衝撃の展開過ぎ。そして新スキル獲得?
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拙い文章だと思いますので、感想・レビューなどでご指摘頂けると有難いです。
「でもケーラはいいのか? 俺、数か月は修行する事になってるけど。それまで旅に出るの待てるのか?」
月が煌々と照らす、アクーの街中の道。健人はゲイル宅で預かってもらっていた自分の馬で、自分の家まで駆けている。先日浜辺の宿から戻ってきた際、伯爵邸で預かって貰っていたのだ。そして健人が手綱を持ち、ケーラが前にまたがっている。このシチュエーションもまた、以前の猫耳美少女と同じなのを若干意識してしまう健人。
「うーん、君が修行している間、ボク一人で出来る事をするつもり。それに、修行にもたまには参加しようかなーと」馬の駆けるスピードに押されながらも、首だけ振り返り健人に返事するケーラ。
今二人は健人の家に向かっている。ケーラも伯爵邸に泊まっていいと、ゲイルから言って貰ったのだが、ケーラが恐れ多いと断ったのだ。だが、普通の宿に一人泊まるのはちと怖いらしい。色んな人が泊まるからというのだが。じゃあ何で一人で人族の都市まで出てきたんだ? と疑問が湧いた健人だったが。ともかく、それなら暫く空き家になる家に泊れば? と、健人が提案したのだった。なので二人で健人の家に向かっている。
約一名、不満顔だったが。
「わ、私もいつか家にお邪魔させてもらうので、それでチャラって事でいいわ」何がチャラなのか良く分からないが、とりあえず強引に納得したようです。誰とは言いませんけどね。
「……モテるねー」その誰かさんの様子を思い出し、ボソっと呟きつつ、どうやら疲れたようで、コテンと健人に体を預けるケーラ。どうやら寝てしまったようだ。馬は結構揺れるのに器用ですね。
「困るなあ、ほんと」起こすのも可哀想だし、今日知ったばかりの超絶美少女のケーラのその様子に困惑しつつ、出来るだけ馬の駆けるスピードを落とす健人。電車で隣に知らない人が座って、自分に肩を預けて寝てしまう、あのシチュエーションを思い出しつつ。
そして、真白に色々似ていて、可愛く思ってしまう自分を制しながら。
そうやって暫くすると家に着いた。「ほら、ケーラ、着いたぞ」声をかけてケーラを起こす。
「あ、ごめん寝ちゃった」健人にもたれていた頭を起こし、テヘっと頭に手を置いてごめんとゼスチャーする。
気にするな、と言葉をかけ、そして二人で馬を降りて、そのまま馬を一旦庭に繋ぎ、それからケーラに家に入るよう促す健人。
「ほほー、中々いい家なんじゃないの?」中に入って興味深そうにキョロキョロするケーラ。
「もう夜遅いから、とりあえず寝室と風呂トイレ、それと調理場だけ案内しとくよ。俺も戻らないといけないし」
「ふわわーい」食卓の椅子に座って伸びをしながら、少しけだるい様子で欠伸をしつつ返事するケーラ。さすがに今日色々あって疲れたらしい。
「んじゃ二階の寝室はこっち使って……って寝てるし」説明しつつケーラの方を見てみると、食卓の椅子に座ってうつ伏して寝てしまっているのを見て、大きなため息をつく健人。
「まあ、風呂は既に伯爵邸で入ってきたし、分からない事があれば聞きに来るだろうし、もういいか」いい加減健人も疲れている。早く伯爵邸に戻って明日からの過酷であろう修行に備えて、早く戻って休みたい。そのままケーラを放置して帰ろう。家の鍵は側に置いてたら気づくだろうし……。
「……あー、もう! このまま放っておけるかよ」机で寝ているのを放置出来ないと思い直し、大きなため息をついて、健人は仕方なくケーラをお姫様抱っこをして二階の寝室に運ぶ。身長は真白より高いが女の子だからか重くはない。スースーと心地よさそうな寝息を立てて、健人に体を預けているケーラ。客室用にしていた、普段全く使っていなかった部屋に連れていく。さすがに健人と真白がイチャコラしていたベッドを使って貰うのは気が引けた。
「つーか、無防備過ぎだろ。俺も一応男なんだが」完全に気が抜けきった顔でスヤスヤ眠っているケーラに話しかけるも、当然返事はない。この子魔族だと言っても世間知らず過ぎないか?
そして客室用の部屋のドアをうまく開け、起こさないようそっとベッドに寝かせ、掛け布団をかけてやる。ムニャムニャ言いながらそれにくるまって寝ている無邪気な魔族の美少女を寝姿を見て、ついフフっと笑みがこぼれる。
ケーラを寝かせたので、伯爵邸に戻ろうと部屋を出た。だが、ふと真白と過ごした自分の部屋に立寄りたくなった。キイとドアを開けると、キングサイズのベッドがすぐ目に入るが、勿論そこに真白はいない。
「俺も疲れた。さすがに」バフンとその大きなベッドに倒れ込む健人。そしてこれからの事を考える。真白を元に戻すため、何処に向かえばいいのか。まずは伯爵邸で自分が強くなる修行だが、その間にも出来る事はやっておきたい。ケーラに協力するという事になったから、ケーラの探し人の情報を得ないといけないし。
そもそも、アクー以外の都市、王都メディーもそうだが、火の都市イグニ、風の都市ウェンス、土の都市フーム。人族の都市だけでもこれだけあるのに、どうやって探せばいいのか。まずは手がかりを探さないと。更にエルフの里やドワーフの街、そうだ、獣人の街があるんだった。同じ獣人の真白を、元に戻す情報があるかも知れない。ケーラがいた魔族のところも、行く必要があるかも知れない……。
※※※
「う~ん?」何か心地いい温もりを感じる。懐かしい温かさだ。脚に絡まる温もりも気持ちいい。そして手に感じる柔らかい膨らみ。いつものように揉んでみる。その先にある突起物もそのままだ。だが、どうも大きさが違う?
「やんっ」と、聞いた事のない声と共に、手を引き剥がされた。何故だ? いつもなら擦り寄ってくるはずなのに。
「う、う、うわああああーーーー!!」その後の大絶叫で健人も何事か、とガバっと起き上がる。
「な、何でボクと寝てるんだよぉ? そ、それより、揉まれた、揉まれたーー!」ギャーと言う大きな声と共にバシーンと頬を張られた。
「痛ってー! 何すんだ!」寝起きでぼーっとしていた健人もそれで目が冴える。「って、あれ?」キングサイズのベッドには、いつもの愛する人ではなく、涙目でふるふる震えているケーラが健人の傍らに座っている。掛け布団で自分の体を隠すようにして睨みながら。
「パ、パパにも触られた事ないのにー!タケトのエッチー!!」と、今度は怒鳴られ、枕でバンバン叩かれる。まあそもそもパパでも娘の胸を触る事はないと思いますが。
「ちょっと待て! 何でケーラがここで寝てんだ?」健人も言い返す。というより、そういや何で俺はここで寝てたんだ?
「う、うぐ、知らないよう。タケトってそういう事する人なんだ」今度はエグエグ泣きながら睨んでいる。
「ケーラは俺が別の部屋に寝かしたはずだぞ」そう言いながら、自分が昨晩あのまま寝てしまった事に、ようやく気づいた。それと共に、ケーラがどうやら寝ぼけてこの部屋に来た事も。
※※※
「うう~。本当かな~」相変わらずベッドの上でケーラは健人を睨んでいる。健人は今日もまたため息をつく。最近ため息をつくのが当たり前になってきている自分に気づいてまたため息をつく。
「本当だってば。この部屋は俺と真白が二人で過ごした思い出の部屋なんだよ。だから、悪いけどこの部屋は使ってほしくないと思ったから、別の客間にケーラを運んだんだってば」もう説明するのは三度目だと思うが、それでもまだ疑いの目を向けるケーラ。彼女は夜中、トイレに行って、そして間違えて健人が眠るこの部屋に来てしまったらしい。
「だって、タケト、ボクを美人だって言った。じゃあ、男だし、その、そういう事したくなるでしょ?」恥ずかしい事を言っている自覚があるからか、顔を赤らめながら話すケーラ。
「……めんどくさい」本音が溢れてしまった。
「何だよめんどくさいって」その言葉にカチンとなるケーラ。
「めんどくさいからめんどくさいんだよ。確かにケーラの事は美人だと思ったよ。でもそれ以上でもそれ以下でもないんだよ。俺は一切興味ないし、俺にとって今でも真白が俺の彼女なんだよ。彼女いるのに他人に何かする訳ないだろ」ケーラの無駄な詮索にイラっとして、がなり立てるように言い返す健人。
健人は最近の色々な事で本人が気づかないうちにストレスが溜まっていた。自分の恋人を猫にされるという意味不明な現象、更に一人で行動したいのにリリアムと仲間になるよう仕向けられる、その上にケーラという魔族も仲間になる。しかもヴァロックと修行する事にもなったし。余りにも色んな事があり過ぎて、本人も無意識に一杯一杯になっていたのだ。
「そんな言い方しなくたっていいでしょ!」ケーラも売り言葉に買い言葉で言い返す。
「事実なんだから仕方ないだろ。もう好きにしろよ。あーもう、なんか一緒にやってくの面倒になったわ」鬱陶しいと思ってしまい、ついきつい言い方してしまう健人。
「俺だって色んな事が起こってしんどいんだよ。それなのにこんなつまらない事で目くじら立てて怒んなよ。そもそもベッドに入ってきたのはそっちだろ? 俺は知らなかったんだから」
「そんな言い方……」今度は泣きそうになるケーラ。
ケーラのその様子に言い過ぎた、と思いつつも、事実なんだから弁解する必要もないと思い、プイっとケーラから顔を背けて押し黙る健人。
そして少しの沈黙。その間健人は、元々昨晩伯爵邸に戻る予定だったのが、ここで寝てしまった事にようやく気づき、早く伯爵邸に戻らないといけないと思い直す。白猫も伯爵邸の自分が泊まる予定の部屋に置いたままだ。
とりあえず顔を洗って急いで戻ろうと思い、ベッドから出ようとする。が、ケーラが健人の腕を掴んだ。
「……何だよ?」気まずいながらも言い合いしてたので、少しきつい言い方をしてしまう健人。
「……嫌だ」ケーラが呟く。
「何が嫌なんだよ?」意味がわからないから聞いてみる。
「うるさいバカ」今度は悪口が出てくるケーラ。
「っ! バカってなんだよ」ムカっとして健人が強く返す。
「離れるのが嫌なんだよバカー!」と掴んでいた健人の腕をグイっと引っ張ってベッドに押し倒し、そして強引にキスをした。
ええええええ~? とキスされているので言葉が出ないが、心の中で意味不明な展開に叫ぶ健人。
「いや、ちょ、っと、待て。何してんだ」慌ててケーラを剥がしてベッドから飛び退く健人。
「好きになっちゃったんだよバカー!」と、涙目で枕を健人にバンと投げつけるケーラ。
「はあああ?」物凄いびっくりな事を言われ、キャッチできずに顔に枕を食らいながら、あんぐり口を開けている健人。
「な、何言ってんですかい?」意味不明過ぎて江戸っ子みたいな口調になる健人。
「分かんない! 分かんないけど分かってしまったの!」ケーラの言葉も意味不明だ。
さっきの言い合いで、健人から一緒にやっていけないという意味合いの言葉を聞き、ケーラはとても悲しくなった。なんで悲しくなったのか、それは健人と共に行動できないから。それに気づいてしまった。じゃあどうして一緒じゃないのが悲しいのか。そうか、彼に惚れちゃったからだ。そう解釈したのだ。その気持ちが正しいかどうかは本人自身も不明だが、ケーラはそれでとりあえず納得してしまった。昨日会ったばかりの人族に惚れるなんて、そんな事あり得るのか。でもあり得た。それが今だ。そうやって受け入れたようである。
「「……」」そして衝撃の告白の後、どうすればいいのか分からないまま沈黙する二人。
「あれだ。何がどうなってそうなったかさっぱりだけど、勘違いだよきっと」健人が変に緊張しながら口を開く。
「そうかもしれない。でもそうじゃないかも知れない」ケーラが反論ぽくない反論をする。
「だから付いていくから。拒否権はないから。一緒じゃなきゃ嫌だから」強引に健人を説き伏せるように、言い聞かせるように強い口調で話すケーラ。
「うわあ。より一層めんどくさくなった」またも遠慮なく本音が出てしまう健人。
「めんどくさくなっても関係ない。ボクが決めたからそうするだけ」フンと鼻であしらいながら自分の意志が固い事を伝えるケーラ。
「めげないのか」ほんと似てるな。健人の恋人に似ている事を改めて再確認出来てしまい、それが可笑しくなってアハハと笑ってしまう健人。
「な、何がおかしいの?」告白したのに、初めて人を好きになったっぽいのに、笑われて余り面白くないケーラ。
「いやあ、ケーラって楽しい子だと思ったんだよ。ま、俺の言い方も悪かったよ。ごめんな」と、笑いが止まってから謝る健人。
「ま、まあ、ボクのせいらしいから、こっちもごめん」健人に謝られて素直になるケーラ。
「でも、好きだよ」上目遣いでジッと見つめ、改めて気持ちを伝えるケーラ。頬を赤らめながら。
そして恥ずかしそうにそっと腕に絡まる。寝起きだがさすが超絶美少女。その上目遣いにドキっとしてしまう。でも勇気を振り絞って腕を外す健人。
「俺の気持ちの中に、ケーラはいないぞ」それをはっきり伝える健人。そもそも昨日会ったばかりなんだから当たり前だ。
「分かってるよ。でもまだまだ時間あるよね?」ね? と超絶美少女スマイルアタックを再度健人にぶつけるケーラ。攻撃力はかなりありそうです。
「俺の想いはそんなに軽くないって」負けそうになりながらも何とか耐えつつ反論する健人。
「まあまあ、これからって事で。改めて宜しくね」と、めげないケーラ。恋する女は強いらしい。
しかしケーラの気持ちを知りつつ、これから一緒に旅するのか、あ、それも誰かさんと一緒だなあ。ケーラって真白の分身か? と、そう思うほど、色々似ている事に改めて気づき、そして今後順風満帆にいかない予感もして、またもため息をつく健人だった。
スキル:ため息をつく、を獲得しました
というポップアップが頭の上に出そうなくらい、最近沢山ため息をついている健人だった。