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大物相手に修行そして魔薬

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

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「ブゴォ。お前ら部下共殺しやがったな」のっそり岩陰から現れたオークジェネラル。身長は3mはありそうな巨体だ。防具は他のオーク達と同じく布を撒いているだけだが、鉄製の大斧を肩に担いでいる。


 オークジェネラルはオークの上位種。ジェネラル=将軍と名のつく通り、一兵卒のそれとは違う強力な魔物だ。知能の低いオークとは違い、人の言葉を理解し話すだけではなく、中には知略に富んだものまでいる。ただそういうオークジェネラルは、長い間行きている場合に限るが。それでもオークなのには変わりないので、獰猛である事には変わりないのだが。


 その大きさや迫力に、気圧される三人。明らかに強敵だ。だが全く気にも止めない様子で、ヴァロックがオークジェネラルに話しかける。


「よお、お前元々オークジェネラルじゃねえだろ。いつそうなった?」


「ブギ? なんで分かった?」驚くオークジェネラル。


「戦い慣れてねーのがありありと分かるからな。構えや気配でな。後魔素臭えし」ヴァロックが臭そうなジェスチャーで鼻を摘む。


「フゴオオ! 俺はこれでもジェネラルだぞ! 失礼な奴め!」ヴァロックのそのジェスチャーに怒るオークジェネラル。一気に殺気がオークジェネラルから溢れ出す。たじろぐ3人。


「んで、お前がジェネラルになったのって、どうしてなんだ?」だがオークジェネラルのその様子が全く気にならないヴァロックは質問を続ける。


「ブグウ。この失礼な奴め。オークとして紫の玉から出てきたのが俺が最後だった。そしてその玉を食ったらこうなったのだ。何か美味そうだったからな」怒りながらも律儀に答えるオークジェネラル。


「食ったらそうなったのか。さすが悪食のオークだな。それより、そもそもここに魔薬があった事が問題だな」マイペースにオークジェネラルの言葉を分析するヴァロック。


「だが、最近の魔物増加の理由がこれで分かったな。誰が置いたか分からねぇが、魔素が魔物を産み出してたって事だ。ま、とりあえずあいつ倒すぞ」ヴァロックはそう言って目の前のオークジェネラルを倒す方法について、三人に指示をだす。


「タケトは能力使っていい。ケーラ。お前はタケトのフォローだ。リリアム。お前はタケトと共に魔法なしで攻撃してみろ。因みにあいつはレベルでいうと60ってとこだ。強敵だぞ。ま、俺からしたら雑魚だけどな」


「60?」健人がその数値に驚く。確かオーガロードが50だとゲイルが言っていた。……倒せるのだろうか? でもやらないと。


 因みにこの世界の高ランクの魔物の下限はレベル50である。以前健人が倒したオーガロードは、高ランクの下限と言う事になる。そしてそこからの1レベルの力の差はかなり大きくなっている。レベル20とレベル30の魔物の能力差より、レベル50とレベル51の魔物の能力差の方が大きいのだ。


 なのでオークジェネラルのレベル60は、過去健人が倒したオーガロードよりも、遥かに強敵だという事になる。尚、オークジェネラルにもレベル差があり、オークジェネラルに進化してから長く生きているものの中には、レベル70に到達していたりするものもいる。そしてそういうオークジェネラルは、大抵それなりの武器や防具を揃えている。だが、このオークジェネラルは産まれたばかりという事もあって、武器は鉄製の大斧で防具はつけていない。オークジェネラルの中では弱い部類だろう。それでも強敵ではあるが。


 そしてヴァロックはレベル98だったりするので、オークジェネラル程度だと動じないのである。


「そんな強敵なのに私は魔法なしで戦うのですね」顔を引き攣らせ冷や汗をかきながらリリアムがダガーを構える。


「ボクがフォローか。確かに訓練としては面白いけど、大丈夫かな」ケーラも緊張気味だ。


「ブギイイ! 何をコソコソ喋ってんだあああ!」しびれを切らしたオークジェネラルが、叫びながら大斧を上から振り上げつつ、健人向かって走ってくる。そしてそれを猛スピードで振り下ろす。「アクセル・ブースト・プレッシャー」修行の間ずっと使っていなかった能力をここで使う。そして振り下ろされた大斧を、フッと横に躱し、地面にそれが叩きつけられたのと同時に、ファイアエッジのエンチャント+健人の能力が乗った大剣を、横薙ぎに振るう。「グガ!」だが、さすがはオークジェネラル。打ち下ろした大斧を素早く地面から引き上げ、ぎりぎり健人の大剣を受け止めた。だが、細身の健人から放たれたその炎の大剣の威力を止められない。大斧ごと吹っ飛ばされるジェネラル。10mほど先にある壁に大きな音を立てて激突する。パラパラとジェネラルの周りから石がこぼれる。


「……すげえ」吹っ飛ばされ壁に激突し、苦痛で唸っているオークジェネラルを見て、驚いている健人。自分の攻撃力が遥かに上がっている。ヴァロックに体捌きを教わり、基礎を叩き直して貰った結果、腰が入り力が十分に力が乗った打撃を繰り出せるようになっていたのだ。その上エンチャントと自分の能力がミックスされ、絶大な火力になっていた。さすがは勇者に与えられていた能力と言うべきか。


「ほほう。結構やるじゃねーか」余り褒めないヴァロックも健人の火力に感心する。


「おいタケト。次はお前は攻撃中止だ。火のエンチャントも解除しろ。攻撃するのはリリアムだけだ。タケトはリリアムを守りつつフォローしろ。ケーラはリリアム達のサポートだ」と、健人の火力を見て後方から連携の変更の指示を出すヴァロック。三人とも頷いて改めてオークジェネラルに向き合う。


「ブ、ブグボオオ。俺を訓練に使うつもりか! オークジェネラルを舐めるな!」吹っ飛ばされた岩からムクっと起き上がるジェネラル。怒りに任せた強大な殺気が半端なく三人に向けられる。だが、それにひるまず大剣を構え対峙する健人。一方リリアムとケーラは竦んでしまっている。


「リリアム! 守るから行け! 俺も一緒に突っ込むから!」竦んでいるリリアムに健人が檄を飛ばす。「は、はい!」それに答えてリリアムが勇気を振り絞ってジェネラルに走っていく。それを確認してリリアムと共にジェネラルに突っ込んでいく健人。


「はあ!」気合一閃、リリアムが両手に持ったダガーを逆手持ちにし、走っていくスピードを利用しながら、ジェネラルの首筋を狙う。が、躱される。それでも続けて手足の腱を狙い、ダガーを振るうが、巨体の割にすばしっこくそれらを躱すジェネラル。リリアムの攻撃が中々当たらない。だが一方で、小柄なリリアムを大斧では捉えきれないジェネラル。舌打ちをしながら大斧を持っていないもう一つの手で掴もうとするが、健人が大剣で邪魔をする。そしてその攻防を離れて見ていたケーラが「シャドウバインド」を唱える。ケーラの足元の影から無数の触手のようなものが一斉にジェネラルに向かっていく。大斧を持った右腕とリリアムを掴もうとしていた左腕に、ケーラのシャドウバインドが巻き付き、動きか止まる。


「ブグルアアアアア!」絡まった黒い触手達を必死に引きちぎろうとするジェネラル。さすが高ランクの魔物とあって、怪力でブチブチと触手を引きちぎっていく。だが、その隙にリリアムが、ジェネラルの喉元をダガーで切り裂く。ジェネラルがしまった、という顔をしたが時すでに遅し。割いた口から血飛沫が飛ぶ。


「ブギャアアアア!」叫ぶジェネラル。更にケーラが「シャドウスピア」と唱え、一本の黒い槍がケーラの足元の影からハイスピードで放たれる。ジェネラルの額の真ん中に突き刺さる黒い槍。突き刺さったと同時にケーラの放ったシャドウバインドは解除され、そのまま後方にズドーンと大きな音を立てて倒れた。


 そしてリリアムが「ごめんなさい」と一言呟き、ジェネラルの頸動脈にとどめを刺す。一層血飛沫が飛び散り、ジェネラルは事切れた。ビクンビクンと手足を痙攣させているが、そのうち止まるだろう。


「案外余裕だったね」ふうと一息ついてケーラが言う。確かに難なく倒せた。3人の連携がうまくいくとこんなに楽に倒せるもんなんだな。


「しかも今のは、それぞれの苦手を敢えて使って戦ったからな。逆に得意なやり方で連携したら、もっと楽になると思うぞ」ヴァロックも3人が思った以上の成果が出せていたので感心しているようだ。


「ん? ……お前ら下がれ」急にヴァロックが三人を、ジェネラルのそばから離れるように指示する。ケーラも何か気づいたようだ。「魔素が膨らんでる」


「ブ、ブググ、ブゴオオオオオオオ!」大絶叫と共に、ジェネラルの体がボコンボコンと歪な、紫の塊に変わりながら、どんどん膨らんでいく。腕や手や足が塊に吸収されるように中に入っていく。更に首までも合流する。そして卵型の大きな塊となって、まるで成長しているかのように大きくなっていく。


「これは魔薬の効果?」ケーラが驚いて4~5mほどに膨らんだ紫の塊を見上げる。


「死んだんじゃなかったのかよ」事もなげに舌打ちするヴァロック。


「まあ、お前らで倒せ」ヴァロックなら余裕だろうが、これはあくまで三人の修行の一環。今後出会うであろう、魔薬に侵された魔物との戦いもやっておくべきだと判断したのだ。


「師匠、確かこいつ、最初は物理攻撃が効かないんです。まずは小さくしないと。リリアム、光魔法頼む」劇場の裏で戦った時の事を思い出し、リリアムに指示する健人。


「承知したわ」そう返事してリリアムが「ホーリーレイン」と唱える。眩く光る白い雲が紫の塊の頭上に集まり、そこから一斉に光の雨が降り注ぐ。ブシュウブシュウと紫の塊に、光の雨が当たったところから、まるで塩酸をかけられたような音がする。劇場の裏で戦ったときより余裕のあるリリアム。前のホーリーレインは闇雲に必要以上の大きな雲を作り、更に必要以上の光の雨を振らせてしまったのが原因で、一気に魔力を使ってしまった。元々膨大な魔力を持っているリリアムだが、適度に攻撃魔法を使う事が出来ていなかった。だが、アイラとの修行の成果で、今は必要最低限のコンパクトなホーリーレインを使う事が出来ている。


「グアアアアアアア」何処に口があるのか分からないが、苦しそうな声をあげる紫の塊。そして徐々に縮んでいく。ホーリーレインの効果でブシュウブシュウと音を立てながら、2mくらいまで小さくなると、健人が「ファイアスラッシュ」と唱え、ブーストとプレッシャーが乗った大剣を縦に振るう。そして炎の斬撃が飛んでいき、塊に当たり真っ二つに割れた。


「グオオオオオオアアアア」大絶叫と共に左右に割れる紫の塊。そしてそのままグシャっと倒れる。ビクンビクンと小さく痙攣しているようだが、さすがに復活はしなさそうだ。


「ふう。油断出来ないな」健人が軽く汗を拭う。


 そしてケーラが痙攣の収まったその塊に近づき、おもむろに小瓶を出し、欠片を入れ、蓋を閉めた。欠片はもう動いていないようだ。最終的に紫の塊は、元のオークジェネラルの姿に戻っていた。ただ、健人に切り離されたためか、胴体は真っ二つに割れているが。


「それどうすんの?」健人がケーラの行動を不思議に思い質問する。


「これ調べるんだ。魔薬の事は知識で知っていたけど見たのは初めてだったから」と健人に答えた。


「ボクが人族の都市に来たもう一つの理由、それはこの魔薬を調べるためだったんだ。まあ正確には何故魔物が増えたのかを調べるためだったんだけどね」続けてケーラが説明する。


「そうだったんだ。それでサンプルを入手したという事か」健人が納得する。


「そう。魔薬が存在している事自体、大変な事なのに、マシロさんの時だけじゃなく、ここにもこうやって魔薬が存在してたわけだから、複数あるという事。これは魔族にとっても重大な事だよ。もし魔薬が原因で、アクーで魔物が増えているという事になれば、早々に対処しないといけない」ケーラが真面目な顔をして答える。


「そうか。結構根深い問題みたいだな」健人も真剣な顔をする。


「魔物が増えるという事は、人族にとって問題だからな。ケーラの調べている事は今後人族が平和に暮らすためには重要だな」ヴァロックも複雑な顔をする。ヴァロックはこの件に関して手伝えないからだろう。


「お義兄様やお姉様にも相談しますわ。魔物の増加はここアクーにとって最も解決すべき問題ですから」リリアムも重い表情で語る。


「とにかく、捕まっていた人達の様子を確認しようか」オーク達に捕まっていた女性達を介抱しないと。皆に促す健人だった。




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