。そして腰掛けていたベッドから立ち上がり、白猫に手を振って部屋を出た。


 ※※※


「さて、これからどうするか、だなあ」健人が二人に相談を持ちかける。今は三人とも、ケーラが泊まっている宿の食堂に集まって話をしている。


「魔薬の調査と言っても、闇雲に探すのも大変よね」アクーの都市の外に点在しているであろう、魔薬の調査と、それをばら撒いている犯人探し。広大な土地の中、ピンポイントでヒントもなく捜索するのは、現実的ではない。アクーは海に面した広大な土地。日本の都道府県に例えると、神奈川県くらいの広さはある。


「魔族のボクなら、魔薬の魔素を感知して探す事が出来るかも知れないけど、それでも限界があるからなあ」ケーラの魔素感知は、半径10m以内でないと分からないらしい。広範囲に魔素感知をするのは不可能との事。魔薬は10cm程度の小さな玉なので、魔素感知が出来たとしても、余りあてには出来ないかも知れない。


「以前マシロさんと一緒に行った、洞窟にヒントがないかしら。確か、捕まえていた魔族が、矢のようなもので殺されたのよね?」ヴァロックとゲイルによって魔族が捕まえられ、そして何者かに光属性の矢で殺された件だ。


「そういやあそこの洞窟の大亀、放って置いたままだったな」後で素材などを取りに行く予定だったのが、真白の件や修行などがあって、すっかり放置したままにしていた。今となっては既に死骸は腐ってるだろうが。


「情報もないし、とりあえずあの洞窟行ってみようか」健人の提案に他の二人も頷いた。今はまだ午前中なので、今から移動すれば夕方にはあの浜辺の洞窟近くの宿に着くだろう。皆一旦戻って準備して、早速移動する事にした。


 一時間ほどして、三人共アクーの城壁の門の外に集合している。健人は白猫も連れてきている。何泊するか分からないので、その間ずっと放置するわけにはいかない。


 そして三人揃ったところで早速、馬で目的地に向かう。カバンにはいつもどおり白猫が顔だけぴょこんと出している。馬を駆るスピードで風に打たれ心地よさそうにしつつも、ホコリが入らないよう半目になっている。


「しかしその猫が、前タケトに見せてもらったマシロさんだなんて、未だに信じられない。ほんと普通に猫だよね」ケーラが馬上から健人に声掛ける。ケーラは獣人の真白に会った事がない。「~にゃ」という語尾も知らない。スマホで写真を見ただけなのだから信じられないのも仕方ない。


「そうだな。俺もこの猫からは真白の欠片も感じないよ。どちらかというとペットみたいな感じだ」ちょっと寂しそうに苦笑いする健人。


「そのうちきっと、タケトさんの事も思い出すわ」寂しそうな健人の笑顔を見て、気遣うように語りかけるリリアム。


「ありがとう。まあ、そうならなくても俺は真白をもとに戻すつもりだけどね」


 そして休憩を挟みつつ三人は馬を駆りし、夕方頃には浜辺近くの宿に着いた。今日はこのままその宿に泊まる。明朝から調査開始だ。




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