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健人の目的

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「メディーに勇者らしき人間がいたんですか」伯爵邸で夕食をとった後、今は食卓を囲んで皆でお茶をしている。その時、ゲイルが健人に王都で噂になっている勇者について話していた。


「黒髪で黒い瞳、名前がアヤカ、ですか」聞いた事あるような、ないような。でも日本人ならそんなに珍しい名前でもないから、知り合いにいるかどうかもはっきりしない。色んなバイトしてきた中で、何人かそういう名前の人がいたような気がしないでもない。せめて名前の漢字が分かるか、苗字が分かればなあ、と思う健人。


「だから、タケト君はやっぱり災厄とは関係ないみたいだね」勇者の存在がいるのであれば、やっぱり自分は関係ないという事になる。だが、相変わらず自分がこの世界に来た理由が分からない。もっとも、その理由については、今のところどうでもよくなっているのだが。


「て事は、災厄が来る事が確実になりましたね」健人がふと思い出す。勇者が来るという事は、災厄が訪れるという事を。


「そうなんだよねえ。そこが悩みどころでね」ゲイルが額に手を当てうーんと唸る。せっかく自分達で災厄を片づけたのに。しかもまだ五年くらいしか経っていないというのに。


「そして俺はいなくなるから力になれねえ。ゲイルとアイラもここの領主とその妻だから最前線に出て戦う事は難しいしな。そういや、その勇者とやらは、既に魔族と神官がパーティーメンバーにいるって話だ」ズズっとお茶をすすりながら、ヴァロックが噂で聞いた勇者アヤカのパーティーメンバーの事を語る。


「その魔族の特徴って知ってます?」ハッとした様子でヴァロックに質問するケーラ。皆の正体が分かったので急に敬語に変わっている。ちょっと緊張しすぎに見えなくもない。


「魔族の方は、確かオレンジの髪色だってのは聞いたな」ヴァロックが少ない情報を思い出しながらケーラに話すと、ガタっと急にケーラが椅子から立ち上がった。


「オレンジの髪色?」まさか、と驚いた顔をするケーラ。心当たりがあるのかな?


「そういや人探ししてるって言ってたね」ケーラの様子を見て、ここに来る前ギルドで聞いた話を思い出す健人。


「ヴァロックさん。その魔族の名前って知ってます?」緊張した顔で質問するケーラ。


「いや、名前までは知らねぇな」すまんな、と断りながら答えるヴァロック。


「そう、ですか」肩を落とすケーラ。


 そして急に健人に向き直り、「ねえ、タケトは修行した後どうするの?」と質問してきた。


「ああ。俺は冒険者しながら、真白の戻し方を探そうと思ってるよ」


 真白を元に戻す。それが健人の今後の目標である。単に冒険者を続けていく気はさらさらない。ヴァロックとの修行は想定外だったが、よく考えたら有難い事だ。真白を元に戻す旅をするなら、困難に当たる事もあるだろう。それに備えるには、やはり自分は強くならないといけない。強くなっておいて損はない。剣鬼と呼ばれた人の元で修業できるなんて相当ラッキーだ。しかもヴァロックはそもそも弟子を取らないらしいし。今の健人はそう前向きに現状を捉えていた。


 ただ、リリアムがついてくるのが問題だ。出来たら健人は一人で行動したい。リリアムを足手まといとは言わないが、一人の方がフットワークが軽いし、余り親しくないリリアムに気を使うのが嫌なのだ。


 だから健人は、あえて皆がいる場で、今初めて、自分が冒険者としてやっていくだけではない、真白を元に戻すという目的ががある事を、皆の前で話した。それをリリアムが良しとしない事を若干期待しながら。


「やっぱりそうよね」リリアムが顎に手を当て、考え込んでいる。


「だから、俺はそれを優先するから、リリアムは他の人と仲間になった方がいいと思うよ」健人が真白の戻し方を探すというのは、完全に健人の勝手だ。それにリリアムを付き合わせる必要はない、そういう意味も含めて、リリアムに提案した。


「ねえ、ボク付いてっていい?」リリアムが何か言おうとしたところで、ケーラが口を挟んだ。


「へ? なんで?」まさかケーラからそういう話を持ち掛けられると思わず、びっくりする健人。そもそも知り合ったの今日が初めてなのに。


「ボクの人探しを手伝ってほしいんだ。あと、ボクはこの通り魔族だから、タケトが言っていた大事な人、マシロさんだっけ? の事について、力になれると思う。ボクは君と一緒に行動できて戦力アップ、君は魔族のボクから情報を得る事が出来る。お互いにとっていい話だと思うよ」説得に似た口調で健人に話すケーラ。


「ちょ、ちょっと待ちなさい! どうしてあなたがタケトさんと一緒に行動するの?」リリアムが慌てて割って入る。


「どうしてって……。今言った通りだよ?」聞いてなかったの? と怪訝な顔をするケーラ。


「う、むぅ。でも、元々は私と一緒に行動する予定なのよ?」リリアムが食い下がる。


「じゃあ三人でいいんじゃない?」ケーラが何ムキになってんの? という顔で返す。


「ちょっと待った。俺の意見は?」そもそも一人で行動したい健人は、この嫌な予感しかしないこの展開を、何とか食い止めようと口を出す。


「「ないよ」わ」 リリアムとケーラが同じタイミングで同じ言葉を発する。


「なんでだよ!」ツッコむ健人。ヴァロックとの修行の件、リリアムが仲間になる件など、ずっと自分の意思に関係なく物事が決まっていく上、更に勝手に何か決まろうとしていて、さすがに理不尽だと思った。


「だって君に意見聞いたら、きっと断るでしょ?」ケーラが理由を話す。


「そうね。一人きりで動きたいとか言い出しそうよね」敵対? していたリリアムが同意する。


「それの何が悪いんだよ?」ちょっとムスっとした顔で、納得いかない様子の健人。


「目的を探すのに、一人だと行き詰った時困るよ? 他の人の意見を取り入れたほうが、行き詰まった時解決策が出やすいと思わない? 更にボクの魔族のネットワークを使えば、ヒントが見えると思う。一緒の方が君の目的達成の効率が良くなるって事だよ」


「私は光属性持ちだから、もしタケトさんが怪我したり、毒や麻痺などの状態異常にやられた時に、お力になれるわ。あと、私はこう見えて王の娘。王族のネットワークで何か情報を得る事が出来るかも」


 二人の説得を聞いて押し黙る健人。確かにこの二人がいると効率が良くなる可能性が高いかも知れない。しかし真白の事は自分自身だけの問題だ。ケーラには人探しを手伝って欲しいという理由があるが、リリアムにはそれがない。冒険者として力をつけたいというのが理由なんだろうが。自分のわがままに付き合わせていいものか。本音は一人で行動したい、という事なのだが。


 あともう一つ、健人にとって切実な問題は、この二人は真白に負けるとも劣らない超絶美少女アンド美女だ。何か間違いがあるとは思わないが、無駄に気を使う。リリアムは天然のたらし、ケーラはどこか真白に似ている。だから困っている。


「つーか、なんで二人とも美人なんだよ……」頭を抱えつい思った事を呟いてしまった健人。しかも二人に聞こえてしまった。


「え? あ、あの、うへへえ?」リリアムがちょっと壊れた。


「キャー、とんでもないタイミングでとんでもない誉め言葉入れてきたねー」ムフフー、とまんざらでもない様子のケーラ。


 しまった、と健人が思った時にはもう遅い。美女アンド美少女が二人してそれぞれ頬を赤らめて反応してしまっている。


「なあ? 確かこういうやつをリア充って言うんだよな?」呆れた顔で、傍でやり取りを見ていたヴァロックがアイラに聞く。


「カオルがそう言ってたわね。そしてそういう輩がいればモゲろって言えって言ってた気がする。意味は知らないけど」カオルの言葉を思い出すアイラ。


「ああそう。じゃあタケト。モゲろ」ヴァロックが意味も分からず、しかしイラっとした気持ちはキチンと伝えながら健人にその言葉をぶつける。何か悪口なんだろうというのは分かっているらしい。


 勇者カオルさんは一体何を教えてるんだろうか? 以前のゲイルさんのYO! エブリバディ! もそうだけど。ゲイルさんによると正義感強い人って言ってたから、堅物なのかと思いきや。モゲろとヴァロックに言われ、返事もせず、はあー、と深い深いため息をつく健人。


「ああ、そうそう。タケト君。一応重婚OKなんだよ?」同じく傍でやり取りを見ていたゲイルが、サムズアップしつつキラーンと白い歯を覗かせニカっと笑いながら、余計な知識を健人に教える。だから何なんでしょうね?


「ま。とりあえず三人でいいんじゃねーか? その二人の言い分の筋は通ってるぞ」ヴァロックが飽きてきたのか、欠伸をしながら三人パーティーになる事を後押しをする。どうでもいいので早く決めてほしいらしい。


「そうだよ。それにボクの目的もついでに達成できそうだしね」やったね、と、どこかの猫耳美少女っぽくサムズアップを決めるケーラ。


「二人じゃないのはちょっと。でも、タケトさんが私を美人って……」納得いかない部分もありつつ、健人の一言が嬉しいようで、未だ頬が赤いリリアム。


「まあ、はあ、そうですね」諦観した様子で、自分の意思とは全く関係なく色々強引に決まっていくのに、どうも納得いかない様子の健人だった。




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