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無駄に女の子な二人

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

ご指摘頂きました。本当に有難かったです。精進します。

至らない点、稚拙な文章だと思います。お気づきの点がありましたら、

叱ってやって頂ければ幸いです。

「もっと早く来ていれば……」項垂れるケーラ。リリアムも治癒魔法を断念する。


 捕まっていた女性は全て、既に殺されていた。髪を掴まれていた女性も。健人の瞳にも悔しさが滲む。ただ、殆どが首を絞められての窒息死だったようで、然程損傷がひどくなかったのは幸いだったかも知れないが。


「亡くなった人達の遺品があれば、持って帰ろう。そしてせめて俺達で埋葬しよう」健人が二人にそう促す。さすがに死体を持って帰る事は出来ない。だからといって放置も出来ない。野犬や他の魔物に食べられるのも良くない。なので埋葬だけはして、遺品を持ち帰り、ギルドに報告する事にした。二人とも頷いてさっそく遺品になりそうな物を探す。男で力のある健人が、土を掘り女性達の埋葬をしていく。


 その様子を黙って見ているヴァロック。「カオルみたいに正義感強いが、タケトのほうが真面目だな」女性達を埋葬している健人を見てヴァロックはそう呟いた。


「よし。次の討伐があるから、討伐の証拠切り取ってさっさと撤収するぞ」ある程度埋葬が終わったのを見計らって、パンパンと手を叩いて皆に声を掛けるヴァロック。討伐した証拠を持って帰る必要がある。今回の場合はオークの鼻である。そしてクリスタルの欠片またはクリスタル探しをする必要もある。素材の確保も必要だ。討伐依頼によると、オークは食料に出来るらしい。……これ食べるんですか、と健人はその依頼書を読んで引いたが、豚肉みたいな扱いらしく、とても美味いらしいのだ。そのため腕や足を持って帰ると、素材というより、食料として売る事が出来るらしい。


 そして健人は何度も討伐依頼をこなしているので、討伐の証拠取りやクリスタルの確認作業には慣れているが、リリアムとケーラはこれが初体験。健人がさっさと鼻を切り裂き、オークの胸をナイフで割いて切り開いて中を確認し、足や腕を落としていく様子を見て凄い引いている。距離が出来ている。


「こら、お前ら二人もやるんだよ」ヴァロックが腰が引けてる二人を見て注意する。


「で、ですよね」「アハハ。やっぱり?」腰が引けつつもいそいそとオークの死体に近づく二人。女性達の亡骸は傷が少なかったのもあってグロテスクではなかったのと、埋葬は健人がやったので、実際死体に触れるのはこれが初めて。更にオーク達は自分達が攻撃して傷つけたので、あちこち損傷していて見るも無残になっているのが、二人には辛いようである。


「アイラも普通にやってたぞ。なあタケト、マシロって獣人もやってただろ?」


「ええ、当然ですよ。それが仕事ですから」未だ手が出せない二人に発破をかけるように話す健人とヴァロック。


 まあ、真白の場合元猫で、野良猫当時はネズミを捕まえて食料にしていた事もあったらしいし、死体自体に免疫あっただろうけど。と心の中で思っても口には出さない健人。これは二人にとって大事な試練なのだから、真白が特別と思われないほうがいい。


「……」リリアムが勇気を振り絞って死んで寝転がっているオークの頭の側まで行く。血の匂いに吐き気をもよおしてしまう。飛び出した目玉や内蔵もグロテスクだ。近くにいるだけでも辛い。魔物とはいえ人型であるわけで、リアルに死体として認識してしまう。それでも冒険者としてやっていくと決めたわけだし、こんな事で健人との旅をするのを諦めるわけにはいかない。ようやくオークの顔の側でしゃがみ、指先で鼻先を摘んで目を瞑って「えい!」と気合を入れ、バシュっと鼻をダガーでカットした。


「ふう。とりあえず一つ」既にオークは死んでいるので血が吹き出す事もなく、それにもホッとするリリアム。戦っている時は気にならないのに、こういう作業だと間近に見るからか、結構辛いと感じているようだ。


「よっ、ほっ、はいさっ」一方そんな大変な思いをしながら、ようやく一つ鼻を切り取ったリリアムの横で、軽快にシャドウバインドを操り、触手の先にナイフを持ち、そして自分の手は一切使わずに、サクサクはオークの鼻を切り取っていくケーラ。


「……ズルくない?」リリアムがジト目でケーラを睨む。


「別に魔法使うなって言われてないよー」ボクってば頭いいね、と言わんばかりにフフンと鼻で笑うケーラ。


「ケーラ、でもそれクリスタルの確認はどうすんだ? そして、そんな事で魔法は使わない方がいい。急に襲われた時、魔力が無くなっていたら大変だろ?」オークの胸を裂きながら健人が注意する。


「やっぱやらなきゃダメか」健人に注意され、シャドウバインドを解きがっくり項垂れるケーラ。


「嫌なら旅についてこなくていいんだぞ」ちょっと意地悪を言ってみる健人。


「嫌だ! ついてくもん!」子どもみたいに拗ねて返事するケーラ。そして意を決してずんずんオークの死体に近づいて、そして後ずさりし、また近づいて後ずさり、を繰り返している。なんかコントっぽい。


「遊んでないでさっさとやれ!」グズグスしている二人にいい加減苛立って怒るヴァロック。


「「はーい」」怒られてシュンとなる二人。何だかおかしい二人の様子を見て、自然と笑いが出る健人だった。


 ※※※


「よし次行くぞ」馬に戻り皆に声を掛けるヴァロック。若干二名ぐったりしている。主に精神的なダメージのせいで。リリアムはついに耐えきれず吐いてしまった。


「まあ、最初は仕方ない。これからやっていけば慣れるから頑張ろう」健人が二人を励ます。


「頑張りたい」「けど辛い」項垂れながら、ぼそっと二人して元気なく呟く。


 結局大半は健人が鼻を削ぎ落とし、クリスタルの確認を行った。更にオークの腕の切り落としは大剣持ちの健人が全て行った。オークジェネラルから12角形のクリスタルが出たのはラッキーだった。他にもクリスタルの欠片と8角形のクリスタルが2個見つかった。オークの腕と足は、さすがに四肢全てを、倒した三十匹分持ち帰るのは大変なので、一体につき腕一つだけ取って残りは諦めた。まだ討伐依頼が残っているし、今回は修行が目的なので仕方がないと割り切った。それでもかなりの量ではある。嵩張るオークの腕はヴァロックが運んでくれる事になった。


 荷物をまとめて馬に乗せ、それぞれ騎乗し次の討伐依頼に向かう。次はコボルトキャプテンの群れとの事で、数は不明らしい。コボルトとは犬の魔物だが人間のように後ろ足で立って移動する。人の言葉は理解できないが、ゴブリンよりも知能は高く、連携して人を襲う。コボルトは人を食料とする事もあるので、人族とすれば危険な魔物だ。キャプテンはその上位種。だが、レベルは30程度なので強くはない。健人一人なら余裕だろう。


「なので、次はリリアム一人でやれ。魔法は禁止な。ダガーだけで倒してみろ」結構無茶な指示をするヴァロック。


「りょ、了解ですわ」さっきのオークの件でまだ顔が青いリリアムが、ヴァロックの指示に一応頷く。


「そしてその後のゴブリンの群れとチャンピオンはケーラ。お前一人でやれ」その後の依頼はケーラ一人でやるよう指示するヴァロック。


「で、タケトは二人のフォローだ。ていっても、さっきみたいに大物が出たり魔薬に侵された魔物が出た場合だけな」健人はイレギュラーが起こった時のフォローという事にしたヴァロック。


「うう~、ボク一人でゴブリンチャンピオンと戦えるかな~」ちょっと自信なさげなケーラ。


「真白は、まだそんなに戦闘経験無い時に、一人で一気に三匹倒した事あるぞ」真白を引き合いに出してケーラを焚き付けてみる健人。


「む。じゃあゴブリンとチャンピオン全部ボク一人で倒せたら、マシロさんと同じように扱ってくれる?」ケーラが健人にお願いするように聞いてみる。


「それとこれとは別」冷めた返事の健人。「でもそれくらいはやって貰わないとな」それでもケーラを煽る事はやめない。


「せめてハグくらいしてくれてもいいと思うなー」ケーラが唇を尖らせて拗ねている。その様子がおかしくて笑う健人。


「むうー。二人で楽しそうに」二人のやり取りの間に割って入りたいリリアムだが、気分が優れないので出来ない。ぐっと堪えている。


 コボルトキャプテンの討伐箇所にはすぐ着いた。皆前回と同じく馬を木に繋ぎ、今度はリリアムが先頭で、ついでケーラ、健人と並んで進む。ヴァロックが離れて歩くのはオークの時と同じく。コボルトキャプテンを発見したと言われている森の奥に向かう。


「ガオーン」「ガウガウ」いくつかの鳴き声が聞こえる。多分コボルトキャプテンだろう。リリアムが緊張しながら、数を確認するためそーっと木陰から覗き込む。黒いシェパードのような顔立ちをした、後ろ足で立っているコボルトキャプテンが見えた。


「十五匹くらいかしら。……ん? 」数を確認しつつリリアムが何かを発見する。「ねえ、タケトさん、あれ」リリアムが指さした、コボルトキャプテンが集まっている奥の方を見ると、紫の玉が転がっているのが見えた。


「あ! また魔薬だ」ケーラがつい大きな声を出してしまう。「ガウ?」それに気づいたコボルトキャプテンがこちらを向いた。


「こら! ケーラ大声出すなよ」健人が叱りながら大剣を構える。「リリアム、仕方がない。戦闘開始だ。後ろで見てるから思いっきり行ってこい」そう言ってリリアムを送り出す。


「分かりましたわ」すっくと立ってダガーを両手逆手持ちに構え、コボルトキャプテンの中に走っていくリリアム。


「ごめんなさい」一方シュンとするケーラ。


「とりあえずケーラはもっと緊張感持たないとダメだ。本当に一緒に行動できなくなるぞ」さっきのオーガの群れの時も勝手に飛び込んでいったケーラなので、2度目はさすがに叱る健人。


「嫌だ、一緒に行くの! 次はもう気をつけるから、いじわる言わないで」ちょっと涙目で健人を見つけるケーラ。こういう時美少女ってのは卑怯だと思います。


「……じゃあ本当に気をつけろよ」ケーラの頭をぽんと優しく叩く健人。


「うん、気をつける」それに頬を赤らめ喜ぶケーラ。怒られたのに嬉しそうな表情。


 そんな二人のやり取りを確認する余裕のない戦闘中のリリアムは、一人コボルトキャプテンと戦っている。連携して戦うのが得意なコボルトキャプテン。更に弓やジャベリンといった遠距離武器や投擲武器をも扱う。だが、すばしっこく動き回りながら、頸動脈や手足の腱に狙いを定め、ダガーで切り裂いていくリリアムを相手に中々攻撃を当てられない。ブシャアと血飛沫が飛び断末魔の叫びととともにコボルトキャプテンが次々と倒されていく。


「はあ、はあ。お姉様に鍛えてもらっていてよかったわ」一旦コボルトキャプテン達の攻撃がやんで、肩で息をしながら一息つくリリアム。しかし気が抜けたのか、ふと足元に倒れているコボルトキャプテンに躓いてしまう。そしてその隙に投擲されたジャベリンがリリアムの右肩に刺さった。


「あう!」しまったという表情と共に、痛みで蹲るリリアム。その様子を見て急いで飛び出そうとする健人と、咄嗟に闇魔法で手助けしようとするケーラ。だが、「待て。手を出すな」と、ヴァロックが二人を制止する。


「え、でも」焦る健人。「大丈夫だ。あいつは光属性持ちだから本当に危なかったら自分で回復出来る。そしてあの程度の怪我で動けなくなってたら、先が思いやられる」そう言いながらもいつでも飛び出せるようにしているヴァロックではあるのだが。


 ヴァロックに制止され、ハラハラしながらリリアムの様子を見ている健人。ケーラもそれなりに心配そうにしている。そして蹲っているリリアムに、チャンスだとばかりに三匹のコボルトキャプテンが一斉に飛びかかる。各々メイスや剣を上から振りかぶってリリアムに振り下ろす。が、振り下ろした先にリリアムがいない。キョロキョロしてリリアムを探していると、フッとふいに上空が暗くなる。いつの間にかリリアムは三匹の上に飛び上がって避けていたのだ。そして落ちてくる重力を利用し、両手に持つダガーをコボルトキャプテンの首に振り下ろし、二匹いっぺんに倒した。驚いた残り一匹のコボルトキャプテンが「ガウアア!」と叫びながらリリアムに剣を振り上げる。が、リリアムはしゃがんでコボルトキャプテンの足を切り裂く。脚の腱から血飛沫が迸る。「ギュアアア!」脚の腱を切られ、立つ事が出来ず、転がって痛みで叫ぶコボルトキャプテン。足を抑え暴れているところを、頸動脈にダガー差し入れ掻き切るリリアム。またもその首から血飛沫が噴射し、痙攣しながら事切れるコボルトキャプテン。ようやく全部倒し、ふうと一息ついて、リリアムは肩に刺さったままのジャベリンを抜き、「ヒール」を唱え治療した。どうやら軽症のようだ。


 終わったのを確認して急いで駆けよる健人。「大丈夫か?」心配そうに声を掛ける。


「ええ。治癒魔法ですぐに治りましたわ」ニコっと心配ないと言いたげな美女スマイルで、健人に答えるリリアム。


「でも、こうやって心配して貰えるのもいいものですわね。たまには怪我しようかしら」フフっと笑いながら冗談を言う。


「心配はしないほうがいいに決まってんだろ。心臓に悪いから」大丈夫そうなので笑顔で返す健人。


「ま、無事なら良かったよね」二人が仲良さそうにしているのが面白くないが、それなりにリリアムを心配していたケーラが強がりを言う。


「ケーラ。それより魔薬確認すんぞ」ヴァロックがケーラに、奥の方に地面に転がっている紫の玉の確認を促す。


「あ、そうだ。行ってみよう」皆緊張した様子で近づく。紫の玉は直径10cmくらいだが、まるで心臓が鼓動しているかのように、、ドクンドクンと一定のリズムで脈打っているように見える。


「触らないほうがいい」ケーラが警戒する。「ああ、これに触れるとこいつが体に侵食するだろうな」ヴァロックが推測するが間違いないようだ。


「多分、普段はただの紫の塊で、触っても大丈夫なんだと思う。何か発動条件があって、こうやって脈打つと触れなくなるのかなあと。それが何かはわからないけど」ケーラが分析する。


「持って帰りたいけど、さすがに危険かな」ケーラの目的がこの魔薬についてだから、現存するなら調べたいだろう。だが、これは魔 素を感じない健人でも、リリアムでも危険なのは見ていて良く分かっていた。


「やめといたほうがいいですわ。かなり危険な気がします」リリアムがケーラに同意する。


「じゃあ、斬るか」おもむろにヴァロックが大剣を構え、紫の玉を両断した。「ギアアアアアアアアア!」という叫び声が玉から聞こえ、フシューという空気が抜けるような音と共に、紫色の湯気? 瘴気? のようなものが霧散し、玉が消えていった。


「……気味が悪いな」「なんで叫び声が聞こえたんでしょう」「叫び声という事は、人格が入ってるのかな?」


 三者三様に意見を言うが、皆不気味なものを見たという表情だ。


「だが、化け物になる前なら、こうやって退治する事が出来るのが分かったのは収穫だな」こんな気味の悪い現象でも気にも止めずヴァロックが冷静に話す。


 確かにそうだ。人や魔物にくっついていなければ、ただの紫の玉である事が分かった。だが、これを処分しないと、紫の玉からは魔物が産まれてくるらしいし、最初のオークジェネラルのように、体に入れてしまった場合は、強力な魔物になるという事も分かっている。


 一体誰が、何のために魔薬をばらまいているのだろうか?



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